ズッコケ三人組シリーズは多くの人が子供のときに読んだことがあるだろう。この「株式会社」は自分が起業を志すきっかけになった「出会い」の一冊である。大人になって改めて読んでみても、商売とは何かという基本的なことを十二分に伝えてくれる名著であることを再確認した。

三人は港に釣りに行き、そこでお弁当や飲み物を売ったら儲けるんじゃないかということを思いつく。港には1,000~2,000人がいて、近くにはお店がないということを認識している。マーケットの発見である。

お弁当と飲み物を仕入れようとするが、三人の小遣いでは十分ではない。そこで事業を株式会社化し、クラスメイトから出資してもらうことを思いつく。スタートアップの資金調達そのものである。「株主」は最初は懐疑的ながら、事業がうまく行っているとわかると途端に我先にと出資してこようとする。株式投資の人間心理にも通じている。

商売は最初うまく行くが、カップラーメンの利益率が良くないことに気がつく。家がラーメン屋のクラスメイトが登場し、原価の低いインスタントラーメンから美味しいラーメンを作る。誰でも手に入れられるカップラーメンでは利益は限られるが、他にはない強みを活かせばより高い利益率を上げることができるのだ。

会社は設立後1ヶ月で4万円の出資から約5.8万円の利益を出し解散する。1ヶ月のROEが130%という脅威のパフォーマンスである。(ただし、人件費が考慮されていない。)実際にここまでうまくいくことはほとんどないだろうが、「お金がお金を殖やす」プロセスを学ぶには十分である。

初めてこの本を読んだ時の興奮は今でも忘れることができない。改めて読んでみて、その興奮は一層増した。事業をしたいと思うなら、下手にMBAなんかをかじるよりまずはこの本を読むことをお勧めする。

うわさのズッコケ株式会社 (ポプラ社文庫)/ポプラ社

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