??:待って…ハァハァ…置いて、かないで、



保健室のベッドで気持ちよく寝ていたら
隣のベッドから声がした。


本当は見るつもりは無かったけど、
聞こえてくる声が苦しそうだったし、
心配で、私はカーテンを開けた。




シャッ



開けると、息苦しそうにしている女の子がいて、
うなされているみたいだった。



??:ハァハァハァ…


愛佳:…大丈夫かなぁ。



私はとりあえず、おでこにかいていた汗を
ハンカチで拭いてあげた。


それにしても、すごい汗…
熱、高いんだろうな…


けど、他人は他人だから。
と思ってベッドに戻ろうとしたら、
シャツの裾を後ろから掴まれた。



愛佳:えっ…


え?
今起きている状況が理解できずに
私は数秒止まってしまった。



えっと…こういう時ってどうすれば良いんだろう…
とりあえず、この手を離してもらう?
と思い、その人の手に手をかけた。




けど、さっきの状況が頭に浮かぶ。
置いてかないで…か。



私は彼女の手を握って、
小さな声でつぶやいた。





愛佳:大丈夫…私がいるから。





そう言うと、安心したようにスースー
寝息を立てながら彼女は眠り始めた。




愛佳:良かった…。


 

私は、とりあえず、彼女が寝ているベッドに腰掛けて、彼女のことを見つめた。 



スッと通った鼻筋、長い睫毛。

モテるんだろうなぁ、この人。
クラス内では、中心人物って感じかな。
ま、関係ないけど。





愛佳:置いてかないで…か。



そう言ってた意味は何となくわかる。
だって、私も一緒だったから…




ふと外を見上げると
綺麗な青空がアニメのように広がっていた。
外からは、生徒の笑い声が聞こえてきた。









愛佳:…いいな…



??:ん……



愛佳:あ、起きたかな。



声がする方を見ると、目をこすりながら、
あくびをしている彼女がいた。



こんな顔してるんだ。すごい綺麗な顔。



彼女は起き上がろうとして、
けど、脱力してまたベットに戻った。




ボソッと呟いた言葉が私の耳にきちんと入ってきた。




理佐:…1人にしないで…









彼女は繋いでる方の手を自分の顔の近くに
寄せてまじまじと見つめた。




けど、ハァっ とため息をついて
その手で髪の毛をグシャグシャにした。





愛佳:私はここにいるよ…ねぇ。
あなたは1人じゃないよ…



そう問いかけても、答えが返ってこない。





当たり前だよね…





だって、私はもう存在してないから。
気づいたら、ずっとここに居た。
出ようと思っても、出られずに。







理佐:…愛佳…
ごめんね…。愛佳…



え?私の名前?
確かに彼女は私の名前を呼んでいた。


けど、私は彼女が誰だか思い出せないんだ。





理佐:夢で会うなんて、ダメだよ…
まだ伝えられてないことがたくさんあったのに…






そう彼女が呟いた瞬間、激しい光が目の前を照らした。





愛佳:っ…!





ーーーーーーーーーーーーーーーーーー





愛佳:理佐〜〜アイス食べたい〜〜


理佐:は?何でさっきコンビニ寄ったのに買わなかったの?


愛佳:あ!そういえばそうだ!


理佐:バカじゃん。




そう言ってケラケラ笑っている彼女がいた。

その彼女の後ろ側から迫る大きなトラック。





ププーッ!!!



愛佳:理佐!!!!!!!




ドンッ




私は彼女を押しやって、
彼女の代わりにトラックに轢かれた。


だから、私は死んだんだ。



はっきりと思い出した。



私は彼女のことが大好きだった。
その日は私が理佐に告白しようと思ってた日。



何回も練習して、私の部屋で
気持ちを伝えようとしてたんだ。






愛佳:あっは…ダサいな、私。





頰に感じる温かい感触。



愛佳:泣いてるんだ…





涙に気づいた時、現実の世界に戻ったみたいだった。




愛佳:…




理佐:愛佳?!!!!!!!




目を開けると、目に涙をいっぱいに溜めた彼女が居た。




愛佳:り、さ…?


理佐:分かる!?理佐だよ?!



私はゆっくり頷いた。




あれ…?私、死んでなかったの…?





体を動かそうと思っても思い通りに動かない。


精一杯の力で顔を下に向けると
たくさんの機械に繋がれている私の体があった。


腕や足には包帯がたくさん巻かれている。





理佐:愛佳…ほんとに良かった…
ごめんね…ごめんね…



そう言って涙をポロポロこぼしながら、
彼女は何度も何度も謝った。




私はまともに動かない手を理佐の頰にあてた。



理佐:愛佳…



愛佳:り、さ…、す、きだ、よ?




そう伝えた瞬間、目の前が真っ暗になった。




ピーピーピーピーピーピーピーピー





理佐:愛佳?!愛佳!!!




私に向かって叫んでいる理佐が
どんどん遠くになっていった。








愛佳:そっか…神様は、私にこれを伝えさせるために、一回だけチャンスをくれたんだね…?
…ありがとう。





何だか、冷静にとらえられた気がした。



理佐と離れてしまうのは寂しいけど…
理佐にいつか会えるのを信じて
私はこの世界で楽しもうかな…






理佐。



私は元気にやっていくから
理佐も元気でね。