前に住んでいた部屋よりも、キッチンが広く、ちゃんとした洗面台もついている、何よりお風呂にシャワーが付いているだけで幸せを感じることができる、今の部屋へ引っ越しをしたことで、未練など全くなく、以前の部屋のことなど、はるか銀河系の彼方まで忘れ去っていたが、引っ越しをして、半年ちょっと。。なんだか物足りなさを感じるようになってきた。そう、夏ごろからだ。
まず、花火が見れなくなった。以前は5階で、ベランダからは、方角を変えると、計3ヶ所でうち上がる花火が、大きさは距離が遠い毎に小さくなるが、ちゃんと綺麗にに見えていた。
ところが、今は2階である。花火?そんなもん見えねー。という状態。またベランダ自体が狭い。
次に、夜空が狭くなった。以前の5階は、南向きのベランダで、前にさほど大きな建物がなく、あっても遠くなので、夜空がずいっと東から西へ180度広がっていたのだ。そこから望遠鏡で見るスーパームーンは内側から妖しげな光を放って輝いていた。とても美しかった。2階からでは、前に建つマンションや、お店で、夜空が切り取られ、180度のパノラマにならないし、そもそも、望遠鏡が壊れてしまったので、引っ越してから、夜空を仰ぎ見ていない。
それに気づいたとき、私は、便利さと引き換えに癒しの空間を失ったことに気づいた。
真夏に、星空を眺めながら飲むビールは、たまらなく美味しかったというのに。
トイレのふたがついてないくらいなんだ!
5階なのにエレベーターがついてないくらいなんだ!ユニットバスじゃないから、冬場は窓の隙間から、裸には過酷な冷たい風が入ってくるくらいなんだ!まだまだあるが、言い出したらキリがない。
私は、今の時期なら、涼しい夜風に当たりながら、満月や火星なんかを見上げていた、あの至福の時間を自らの判断で失ったことを、今の今、気づいたのだ。愕然、、の境地。
住めば都。の意味がなんとなく分かったような気がした。