一夜限りのスペシャル・トークショー
9月16日(火)の夜公演終了後は、城田優、山下リオ、日野真一郎<LE VELVETS>、マルシア、吉田栄作と、演出家のダニエル・カトナーによるアフタートークショーが開催されました。6人それぞれの作品に向き合う姿勢や思いを知る、密度の濃い真剣トークショー(ちょっぴり笑いあり)をレポートします。
まずは演出家のダニエル・カトナーさんに、13日に幕を開けたこの舞台の感想を伺いました。
ダニエル 「劇場での舞台稽古は期間が短かったにもかかわらず、作品は飛躍的な成長を遂げていると思います。キャストの皆さんが“オペラ座の怪人の真実”をきっちり表現してくれているからこそ、作品が育っているのだと実感しています」
つづいて城田優さんには、ファントム(エリック)とご自分に共通する部分について質問。
城田 「共通点といえば、エリックも僕も音楽が好き、ということくらいですね。エリックが抱えている闇や苦しみについては、稽古期間中からダニエルと何度も話してきたので、演じる時は自然にスイッチが入ります。幕が開けてからもダニエルはもちろん、(吉田)栄作さんともその日毎にシーンについて話していますし、みなさんの演技に自然に乗って演じさせていただいています」
クリスティーヌ役の山下リオさんには、初舞台の幕が開けてから今日までの感想を!
山下 「初めはあまり意識せず、ただクリスティーヌとしてパリという場所に立っていようという気持ちでした。公演回数を重ねるごとにお客様の熱気も感じるようになって、ますます盛り上がっています」
城田 「(山下さんに向かって)大女優です!僕と正反対で緊張しないんです、彼女は!」
次に、ゲラール・キャリエール役の吉田栄作さんとカルロッタ役のマルシアさんには、役作りについてどんなアプローチをしているのかを聞きました。
吉田 「事前に準備をするより、今回は稽古場で集中して、ダニエルと相談しながら役を作り上げていくという方法にトライしました。とにかくキャストが素晴らしいし、一生懸命な優の姿を見ているだけで、父性が自然に芽生えてきますね」
マルシア 「私も作り込むというより、自分の中にはなかったカルロッタの部分をダニエルさんに全部引き出していただいたという感じです。お稽古中には、“とにかくやりたいようにやって!”と言われて。カルロッタは現在(いま)を生きているから、キャッキャとうるさいし(笑)、アップダウンもすごく多いんです。だからオンオフの切り替えはしっかりして調整しています」
念願の初ミュージカル出演となったフィリップ・シャンドン伯爵役の日野真一郎さんには、今の率直な感想を伺いました。
日野 「学生時代は週に3~4本くらい観ていたほど好きだったので、ミュージカルに出演することは大きな夢でした。今回その夢が叶って、しかもこんな大舞台でダニエルさんやすばらしいキャストの皆さん、スタッフ・オーケストラの皆さんの中でデビュー出来てとても幸せです。<LE VELVETS>は5人のグループなので、いつもは緊張も五分の一なんですが、一人で出演するミュージカルの舞台ではそうはいかないので重圧もありますね。でも一人で出る分、充実感は100パーセント以上です」
続いて、『ファントム』の中で個人的に好きなシーンについてキャストの皆さんに伺うと、
城田 「オーベロン! ♪ありがとう~妖精た~ちよ~」
といきなり美声を披露する城田さん。そして、「やっと(舞台で)歌えたよ、ダニエル!」とお茶目にコメントを続けます。
「このオペラ『タイターニア』のシーンがすごく好きで、いつもこのオーベロンのフレーズを歌う五大(輝一)さんを後ろから応援しているんです」
山下 「2幕で私がエリックの前から去った後に城田さんが歌うソロナンバー「母は僕を生んだ」のシーンが好きです。”エリック泣いてる~”って思って(涙)」
城田 「まあ、あなたに泣かされているんですけどね!?」
吉田 「出会いのシーンが好きですね。フィリップがクリスティーヌの姿と声を聞いて恋に落ちるところとか、エリックが彼女の歌声の虜になるところとか」
マルシア (どうしよう~とたくさん迷って)「質問、替えてもいい? やってみたいシーンだったらあるの! ♪メロディメロディ~」
(と、「パリのメロディ」でクリスティーヌが歌う1シーンをマルシアさんが披露し、拍手喝采です)
日野 「僕もオペラのシーンが好きなんですけどね」
城田 「俺の方が好きだし!」
日野 「いや、俺の方が好きだし!」
城田 「俺の方がクリスティーヌ好きだし!」
日野 「俺も好きだし!」
おーっと!シャンドン伯爵とエリックの火花がこの舞台上でもバチバチ散っています(笑)
と、こんなやりとりからも、キャストの皆さんの仲の良さが伝わります。この流れから好きなシーンをダニエルさんにも聞いてみることに。
ダニエル 「うーん、たくさん子どもがいる人に、どの子が一番好きかと聞くようなものですね。今、キャストの皆さんがあげたシーンももちろん好きですが、付け加えるなら2幕でエリックとクリスティーヌがピクニックへ行くシーンは特別な思いを持って見ています。ここはエリックが幸せをつかみにいくたった一回のチャンスで、希望に満ちたところから究極的な哀しみへ向かう大事なシーンです」
最後に、翌日、アメリカに帰国する演出家ダニエルさんと、主演の城田さんから、お客様に向けてメッセージをいただきました。
ダニエル 「日本での仕事が大好きで、今回も才能あふれるキャスト・スタッフの皆さんと作品を生み出す中でたくさんのパワーをいただきました。そして、客席の皆さまからもいつも大きなエネルギーをいただきありがとうございます。ぜひまた劇場に足をお運びください」
城田 「本当にお客様あっての作品だと感じています。何か月も稽古を重ねてきて、感動、喜び、哀しみ、苦しみ、いろいろな感情を皆さまにお届けして、それを皆さんの人生になにかしら作用することが出来ればと思っています。これからも『ファントム』を、そして、たくさんのミュージカル作品を劇場でご覧いただければと思います。本日はありがとうございました」
最後は、城田さんがダニエルさんにも感謝を伝え、2人がガッチリと握手を交わしたところでトークショーは終了となりました。
キャストと共にこの作品を支えるすべてのスタッフの思いが詰まったミュージカル『ファントム』は、ますます熱を帯びながら走り続けます。今回のトークショーで取り上げられたキャストの皆さんのお気に入りのシーンも楽しみに、あなたもぜひ劇場へ!
(栗原晶子)
大阪公演では、10/6(月)18:30公演終演後に、出演者5名の
トークショーを開催予定です!お楽しみに☆