日本のメーカーが苦境に陥っており、特にシャープとパナソニックの赤字が目立っているようだが、これらの2社では全く事情が異なることを理解しておかなければならない。

まず見るべきは営業利益である。シャープは営業利益ベースで1,688億円の赤字になっている一方、パナソニックは874億円の黒字である。売上高こそ現象しているものの、コスト削減も功を奏し、前年同期比でも増益となっている。

損益計算書を読み進めればわかるが、パナソニックは営業外損益に事業構造改革費用として3,555億円を計上している。その内容は旧三洋電機ののれん償却を中心とする費用であり、キャッシュアウトは生じていない。これがパナソニック赤字の最大の要因である。

これが意味するところは、シャープは継続的な赤字体質であるのに対し、パナソニックは基本的には黒字であるものの、悲観的に考えてのれんを償却し、むしろV字回復を目論んでいると考えられる。

さらに、今後の戦略を見てみよう。パナソニックの津賀社長は自社を「普通でない会社」として衝撃を呼んだが、文脈をよく読むと過剰投資がかさんで費用が異常にかかってしまっている状態であるということが言いたいことがわかる。現に、今回ののれんの償却等もそのような「普通でない状態」から抜け出すために行ったことであり、今後しばらくはコスト削減、キャッシュ創出を中心に戦略が練られていくのだろう。

幸い、パナソニックのセグメント別営業利益はシステムコミュニケーションズ(主に携帯電話事業等)のみ赤字で他は黒字となっており、今後のコスト削減により利益は一定水準まで伸びるだろう。売上の増加はその先の課題である。

一方のシャープは、ほぼすべてのセグメントで赤字となっており、コスト削減では目も当てられない状況になっている。シャープの最大の強みである液晶は全く採算のとれない分野になっており、先明かりは見えず、経営の明確な方向性もない。今の状態をみると、利益の上がっている健康機器や情報機器に経営を集中させ、その他は鴻海に売却したほうがよいのではないだろうか。


このように、(まだ全然十分ではないが)「ファクトベース」で語ることにより、物事の本質が見えてくる。今後も継続していきたい。