自粛と猛暑の最中ではありますが、
これはぜひ観ねば!と、
東急文化村で『17歳のウィーン
フロイト教授人生のレッスン』
を観てきました。
以下、ネタバレあります。

フロイトや精神分析学との
付き合いは長いです。
私は当初、トラウマや解離への
興味から入ったので、
実際にフロイト理論や著作に
出会ったのは少し後で、
多分1999年頃と思います。
その頃でも、もっと後の対象関係論
などの方が、好きでした。

作中では時代背景として
ナチスがだんだんと台頭してき、
オーストリアやウィーンも
ナチス一色に染まっていく、
というのがあります。
作品最後の方で史実通り
フロイトがロンドンへ亡命する、
というのが出てきますが、
フロイトとその娘で精神分析家となった
アナ・フロイトがロンドンにいなければ、
ロンドンでは今より精神分析が
盛んでなかったといったことも
あったのかもしれません。

さて、主人公フランツは
オーストリアの田舎に住んでいましたが、
母を養ってくれていた男性が
急死したため、母のはからいで
ウィーンに出てタバコ屋で
見習いとして働くことになります。

そこの顧客の一人がフロイト、
という設定です。
実際、フロイトは無類の葉巻好き
だったことで知られており、
喫煙が原因と見られるガンで
亡くなっていますが、
今だったらさしずめ彼の患者は
嫌煙権を訴えるところでしょう!

フランツはある女性に恋をし、
コケティッシュで奔放な彼女の後を追い、
恋敵やタバコ屋の店主と対立する
人たちとケンカしたりと、
不器用な日々を送ります。

そんな彼も、ユダヤ人を
顧客に持っていると、
ゲシュタポに目をつけられ、
店主が連れて行かれてしまったせいで、
一人前にならざるを得なくなります。
やがては彼も、似たような
運命を辿ってしまうのですが…

映画で俳優とは言え、私には
フロイトが動いているというのは
不思議でした。
著書も多大で、フロイトについて
書かれたものもあまりに多く、
あくまで本の中の人、文字化された
人だったのです。

心理療法についての映画を観たとき、
いつも感じるように、
フロイトはこんなことはきっと
言わないよ、とか、
しないよ、といったこともいっぱい
ありました。
まぁ、筋立て上仕方ないのでしょうが。

また、フロイトがフランツにした
3つのアドバイスのうち、
夢を書く、というのがありました。
これは私も実践していますが、
自分の中の自分を知るには、
いい手段です。

そのため、作中にはフランツの夢が
いくつも映像化されて出てき、
これは面白いな、と思いました。

現実の出来事と夢を
行ったり来たりするのです。

小説の中の夢のように、
多少作られた感はありましたが…

フロイトを演じたブルーノ・ガンツは
ベルリン天使の詩で天使役をした人で、
これが遺作になったとのことです。

ベルリン天使の詩は、
私がもっとも好きな映画の一つです。

ガンツがフロイト役を演じてくれたのも、
なんだか偶然ではないように
思えてきます。

思うに作者は、作中のフランツのように、
迷える若い時代に、フロイトのような
人生の指南をしてくれる人が
いたら良かったのにな、と
思ったのではないでしょうか。
原作があり、読んでいないので
なんとも言えませんが。


☆☆☆☆☆
私もまだ読んでないのですが、
原作はこちら↓