家内は

ふつうの家庭で育ち、

東京に出て、好きな語学を学んだ。

 

東ヨーロッパの城

 

学校のゼミでいっしょだったA君が

家内に恋をしたらしいが、

奥手の彼女は

好意を持っていると気づかないまま

,外資系の企業に就職した。

 

(実は私も、同時期に

同じ丸ビルの1つ違いの階で

別の会社の面接を受けていたことがわかり、

あとで2人でびっくりした)。

 

イギリスの大学

 

その会社で貯めたお金で

彼女は

イギリスに留学した。

 

日本からは、

毎日のように

A君からのラブレターが来たそうである。

 

留学から帰ってからも

A君の情熱は衰えず、

故郷の電力会社に再就職した家内に会うために、

東京からわざわざ

彼女の家に、

お母さんを連れて訪ねて来たこともあった。

 

八幡浜の古い銭湯。改修するという噂があったがどうなっているか知らない。

 

当時、私は、

父と祖母を亡くし、

病気がちの母と生活するため、故郷に戻り、

忙しく働いていた。

 

そして、ある人の軽い紹介で、

隣町に住む家内と喫茶店で出会った。
きれいな娘だったのでいっぺんに好きになった。

 

髪と色は似ている。この娘は気丈さがもろに出ている。家内はこんなではなかった。ただ、最近、私は家内に主導権を握られ始めた。

 

毎晩電話し、

何度も誘って、

競争相手が多いので、時間はひどくかかったが、

最後には誘惑するようにして結婚した。

(結局、いちばん好きだったのは私だったようだが、

私にはいっぱい女がいるにちがいない

と誤解していたようだ)

 

 

A君は、

私たちが結婚したあとも、

あきらめきれず、

ときどき電話を掛けて来た。
私が、A君からの

電話を取ったことも、何度かある。

 

モロッコの木に登るヤギ。新婚旅行のバスの窓から見た。


東北出身のA君は、

あるときすばらしい魚の干物セットを

送ってくれた。

 

 

家内はすぐに

お礼のハガキを出した。

 

ところがその半年後、

A君のお兄さんから家内宛に手紙が届いた。

 

A君が急な病気で

亡くなったという知らせだった。

 

A君は、最後まで、

その干物が

家内に届いたかどうか

気にしていたらしい。

 

郵便受けの下に

家内からのお礼のハガキが、

隠れるように張り付いていたそうである。
A君は、

ハガキを読まなかったのだ。

 

お兄さんが、

A君のアパートの

後片付けをしに来て、

郵便受けをはずすときに気づいたそうだ。

 

スペインの街角

 

家内を渡すわけにはいかないが、

ちょっとかわいそうな気がした。

 

彼は東北の漁村の生まれである。

その町は後に

大震災の被害にあった。

 

 

万が一、

家内が私と結婚せずに、

彼の町に住むことになっていたら、

家内もどうなっていたか。

 

人生はどうなるかわからないけれど

自分の幸運を信じて

思い通りに生きたいのだが。

 

<今の運勢>

「巽(そん)」。風がどこにでも入り込むような運勢。情報を得るにはもってこいの情勢である。ただし実行はもう少し待ってからにしよう。