本格的な梅雨に入り雨が降って肌寒い日が続きますが、こんな時期に気を付けてもらいたいのが実は熱中症なんです。意外に思われるかもしれませんが、気温が低くても熱中症になる人は多いんです。今回は何故熱中症になるのかどんな対策をすればよいのかを書いていきます。
目次
雨の日でも熱中症になる ! ?
2017年の夏、8月1日から8月17日までに搬送された熱中症患者は、総務省消防庁が発表したデータによりますと、全国で14,444人に上り、最高気温が30℃を下回った8月10日から8月12日だけでも2,248人が緊急搬送されています。
この年の夏は全国各地で雨が多く、特に東京都心では晴れ間も見られたものの17日間連続で雨を記録(8月1日~17日)。8月としては1977年に次いで2番目に長い記録となりました。
気温も例年と比べて低く、8月1日~17日で最高気温が30℃を下回る日が10日間あり、30℃を下回る日が1日のみで最高気温が35℃以上となる猛暑日もあった2016年の同時期と比較すると過ごしやすかったように感じられますが、2017年8月の平均しつどはなんと85%。これは89年ぶりに高い水準だったのです。
暑さや熱中症の主な原因は高い湿度。
熱中症は8月、真夏の炎天下で発症するイメージがありますが、実は梅雨が始まり湿度が高く蒸し暑い6月や、梅雨が明けて本格的に暑くなり始めの7月の、まだ暑さに体が慣れていない頃にもなりやすいといわれています。熱中症の危険度を判断する数値として環境省が情報提供している「暑さ指数(WBGT)」は、「気温」「湿度」「輻射熱」からなる指標で計算時の比率は、屋外の場合は湿度「7」:輻射熱「2」:気温「1」、屋内の場合は湿度「7」:輻射熱「3」となります。屋内外ともに湿度が暑さ指数の7割を占めていることから分かる通り、湿度が高い時ほど熱中症には注意が必要です。
熱中症による救急搬送時の気温と湿度の状況(2015年6月~9月)
※赤色が濃いほど救急搬送者数が多い
出典: 東京消防庁 ※一部改変
熱中症のリスク評価に使われる「暑さ指数(WBGT)」
【屋外】WBGT=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
【屋内】WBGT=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度
出典:環境省「熱中症 環境保健マニュアル2018」より作成
特に注意が必要とされているのは65歳以上の高齢者です。2017年は熱中症により全国で52,984人が救急搬送されていますが、その内およそ半数を占めるのが65歳以上の高齢者です。高齢になると体の温度センサーが鈍くなり暑さを感じにくいことに加え、冷房で体が冷やされることが苦手という方も多く、夏季の高齢者は若年者よりも室温が約2℃、相対湿度が約5%高い高温多湿な環境で暮らしているともいわれています。
熱中症患者の年齢別割合
出典:消防庁「平成29年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」より作成
熱中症の発生場所(2017年)
出典:消防庁「平成29年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」より作成
熱中症の対策検証
温度が同じでも湿度が下がると涼しい。
夏場の冷房の設定温度としては、“クールビズ”をきっかけに「28℃」が定着しつつありますが、28℃を暑いと感じる人も多くいます。(これは何もしていない時の設定温度なので、作業をしているときは27・6℃位にしないと暑いです。)そこで28℃でも快適性を損なわない室内空間のあり方を検証するために、横浜国立大学教授田中英登先生監修の下、20代から60代の男女12名(男性6名、女性6名)を対象に、「室温28℃/湿度85%」と「室温28℃/湿度60%」の場合で体感がどう変わるのか、湿度をコントロールすることで熱中症対策の可能性はあるのか、サーモグラフィを使った可視化検証試験を実施しました。
サーモグラフィを使った可視化検証試験の結果
- 温度28℃/湿度85%で皮膚温度の上昇がみられた状態から、(温度は28℃のまま)湿度を60%に減少させると12名中10名で顕著に手部や顔部の皮膚温度が低下しました。
- 主観的感覚は、湿度低下に伴い快適性が上昇する傾向が確認されました。
「湿度が20%変われば、体感温度は約4℃変わります」
今回の可視化検証試験では、同じ温度(28℃)でも、湿度が高い(85%)と暑く不快に感じ、湿度が低い(60%)と快適に感じる様子が男女ともに観察されました。このようになる理由は、湿度が低いと体温調節のために発せられた汗が蒸発し気化熱により体温を下げるのに対し、湿度が高いと汗が蒸発しにくく、十分に体温を下げることができずに更に汗をかき、より暑く感じてしまうためです。湿度が20%違うと体感温度は4℃違うと言われています。つまり、温度を変えなくても湿度をコントロールすることで熱中症対策、男女の温度に対する性差の解消につなげることができます。
エアコンが苦手な高齢者は暑さ対策に扇風機を使用することも多いのですが、室温や湿度が高い状態で扇風機を使うと、室内の暑い空気を長時間受け続けることになり、それが原因で熱中症になることもあります。普段から温度と湿度をチェックして、湿度が高い日にはエアコンの使用を心がけるようにしましょう。
実験監修
横浜国立大学 教育学部教授
田中 英登 先生
医学博士。1983年筑波大学大学院修士課程健康教育学科修了。大阪大学医学部助手、横浜国立大学助教授、米国デラウェア大学客員研究員を経て、2004年より横浜国立大学教育人間科学部教授。専門は環境生理学(温熱環境)、運動生理学。
熱中症の対策方法
温度28℃&湿度50~60%を目安に。
日頃から、温湿度計を使って湿度も把握するように心掛けてみましょう。設定温度28℃でも暑さを感じるときは要注意です。湿度が70%の時は熱中症の警戒レベル、71%からは厳重警戒レベルになります。温度だけを意識して我慢せず、エアコンを積極的に活用して湿度を50~60%にコントロールしていきましょう。
眠りやすい環境づくりは夜間熱中症対策にも。
寝るときに一晩中エアコンを使いたいという人は、設定温度は28℃以上に設定し、除湿運転で湿度設定を50~60%に下げましょう。湿度を下げることにより、体温を冷やしすぎずに体感温度だけが下がり、入眠直後の汗をしっかり乾かすことができるため、眠りやすい環境になります。(あくまでも目安なので人数が増えたり暑く感じる時は温度も下げましょう。)
エアコンをつけっぱなしのまま寝たくないという人は、タイマーを上手に使いましょう。就寝直後は汗の量が多くなりますが、タイマー運転で部屋を冷やすことで、湿度もコントロールされ、汗を乾かすことができるので入眠直後に眠りやすい環境になります。 このとき「切タイマー」を起床時間の2時間に設定すると、入眠直後の深い睡眠が温度変化で阻害されることなく、安定した睡眠を取りやすくなります。
尚、猛暑日や28℃では暑くて眠れないときには、寒くなりすぎない程度の設定温度に下げるなど、臨機応変に対応することで快適性を保ち、熱中症のリスクから体を守ることが大切です。
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