20世紀前半を生きた偉大な経済学者であるケインズとシュンペーターの理論について解説したもの。比較することでそれぞれの理論のエッセンスが抽出されていて読みやすい。特に、シュンペーターの理論には興味が湧いた。自分自身著者の授業を受けていたはずなのだが、なぜ当時この面白さに気づけなかったのだろうか。それは授業に出ていなかったからである。

ケインズ:静態的、貨幣経済、マクロ

ケインズの経済学は静態的な考え方がもとになっている。不況を脱するためには有効需要の創出が必要であり、そのためには金利を引き下げ、公共事業を活発化させることによって消費性向の高い労働者の消費を増やすことが重要としている。そこでコントロールするべきは貨幣の流通量である。現在のいわゆるマクロ経済学の基礎となっていて、アベノミクスとはまさにケインズが唱えていることを実現しようとしているものである。

シュンペーター:動態的、実体経済、ミクロ

ケインズの静態的な理論に対し、シュンペーターのそれは動態的である。経済発展の根底にあるのはイノベーションである。それは「より儲けたい」(供給側)「よりよい生活がしたい」(需要側)という人間の根底にある欲求が基礎となっている。経済発展はイノベーションによって実体経済の生産性が上がることによってのみ達成される。すなわち、経済はあくまでミクロの活動の積み上げによってのみ動かされるという視点である。資本主義の本質を突いた考え方と言えるだろう。

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