といっても金太のヤツではない。
新幹線で新横浜への道中、ふと地べたを見るとカメムシが。
よくよく見るとカサカサ動いている。こっちへ来るなよとアイコンタクトを取るやいなや、動きを止めるターゲット。
しばしの沈黙の後、思い立ったかのごとくこちらへ向かってくるではないか。
慌てて足元のカバンを膝へ乗せ靴を地面から上げること数分。
どうやらうまくやり過ごしたようだ。ようやく安堵の時が訪れる。
時は経ちまもなく新横浜。一服しとくかと席を立ち、リフレッシュできたとこで席に戻る。
ふと視線を下ろすと再びヤツの姿が通路のど真ん中に。
今度こそはと鬼気迫る形相が効いたかどうかはわからんが、通路跨いで隣の睡眠中の御仁の靴もとに向かう彼。
あぁ、彼の短くも波瀾万丈な虫生も革靴に踏まれて終わりか、合掌。
が、彼はこれっぽっちも諦めてはいなかった。
靴を登り始めたのだ。
現金なものだが私は、こちらに被害が無い今、彼を応援し始めた。
頑張れ。しがみつけ。
声には出さずともエールが届いたのか、山を攻める彼。
…おい。
先生ちょっと頑張りすぎじゃないかい…。膝を越えて太ももはヤバイだろ。
このままいくと股間に到達して、目を覚ました御仁がパニックになり、払った拍子にこちらへ飛んでくる可能性大。
そうこうしている内に内腿付近へ到達しているではないか。
まもなく訪れるであろう危機を察知した私は笑いをこらえつつ、そっと席を後にした。
合掌。