優はなかなかコウと別れる決心がつかなかった。
理屈では解っていたが、
訳のわからない「意地」が芽生えていた。
それが「初めての妊娠の相手」であるだけで
望んだ妊娠でもなく
辛い思いをしたことへの「執着」と
コウへの「愛情」を間違えて感じていたことに
気が付くまで1年費やした。
皮肉にも、それに気付いたのは
カズとの再会だった。
突然電話があった。
「オレや。久しぶり。
ちょっと会えへんか?」
優は電話の声を聞いただけで、胸の高まりを感じた。
心臓がバクバクしていた。
「急に何なん?」
「とにかく会ぅてくれ」
翌日の仕事帰りに、会う約束をした。
優、23歳の夏だった。
