うちの娘はまだ新米なので

病院から、

行け、

と言われたら、行かなければならない。

 

種子島に行け、と言われた。

 

済生会は、

秋篠宮を総裁として、

恵まれない地域の人々に医療を提供する。

 

だから僻地へも派遣されるのだ。

 


 

行って驚くことばかり。

 

担当の患者さんを数人、

着いたらすぐ任された。

 

カルテには

ほとんど何も書いてない。

 

 

最初から診察しなくてはならない。

 

優しいおばあさんは

重症に近い糖尿病だった。

 

低血糖値ぎりぎりに抑えなければならない。

その値を切ると危険。

綱渡りのような治療だ。

 

今まで何をしていたのだろうと

思うけれど、

患者が多すぎて手が回らないのだ。

 

しかし、個人的には、

食事がとてもおいしくて、

すっかり

種子島が気に入ったようだ。

 

 

夕方になると、院長先生に

中央から来た映画に行こうと誘われた。

 

断るのもいけないかな、

と思って、

患者さんのケアを大急ぎで、済ませた。

 

行ってみると映画館ではない。

 

映画を見るのではなく、

中央から来た

映画撮影隊との会食だった。

 

若い監督や女優さんたちと・・

残してきた患者さんのことを気にしながら

ほとんど会話もなく。

 

こんな会・・

せめて事前にこうすると話してくれていたら、

その監督の履歴などを

調べておけるのに・・

 

 

サーフィンを物語にした映画だという。

そんなこと知らない!

 

種子島では、

映画撮影さえ大きな話題になるのだ。

 

土曜日には宇宙センターなどを見学した。

「君の名は。」が大好きで

うきうきして見学したらしい。

 

 

翌日はまた、院長先生のお誘い。

もてなしてくださるのはわかるのだけれど・・

 

それが何と、あのサーフィンのお誘いだった。

 

生まれて初めてのサーフィン。

ぜんぜんできないのに、波にもまれて、ひどい目に遭った。

 

 

トヨタのフィットを提供してくれたので、

どこにでも行ける。

道はまっすぐで、舗装されていて、快適である。

 

ところがある日、出勤して、驚いた。

あちこちにポスターが貼ってある。

 

「〇〇のソロ・サックス演奏会」

と出ている。

 

数日前に、どうも履歴書を見たらしい院長から

「サックスが吹けるんだって?」

といわれて、ハイと言ったら、

「いつか演奏してみて」

「ハイ」

 

それが自分の演奏会になるとは!

 

通る人ごとに

「期待してます」

と言われるし、名札を外したくなるほど。

 

ドラムもないしベースギターもないし、

完全なソロ。

 

「どうする?」

と私が電話で尋ねたら、

「仕方がないからパソコンで伴奏を入れる」

と答えた。

 

ジャズはだめだろうから、

歌謡曲の楽譜も買わないといけないし、

伴奏のセッティングもたいへん、寝るひまがあるのだろうか。

 

第一に、サックスも取り寄せなくてはならない。

今までの仲間が協力してくれるそうだが。

 

 

「もー・・院長先生は勝手なのだから・・」

と、悩みと忙しさの果てがない。

 

院長先生としてみたら、

娯楽のない僻地の人々に

少しでも楽しみを、と考えてのことだろうが、

思いつきだけではだめ・・もっと気配りを。

 

<今の運勢>

「解」。悩みが解ける。やがて自由になる。行動は早く速く。できれば今日中に。遅くとも2カ月以内に。