ウォール街のランダム・ウォーカー <原著第10版>―株式投資の不滅の真理/日本経済新聞出版社

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株式投資を勉強したいと思う人は必ず読んだ方がいい本である。逆に言うと、この本で投資に関わる基本的な理論はカバーされているので、手元にはこれだけあれば十分という内容だ。
著者の主張は、株式のリターンは事前に誰も予測することはできず、長期間で見ればインデックスファンドのリターンはアクティブファンドのリターンを上回るということだ。過去の事例や反論に対する見解など、彼の主張を補強する内容が述べられている。
バブルの人間心理はためになった。チューリップバブルに始まるバブルの歴史が書かれているが、ここでは誰も本質的な価値など気にしない。周りの人が儲かっていて、自分が買ってもそれよりも高い値段で買う人がいるだろうと考える人が多いから、本質的な価値から離れて暴騰するのである(「より馬鹿」理論)。ケインズの「美人投票」を詳細に表現したものだが、著者は「砂上の楼閣」と表現していてわかりやすい。実態がないため、人々が不安になるとたちまち崩れてしまうものである。
チャート分析は論外だが、アナリストによる「ファンダメンタル分析」も怪しいものだとしている。特に証券会社のアナリストの言うことは信じてはならない。彼らは儲かる投資銀行業務のために「売り」の推奨を出すことはほとんどないし、利益予想もあてにならないことが多い。私が証券会社にいる実感として、「売り」のレポートはほとんど見たことがないし、利益予想も会社に言われるがままに出していると感じる。さらに、私はアナリストと発行会社のIR担当者が仲良くなってしまっていることも健全さを歪めていると考えている。
しかし、彼はファンダメンタル分析を否定しているわけではない。特にグレアムの投資理論には敬意を示している。すなわち、市場は正しい価値を実現する場であるということだ。問題はファンダメンタルである将来利益の予想が難しい、あるいはいい加減であるということである。言い換えると、将来利益がある程度予測でき、それに対する株価収益率が低い銘柄であれば高い確率でリターンをあげることができるということだ。それを実践したのがバフェットということになるのだろう。
では、これが自分の事業にどのようにつながるだろうか。著者の言う通り、確実なのはインデックスにドルコスト平均法を用いて累積投資を行うことであろう。しかし、やっぱりそれでは「平均」を買うことにしかならない。いや、確かにそれが一番確実に「儲かる」やり方なのだが、何とも面白くない。投資はお金を増やす手段であると同時に、一種のエンターテインメントではないか。そこで、隠れた優良銘柄を限られた投資家に紹介して顧客を「楽しませ」、投資相談に乗ることで「安心」を与えることこそ自分の目指すべき価値ではないだろうか。今はそのようなことを考えている。

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株式投資を勉強したいと思う人は必ず読んだ方がいい本である。逆に言うと、この本で投資に関わる基本的な理論はカバーされているので、手元にはこれだけあれば十分という内容だ。
著者の主張は、株式のリターンは事前に誰も予測することはできず、長期間で見ればインデックスファンドのリターンはアクティブファンドのリターンを上回るということだ。過去の事例や反論に対する見解など、彼の主張を補強する内容が述べられている。
バブルの人間心理はためになった。チューリップバブルに始まるバブルの歴史が書かれているが、ここでは誰も本質的な価値など気にしない。周りの人が儲かっていて、自分が買ってもそれよりも高い値段で買う人がいるだろうと考える人が多いから、本質的な価値から離れて暴騰するのである(「より馬鹿」理論)。ケインズの「美人投票」を詳細に表現したものだが、著者は「砂上の楼閣」と表現していてわかりやすい。実態がないため、人々が不安になるとたちまち崩れてしまうものである。
チャート分析は論外だが、アナリストによる「ファンダメンタル分析」も怪しいものだとしている。特に証券会社のアナリストの言うことは信じてはならない。彼らは儲かる投資銀行業務のために「売り」の推奨を出すことはほとんどないし、利益予想もあてにならないことが多い。私が証券会社にいる実感として、「売り」のレポートはほとんど見たことがないし、利益予想も会社に言われるがままに出していると感じる。さらに、私はアナリストと発行会社のIR担当者が仲良くなってしまっていることも健全さを歪めていると考えている。
しかし、彼はファンダメンタル分析を否定しているわけではない。特にグレアムの投資理論には敬意を示している。すなわち、市場は正しい価値を実現する場であるということだ。問題はファンダメンタルである将来利益の予想が難しい、あるいはいい加減であるということである。言い換えると、将来利益がある程度予測でき、それに対する株価収益率が低い銘柄であれば高い確率でリターンをあげることができるということだ。それを実践したのがバフェットということになるのだろう。
では、これが自分の事業にどのようにつながるだろうか。著者の言う通り、確実なのはインデックスにドルコスト平均法を用いて累積投資を行うことであろう。しかし、やっぱりそれでは「平均」を買うことにしかならない。いや、確かにそれが一番確実に「儲かる」やり方なのだが、何とも面白くない。投資はお金を増やす手段であると同時に、一種のエンターテインメントではないか。そこで、隠れた優良銘柄を限られた投資家に紹介して顧客を「楽しませ」、投資相談に乗ることで「安心」を与えることこそ自分の目指すべき価値ではないだろうか。今はそのようなことを考えている。