2校目の最後の一年は

持ち上がらずに新1年生の担任となった

異動した時から一緒に

常に最前線で闘ってきた数学のH 先生が

千代田区の中学校に異動して

替わりに着任した数学の教員と

学年を組むことになった

彼は管理的ではあったが

指導力のある立派な教員だった

(彼は後に、重大な服務事故を起こし

警察に逮捕された

その様子は

マスコミにも大々的に取り上げられた

私も、大変大きなショックを受けた)

残念ながら、と言うか

申し訳ないが、と言うべきか

その1年生の記憶はほとんど残っていない

代わりに残っているのは

他学年で行った英語の授業のことだ

その頃、私は自分の学年の英語以外に

他学年の授業に

チームティーチングのT2として参加していた

難聴学級のある学校だったので

各学年各クラスに数名の聴覚障がい生徒がいた

彼らは、英語や数学の授業は取り出しで

難聴学級で指導を受けていた

難聴学級の担任の中に手話のできるY先生がいて

彼が彼らの英語を担当していた

通常学級の英語は私と講師のW先生が受け持っていて

私の学年以外は、主にW先生が担当していた

W先生は生徒を楽しませて

英語を好きにさせるプロ中のプロだ

難聴学級に抜ける生徒にも

ぜひ彼の授業を受けさせたいと

Y 先生が考え、W先生の授業に入り

手話通訳をすることになった

元々私がT2として参加したりもしていたので

私は英語しか話さない

「マイケル先生」役を務めることになり

こうして、3人の英語教師による

「T.T.T. トリプル・チーム・ティーチング」が始まった

授業はメインティーチャーのW先生が進めた

彼は自分で編み出したビンゴゲームで

生徒を引き付けた

ペンの先で机を叩き

リズミカルに単語の綴りを読み上げる

生徒はリピートしながら

ビンゴゲームを楽しむ

cat (cat ) cat (cat ) c-a-t (c-a-t)

というように生徒たちにリピートさせる

長い単語も出てくるので、スリリングだ

"basketball"などはリズムの中で

b-a-s-k-e-t-b-a-l-l, basketball!

のように早口でリピートしなければならない

それでも生徒たちはちゃんと着いてこれるようになる

T.T.T.では、それをY先生が指文字で通訳し

聞こえない生徒たちも一緒に楽しむことができた

二人のやっていることは、ちょっとした神業のようだった

私は英語の歌を紹介したり

音読や会話の練習を担当した

三人の良いところを結集して行った授業は

生徒たちにも大人気な時間となった

インクルーシブ教育という考え方が

ようやく欧米から日本に入り始めたばかりのころ

あの学校では、自分たちの勘を頼りに

かなり斬新的な実践が行われていた

根源（その42)