木曜、朝9時前
「そろそろ行きましょうか」
新人っぽい看護師さんがやってきた。
終わったら、ここには戻らないので
貴重品などどうしておいたらいいか聞いて、
言われたとおりに。
(あとあとこれが問題に。)


途中で先生と合流。
先生は展示会でもらったん?って感じの
しょーもないトートバッグを持ってた。
世間話しながら、てくてくと移動。
「ちょっとそこまで」感。

3重の大きな扉。
その度にこんな広さいる?って空間。
救急車をそのまま入れる為…?
そんなことせんか。

事前に練習したとおりに
名前と手術部位を聞かれて、
「すいぞうです」と答えた。


部屋は広いのに
狭いベットによっこら


麻酔科の事前説明通り、
まずは背中に痛み止めの管を入れた。
神経の側を通るということと、
背中と聞くと痛いイメージがあったけど、
全然痛くもなく、すぐに終わった。


体勢を仰向けに変えて、
鼻と口にカポッてやつをのせたら、
次の瞬間には、苦しさと激痛だった。

電気のスイッチを
パチパチってON-OFFした程度の
一瞬の出来事で手術は終わった。
ゴホゴホすると理解できない激痛。
よくある、
〇〇さーんって呼びかけされてない。
え?これってまだ手術途中なんちゃう?って
恐怖が湧いて来たけど、
管を抜かれ
見えた時計は22時をさしてて、
とりあえず
腹膜播種はなかったんだろうと思った。


ストレッチャーに乗って、
「段差ですよー」って言いながらも
容赦なくない?って位ずんずん進む。
ICUに入って、皆さんの声が沢山聞こえる。
痛みはどうですか?って聞かれて
痛いですって返事した覚えしかない。
あとは、ずっと
フットマッシャージャーみたいなのが
シュコシュコ鳴っていた。

父母がきてその後おっとも会いに来た。
こんな姿見せたくなかったけど、
現実が戻ってきたように思った。

その日の晩は
意識が一瞬飛ぶだけのような眠りだった。
お隣に緊急の方が入られて
心拍が止まる音を聞いた。



翌朝金曜ももちろん激痛は続いていた。
この日から色んな人に、
「おならは出ますか?」
と毎日聞かれるようになる。
おならが出ると身体が動き出したってことで
食欲も出てくるらしい。
人によっては翌日にはおならが出るらしい。
食欲なんて、考えられない。


麻酔科の先生が様子見に来た際
「めっちゃ痛いです」
「結構強いの入ってるなあ…
看護師さんに相談してみますね」
と言ってくれた。
外から「めっちゃ痛がってるんよ」
って麻酔科さんが言ってるのが聞こえたけど
その後特に変わらずだった。
みんなここまでじゃないの…?
これもまた酒強の無駄な能力何やろか。


手術着からパジャマに着替えさせてもらい
昼前にリハビリさんが
後輩ちゃんを連れてやってきた。
後輩ちゃんに
色々質問したり指示したりしながら、
いい先輩やなあと思う反面、
とても動ける状態じゃない。
リハビリさんの目標は
明日明後日が土日でリハビリないので、
今日のうちに私を立たせたいらしい。

ベットに腰掛けるところまで行ったけど
その後は泣きながら、固まっていた。
激痛のせいもだけど、
身体を起こすとめまいが酷かった。
一生このままだったら…と恐怖だったけど、
ずっと横になってるのが良くないそうなので、
ベットに若干の角度をつけておくことにした。

鼻水と痰が喉に詰まり、
でも飲み込んじゃ駄目と言われるし、
腹痛いし、つらすぎた。

後輩ちゃんにとって
私みたいな人は初なんやろうか…。
どんな記憶に残るんだろう…。
看護師さんが「顔拭き〜」って
持ってきてくれたおしぼりで
えげつない目ヤニが取れた。


夕方、父母が来た。
面会は一日2人までなので
おっとは来なかった。
リハビリの辛さと、腹痛と、心細さで
また父母を不安にさせたかと思うと辛かった。
私からは見えなかったけど、
父は泣いてたらしい
振る手の甲に入った点滴が痛そうだから
振らんでよか、と言いながら退出して言った。

ほんとに親不孝だな…と思う。
迷惑しかかけてないのに、育ててもらって、
でも全然自分を大切にできてないなと。


その晩もほとんど寝れなかったけど
夜勤の看護師さんが
結構な声量で世間話してるのに
すこしだけ気が紛れた。



ほんとうは術後の翌金曜には
ICUを出る計画だったけど
他の救急が入らない限り
土曜までいることになった。

土曜、朝
清掃のおじちゃんが、
前にステントの留置で入院した時に
病室に来てくれてた人だった。
気づいてほしかったけど、
こんな姿を見せるのもやだなって、
あんまり声を出さないようにしてた。


2本作ってたルートのうち
手の甲から薬を入れようとしたけど、
固まって駄目になってしまってた。
新しくルート取ろうとしてくれてたけど、
2人来て4箇所やったけど、駄目だった。
残ってる一本のルートで対応することに。

もともと取りづらい血管だけど、
ぱんぱんに浮腫んでもいたし、
かなり冷えてもいた。



次に知らない先生が来て
手首の動脈に刺さってるとか言う
恐ろしい針を抜いてもらい、
一般病棟へ戻ることになった。



結局わたしは
予定されていた切除箇所プラス、
切除した血管に関わる大腸の一部も切り取り
膵頭部、胆嚢、十二指腸、胃と大腸の一部に
手を加える事になってた。