サラミは午前中の家事パフォーマンス(家事パ)が悪い。明治時代の自動車かというくらいとてつもなく悪い。

『主婦たるもの、テキパキと午前中に家事をこなすべし!』と誰も言わないが、それは最早当たり前事項だからに他ならないとサラミは思っている。

そんな当たり前ができないのがサラミである。


サラミは考える。

何をやっているんだ、いつも。

朝、家族を送り出し、台所の片付けが済むと、珈琲をセットし、HIIT-WBをやる。運動は、このタイミングでやらないと、運動嫌いのサラミは続けられないので、『片付け終わったらHIIT』というルールを固定化しているのだ。HIITが終わったら、ピアノを練習する。これも一連の流れである。そして、終えると珈琲を飲み、お勉強だの読書だの……。


サラミは気づいた。

珈琲をいれるから、このあとゆっくりしたくなるのだ。明日から、珈琲はいれないことにしよう。

なかなかいい考えだとサラミは自画自賛した。


しかし、サラミの家事パの悪さの原因はこれだけではないのだ。始めてからも、ついついスマホをいじったりしてしまうのだ。

そう。サラミはスマホ中毒なのである。

そこで、サラミは箱にスマホを入れることを思いついた。その箱に鍵があれば良いのだが、妄想ひろゆきが「そんなのにお金使わなくても、ちょっと考えれば同じ効果得られますよね」と言っているので、サラミは考えた。(あくまでサラミの妄想である)

取り出すのが面倒になればいいのだ。箱を、家の中でここに行くのはちょっと面倒くさいのよね、と感じる場所に置けばいいのだ。

サラミは閃いた。ビビビと閃いた。和室の押入に入れてしまえ!

サラミの家の『和室』と呼んでいる場所は、30cmくらい上がった上がり畳である。スリッパを脱いで1段上るという行為もひと手間である。奥に進んで押入の扉を開ける。そして、箱から出して、ようやくスマホが使えるのだ。なんと面倒くさい。これで家事を妨げるものがなくなるのである。

ナイスアイデアである。


しかし、サラミには一抹の不安があった。己の意思の脆弱さだ。金魚すくいのホイレベルなのだ。ちょっとしたことで、崩れてしまう意思。

ここは、モチベーションをあげておきたい。任務完了(予定の家事終了)の自分へのご褒美はどうだろうかと、サラミは考えた。しかし、終わったら好きな事ができるということは、すでにご褒美である。SNSをモチベーションとして使っている人がいると聞いたことがあったので、サラミもタイッツーの家事褒め褒め委員会に報告して、いいねをもらおうかとも思ったが、あまりいいねに感情が動かないタイプの人間のため、サラミには当てはまりそうもないのであった。


あれやこれやと色々考えて、サラミは、そもそも午前中にやる必要があるのか?という考えに至ってしまった。洗濯は、乾かしたいというのがあるので、午前中がいいが、掃除は午後でも良いではないか。むしろ、お昼ご飯でとったカロリーや糖質を午後の掃除で消費出来て素晴らしいではないか。午前中の頭がクリアな時間を読書や勉強に使った方が人生のパフォーマンスが上がるのではなかろうか。これまで、できない自分へのうしろめたさみたいなものを隠すように自分の常識で行くと気取った言い訳をしてきたサラミだったが、あえて午前中を自分のために使うっていう生き方も素敵だと気づいたのである。

今度こそ本心から、他人の作った常識ではなく、自分のために、午後にすると決めたのである。