家内がイギリスに住んでいたときの話。

 

アパートの老夫婦にかわいがられていたらしいが、

あるとき、

見舞いに行ってくれないか、

と頼まれたことがあった。

 

話を聞くと、

もっとずっと年上の知り合いのおばあさんがいて、

ときどき会いに行っていたのだが、

最近、

自分たちも年をとって

歩行もおぼつかなくなって、

もう会えそうもないと言う。

 

電話をしておくから、

代わりに行ってくれないかと言われた。

 

家内が、日本人なので

心根がやさしいと見込まれて、

頼まれたらしい。

 

学校が休みの日に、

出かけて行った。

 

まったく知らない町。

バスで行った。

 

バスを降りて、

近くだと聞いていたが、どこかわからない。

 

不安になったとき、

彼女には不思議なことが起こる。

いつも、

何かが助けてくれる。

 

そのときは、自分の背後から、

光る物が走ったと感じたらしい。

その光が、

いっぱいかわいい家が並んでいる、

そのうちの一軒の家に

はいって行ったらしい。

 

家内はためらいなく、

その家の玄関の呼びリンを押した。

 

まさに、その家だった。

待ちかねていたらしく、

すぐ戸が開いて、

まさに老婆といえるような婦人が、

にこにこしながら、招き入れてくれた。

 

通された部屋の壁には、

多くの皿やカップが掛けてあり並んでいた。

 

 

そのとき、一匹の大きい猫が、彼女の肩に飛び乗ってきた。

そして下りようとしない。

 

老婦人は、

「この猫は今まで決して他人に慣れなかったのよ」

と言った。

ずっと楽しくおしゃべりをする間、

その猫は一度も、

彼女の肩から降りようとしなかったらしい。

 

「私はあんまり、猫が好きじゃないのだけれど、

猫がいつもなついてくれるの。」

と、家内は言っている。

 

<今の運勢>

良い運がもう一度繰り返す。だから終わったと思ってすぐにやめたり捨てたりしないこと。短気を出して放ってしまうと運が逃げてしまう。