卒業して数か月。

彼女の戦略は、誰とでも仲良くなること。

それでも最初は意地悪なベテラン看護婦にいじめられていた。

それにしても忙しい。

救急病院なので夜中にも患者が次々と運ばれてくる。

当直と重なるときは24時間、寝る間がない。

 

手先が器用なので、

(子供のときからそうなるように育てた)

どんどん手術をさせられる。

松山国体があったとき、

自転車競技の女子選手が転倒して運ばれてきた。

口から耳まで裂けていたそうである。

 

男性医者には雑な人もいるので

娘が率先して縫った。

 

早く縫わなければならない。

運ばれてきたそのまま、中腰で縫った。

 

砂が皮膚にめり込んでいて、

それを取るのに時間がかかったが、

顔に傷を残さないために、頑張ったそうだ。

ところが中腰で手術したものだから

本人がぎっくり腰になってしまった。

しかし、

患者が多いので病院を休めない。

痛み止めを打って乗り切った。

 

真夜中に救急患者が運ばれてきた。

その患者は変な患者で、陽気に裸踊りをする。

看護婦も医者も大笑いしていた。

 

警察官は、留置所に置きましょうか、と連れて帰ろうとした。

娘はその時、運良く、国試で勉強したことを思い出した。

右側頭葉の言語野が出血しているのではないか。

 

そこで医長に進言して、MRIで脳内を調べた。

まさに、その通り、出血していた。

すぐに処置して、救急車で大学病院に送ったそうである。

たぶん、助かっただろう。

先日は忘年会。

忙しいのに、衣装を20枚ほど縫った。

それを着て、院長をはじみんなで、ダンスをして大爆笑。

楽しかったようだ。

 

<今の運勢>

蠱。ウジ虫が皿の上に載っている象。その通り、今年の嫌なものを全部捨てて明日から新しい出発をしよう。