赤ちゃんを持つことは人間を原初から学べるということ。赤ちゃんは当然ひとりで生きられない。どれほど周囲の労働力がそこに加わっているか。その一つがおむつ交換。


生まれたての赤ちゃんのうんちは非常に柔らかく、ほとんど下痢のようだが、乳児だから母乳しか飲んでいないので、当たり前。


うんちが身近になった言うこともあり、 Kindle で『糞尿大全』を読む。この著者の柳内伸作氏は大真面目。記述にまったくふざけた様子はない。軍事に強いようですがそれ以外にもあらゆる分野の書物に精通し、その中から糞尿に関するところだけを引用している。


人間の発達段階でもフロイトが述べたように肛門期というものがある。一歳位の幼児にとってうんちを体内で作ることは創造的な行為。幼児期におけるうんちの創造性、芸術性は軽んじるべきではない。そして大人にもこの肛門期はいろんな形で残存しているのではないかとかねてより思ってきた。それを見事にこの本が教えてくれた。


〈くそくらえ〉という言葉がありますがこれは実際に江戸期の拷問で行われたことからきている。本当に食わせていた。拷問に糞尿を使うのは日本に限らず、インドでは不倫した男女は煮立った糞尿に投げ入れられる。


戦闘中に大便をしようとしていたら殺される話も面白く、楠木正成が敵に対して糞尿をぶっかけたというような話は有名。こういった糞尿にまつわる戦争での話も豊富。


例えば米軍がガダルカナル島にスパイ行為を行っていた時に、日本軍の数を知るために日本軍の糞を調べそれで人数を割り出した話が出ているが、日本軍の糞の量は非常に多く間違った人数だったらしい。


韓国軍は糞を地中深くに埋めて北朝鮮軍に研究されないようにする。何を食べているかそういったことまで全部把握されてしまうと、軍隊の様子が分かってしまうから。


糞尿は崇拝される対象でもある。明治天皇の糞をどうしても欲しいと言って、天皇がトイレでした後に駆け込んでそれを盗み、神社で祀った男の話などは、笑ってしまうが、これに近いことは有名人の糞尿崇拝が各国で行われていることからも、どうやら人間性の奥深いところに宿る何かがさせている。


ナポレオンが使用したおまるに酒を盛って飲んだ人間の話などもまさにそのひとつ。身近な話ではオヤジたちにとって女子校生というのはある意味、聖的な存在ですが、その昔にブルセラが流行った時に糞尿の売買が行われていたというようなことも本書には書かれている。


日本の小学生はうんこドリルなるものを使って漢字を勉強する。大体小学校の低学年あたりはうんこ話が好き。最近は、赤ん坊に読み聞かせる絵本を選んでいるが『でたでたうんち』と言う絵本があると女房に見せたら笑った。


本書は戦場での糞尿事情や、拷問で使われた糞尿の話、有名人の糞尿の話、連合赤軍の糞尿話、またはうんこを食べるというような話も出る。大真面目に、例えば船の上で何日も過ごさなくてはならなくなった時に、人間は尿すら飲んで飲水を確保し生き延びれるというようなことは無駄な知識ではないように思う。


こういったネタは下ネタとして排除されてしまうが故に深い考察が行われてない。それを真っ正面に取り上げた筆者を、高く評価する。民俗学的にも非常に興味深いテーマで、とても大学で教えるわけにはいかないが、ディープな日本文化ファンには教えたいネタがたくさん詰まっている。