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不羈独立

te amo in aeternum i non dimittet vos

会った瞬間
何かがあったことはすぐに分かった

何気ない風を装いつつ
普段の気だるそうな雰囲気の中に
少しピリついた空気が見え隠れしている

ドライブデートの後、部屋でくつろぎつつ、
俺が差し入れた甘えびの2パック目を開けながら
唐突に彼女は言った


「プロポーズされた・・」


大好物の甘えびを、ひとつ、ふたつ
口の中に放り込む彼女

半ば予期はしていた

 

だから
言うべきことはわかってる

だけど・・

うまく、言葉という形になってくれない


「おめでとう」という、表面的な言葉なんて
彼女は決して望んでいない


「そっか・・」


ようやく、その言葉だけを絞り出した

あまりの間抜けさに、
我ながら苦笑したくなる


「だってね・・
   居間で甘えび食べてる時、
   突然言うんだよ・・
   雰囲気も何もないし・・
   せっかくの甘えび
   味わかんなくなっちゃうし・・」


泣き笑いの表情

君の指、こんなに細かったっけ・・

彼女には俺じゃない彼氏がいて
俺には彼女じゃない彼女がいる

それは、お互いにわかっていたこと


「甘えび、まだあるよ・・」


 

苦し紛れの言葉


「今夜はもういい」

「そっか・・」


細い指、白い手
愛おしく握りしめたら
そのまま・・
身体を預けてくる

その夜は
壊れそうなくらい、激しく抱いた

切なく乱れる彼女から
いつものシャンプーの香りと
ほのかな甘えびの香りがした


最後の朝

車で自宅近くまで送り届ける

お互い
最後まで、言葉を見つけられないまま


「元気でね」

「うん・・元気で」


さよならは、
ただ息が苦しくなるだけ

あえて言う必要もない


数か月後、共通の友人から
彼女が結婚したことを聞いた

その夜は独り、甘えびを肴に晩酌


 

あの時言えなかったけど


おめでとう・・
末永く、お幸せに・・


その夜の甘えびは
すこしだけ、しょっぱかった