先日、飛石連休藤井さん宅で、ご近所に住む芸人数名とで鍋パーティーを開催させて頂きました。
前々より、いつかやろうと言っていたのですが、なかなか実現に至らず、やっと開催されるということで私の心はとても楽しげな、かつ軽やかな春の草原を走る小鹿のようなステップを踏んでおりました。
そしてさらには、先輩の藤井さんのお部屋をお借りし鍋パーティーをするということで、私も微力ながら頑張って鍋つくりをお手伝いさせて頂こう、日頃お世話になっている分をお返しするんだ、と強く意気込んでおりました。
しかし、二人の先輩がこれを許してくれませんでした。
部屋の主、藤井さんとキングオブコメディ高橋さんであります。
彼らはまさに職人でありました。
鍋職人でありました。
二人とも40近いとは思えないような手際の良さ、高い集中力、そして鍋に対する熱い情熱で、我々後輩陣はお手伝いはおろか、キッチンにすら入れてもらえませんでした。
お手伝いさせてくれませんか、と近づこうものなら、藤井さんに、
「逆に邪魔や、座っておけ!」
と、リビングに追い返されてしまうのであります。
リビングから眺めるキッチンは、本格的中華料理店のお昼のピーク時のぴりついた厨房のようでありました。
二人の飛び散る汗、飛び交う怒声、キッチンはまさに戦場でありました。
また、高橋さんの包丁さばきは本物でありました。
手馴れた手つきで、鶏肉やネギや白菜を正確な大きさに切り刻んでいくのです。
しかも、そのスピードは素晴らしく、我々後輩陣は「おおー」と感嘆の声をあげてしまったほどであります。
我々は本当に感心してしまったのでありますが、当の高橋さんは、
「まあ、いつも家でやってるからな。」
とクールに言っておりました。
料理の上手い男ってセクシーだなと感じました。
しかしその後、高橋さんが指を包丁で切ってしまい、血をたれ流しはじめた時は、非常にきまずい空気が部屋中に流れました。
藤井さんは最後まで働いてらっしゃいました。
馬車馬のように働いてらっしゃいました。
よく見たら馬面でらっしゃいました。
最後の皿洗いまでしようとしているので、これくらいは我々にさせてくださいとお願いしても、いや、いいんやと拒絶されてしまうのであります。
しかし、ここは後輩としては意地でもやらなければと思い、しつこくやりますよと言っていましたら、最終的に藤井さんは、
「いいんや!やりたいんやー!やりたいねーん!」
と、今にも泣き崩れそうな勢いで拒絶なされました。
私はそっとしておこうと心に決めたものでありました。
今思えば、買い出しから鍋パーティーは始まっていたようなものでありました。
買い出しは私とキングオブコメディ高橋さん(以下パーケン)で行ったのですが、
パーケンの食材に対する熱いこだわり、慎重かつ大胆な食品選びはまさにプロでありました。
一体この男はどれほどスーパーに通っているんだと思ってしまうくらい、「今日はこの野菜が安いな」とか「今日のこのイカの色は生で食べれるな」と食材についてしゃべり続けていました。
鍋に全く関係のない魚の卵について、とても長い尺で説明し始めた時は、「少し黙らねえかな、この小蝿」と口走りそうになったほどであります。
パーケン(以下パー)は、鶏のひき肉と豚のひき肉、どちらを購入するかでひどく悩んでおりました。
鶏団子にするか、豚団子にするかで悩んでいたみたいです。
鶏肉と豚肉の間を何往復もしていた時は、「どっちでもいいから早く買えよ、このクソ虫」と口走りそうになったほどであります。
最終的に豚に決めたパー(以下パ)は、藤井さん宅に着くと、お肉と細かく切り刻んだ大葉やなんかを揉みこみ、とても美味しそうな団子を作ってくれました。
しかし、一口食べた際にそれが牛肉だったということが判明し、みんなにハンバーグみたいだねと言われ、変な空気になった時は、一体あの悩んだ時間はなんだったんだと感じずにはいられませんでした。
パ(以下、ハ)は、「混ぜてる時点で肉の色で気づいてたんだよ」と意味のわからない言い訳をおっしゃっておりました。
おっちょこちょいのハであります。
色々ございましたが、鍋は本当に美味しかったのであります。
なにかこう、40近い男たちの出汁のような深みを感じました。
藤井さんちの大っきいテレビでマイケルジャクソンのDVDを鑑賞しながら、みんなで食べる水炊きは幸せ以外の何物でもございませんでした。
近いうち、またやりましょう、藤井さん、ハ!