学生時代に、誘われたこととはいえ、

とんでもないことをしたことがある。

 

肝試しである。

場所が悪かった。

京都の鞍馬山である。

 

鞍馬寺の石段。清少納言もこの階段を上がった。

 

外人も入れて30人ほどが、

少人数に分かれて、

夜中に、

貴船神社から鞍馬寺まで歩いた。

 

鞍馬の道。牛若丸が武術の練習をした。

 

途中、鞍馬寺の奥の院、魔王殿がある。

必ず立ち寄って、

お祈りをするように取り決めていた。

 

魔王殿。鞍馬寺の奥の院。

 

真っ暗な魔王殿の後ろに、

友人のA と私が隠れて、

脅す役目をした。

 

「来たぞ、来たぞ」、と、

録音しておいたおどろおどろしいお経の声を、

鳴らした。

魔王殿の中から聞こえるように。

 

表で、「キャ」、とか、ばたばたという、

声や音が聞こえる。

 

A と暗闇の中で顔を見合わせて

うまくいった

と喜んでいた。

 

しばらく誰も来なくなった。

「もう終わりかな」、と、引き上げようとしたとき、

また、表の方で人の気配がする。

 

そこで、またお経の声を掛けた。

ところが今度は、

人の気配はするのだが、静まり返っている。

反応がない。

 

おかしいな、と思って、

横から覗こうととしたとたん、

表からものすごい

本物のお経の声が聞こえて来た。

 

びっくりして見ると、

10人ほどの修験者が横一列になって

こちらに向かってお経を唱えている。

 

A と二人で肝をつぶして、

急いで、

魔王殿の後ろの石垣を無理やり下りて

遠回りして逃げた。

 

あの修験者たちは、

ふだんはサラリーマンなどをしておられるだろうに、

たまたま私たちのいたずらにあって、

驚かれたことだろう。

ごめんなさい。

 

<今の運勢>

問題が起きたり意見が一致しなくて思うようにならない。やりすごすのがよい。