友人 A からの紀行文である。黒字は彼の文。赤字は私。

 

森鴎外の小品「舞姫」はベルリンが舞台。

戦災を経て、彼が訪れた時代とは、姿が変わった。

 

ベルリンのマリエン教会。彼の言う通り、昔の写真では,、古い石造りの建物に周囲を取り囲まれていたが、今は現代的なアパートが建っている。

 

ヒロインのエリスが「声をのみつつ泣いていた」場所。

父は死に、その葬式の金は一銭もない、母は無理ばかり・・

彼女を救った日本の青年・・やがてヒロインの悲劇へとつながっていく・・

 

私の記憶では、

最後のシーンは、青年が日本に帰ることになり、

それを知ったエリスは、「わたしをだましたのね」、と誤解して、

発狂したまま、生まれた赤ん坊をあやす。

そんな場面で終わったのだったと思う。

 

鴎外はこのあたりを

「狭く薄暗き巷」、と記しているけれど、

今は、広々とした公園になっている。

さめざめと泣く乙女の姿を想像するには少々苦しい。

 

 

すぐ近くのアレキサンダープラツ駅横の小店で

カリーヴォレスト(ソーセージのカレーかけ)をコーヒーで流し込み、

チリペッパーにむせび、涙を流す。

エリスへの涙だ。

 

青年、森鴎外は軍医となり、ドイツに留学している。

当時は船旅で、サイゴン、イタリアのブリンテッジに到り、そこから

陸路でベルリンに向かっている。

この船旅は2カ月強かかった大変なものだった。

彼は、あの細菌学者コッホの指導も受けた。

 

森鴎外は、山口県の萩の出身である。

ここに、博物館があった。

(ネットで調べたら今もあるそうだ)

 

大学の部活で知り合った女の子たちの中に、

福山雅治の奥さんに似た下級生がいた。

 

その女性の里が萩で、

博物館は彼女のおじいさんが建て、家の古道具が置いてある、

とか言っていた。

 

彼女は関西に出て、毎年、年賀状をくれていたが、

現地で結婚し離婚したあと、

からだ具合が悪い、松山に行くから会いたい、などと、

葉書をくれたあと、音信が途絶えた。

 

ドレスデン

 

ドレスデンで鴎外は、「文づかい」を書いている。

イイダ姫の凛とした気品は、

ドレスデンという町の品格の高さにぴったりだ。

親の決めた結婚に納得できず、王宮の女官になる。

その依頼の手紙を、日本から来た青年に託す。

自然描写の巧みさの上に、奇異の人生を選び取る才媛の

潔き生きざまを紡ぎ出した。

ドレスデンの町はすばらしい。

 

彼の紀行文は、ここまででまだ1枚目の半分である。

やれやれ、このあとは晩になるかな。

 

<今の運勢>

「渙」→「蹇」。出かけなければならないのに、急な寒さで家で過ごす。冬こもりの準備を急ごう。