土建会社の

下請けで働いていた父は、

飯場(はんば)の連中からいろんな質問を受けたそうだ。

関八州とはなんですか、

と聞かれたりする。
まだネットが発達していない時代のことである。

 

 

答えられないこともあるので

何かよい事典はないかと言ってきた。

 

私は、手元に置いて使っていたのと同じ

学研の新世紀百科事典を買って送った。

この辞典は

下宿だけでなく家にも置いていたし、

恋人にもプレゼントした。

だから、今、うちには4冊もある。

 


まん中にあるやつ。これはいちばん新しいもの。古いのは黒っぽくて柔らかい手触り。

 

ある日、新聞に、

この新世紀百科事典の

宣伝に加えて

読書についてのエッセイを書く懸賞募集があった。

何ヶ月か経って、

家内が、何か郵便が来た、と言う。
何だろう、と聞くと、

図書券がはいっている。

 

 

しばらく考えて、
エッセイを書いて送ったことを、思い出した。

2等に入選して、

なんと、図書券が20万円分。

 

新世紀が始まるころのことである。

 

あれから20年以上。

すっかりパソコンの時代になり、
百科事典は不要になってしまった。

<今の運勢>
 「否」。だめだ、という意味。目の前が真っ暗で、どうしていいかわからない。しかし、災難もこれで終わりだ。もう少しでうれしいことが起こる。