片思いをしている。
もう、絶対に会えない人に。
なんで、後から気づいたんだろう?
そう毎日毎日思わないといけない日々が続く。
『じゃーね。まあ、もう2度と会わないと思うけど。』
ファミレスの出口で、私の発した言葉に彼が凍りつく。
『なんで?』
予想してなかった、っていう反応。
『なんで?なんでって良く言えるよね。無理。』
そう冷たく言い放って自転車に跨る。
----3days ago-----
……連絡が取れない。
突然、3日前から彼氏と連絡が取れなくなった。
こんな事、一度も無かったのに。
朝私を仕事に送って行って、そのまま自分も仕事へ行く。
仕事が終わると私を迎えに来て、そのまま彼氏の家に帰る。
会ってない数時間の間も、数十件…数百件というメールをやり取りしていた。
毎日。
そんな彼氏と、3日前から連絡が取れない。
ほぼ同棲状態。完全に私が彼氏の家に住み着いていた感だが、それはただの流れってやつで、自分の意思は半分だった。
最初に会った時に、車で家に送ってもらうはずが何故かその彼氏の家に着いた。
そのまま家に入れられ、そのまま住み着いていた。
特に恋愛感情を持っているわけではないが、あまりにも私に“なついて”くるので、自分が家に住み着いてるくせにまるで新しいペットを飼ってる気分になった。
毎日一緒にいたし、どこにでも着いて来た。
時にはトイレにまで着いて来て、私に怒られたりして笑ってた。
本当に、ペットの様な彼氏だった。
その日私たちは数日後に迫った彼氏の誕生日をどうするか、メールで相談していた。
相談していた日は元々私は自分の家に戻る予定で、つまり久しぶりに彼氏とは会わない予定だった。
色々相談している途中で、
『じゃ、それは今度会った時に決めるって事にしよーぜーー。』
ってメールが入って、そのまま連絡が途絶えた。
最初の1日は特に気にしなかったが、2日、3日と経つうちに心配になった。
(まさか、事故ったりとか…してないよなぁ…。)
途中で、最後のメールがやけに“無理矢理終わらせてる感”だった事も気になったが、それよりも本人の安否が気になった。
『生きてるかい?』
っていうメールにも返信は無かった。
『大丈夫なの???』
これも無し。
電話をしてみたが、呼び出すけど出ない。
本当に心配してた時に、突然メールが入った。
『生きてるし、大丈夫だからそんなに心配しないで。』
…ちょっとほっとしたが、やけによそよそしいメールも気になった。
何かが気になったまま、その3日間を過ごした。
正直、仕事中もあまり集中していなかった。
すると、突然電話が鳴った。
『お腹減ったぁ~~。ごはん食べに行こうよ~~~~。』
私はほっと胸を撫で下ろし、自転車でその場所へ向かった。
『本当に心配したんだから!!!』
『ごめんよーー。』
そう言いながら、4日ぶりに一緒にご飯を食べた。
(びっくりしたなぁもう。)
そう思いながらも、いつもに戻った状況を自分でも思った以上に安心していた。
『つーか、何してたの?』
『お台場にいたー。』
『お台場???なんで?????』
『○○が東京来てたから、案内してて…。そのまま3日間お台場にいた。』
『○○って…。あんたの元カノの友達の子じゃん!!!!』
突然の、3日間も別の女の子と一緒にいたという報告(告白?)に衝撃を受ける。
『私もう帰るわ。』
そう言い残し、お金を払って店を出る。
『え??え???』
何で慌ててるのか分からない。
『じゃーね。まあ、もう2度と会わないと思うけど。』
----restore-----
『なんで??嫌だ!!!!!』
彼が私の自転車を押さえつける。
『嫌だって言う意味がわかんないよ。』
それを私が振り切ろうとする。
『でも嫌だ!誕生日もするって言ったじゃん!!!』
彼が私の自転車の鍵を奪った。
『返してよ!!!!』
私が叫ぶ声が駐車場に響く。
自転車を降りた私が彼の手から鍵を奪い返す。
呆然とする彼を残して、私はその場を物凄い速さで去っていった。
家に戻ると、興奮しきっていた私はそのままの勢いでダンボールに物を詰め始めた。
借りてた洋服から、CD、本、あげようと思って用意していた物も全て。
その勢いでコンビニに行き、荷物を送る手続きをした。
もう、思い残す事なんか無い。
というか、色々と意味が分からない。
浮気?
ならなんで報告する?
自分が楽になりたかったから?
でも悪気を感じない。
本当に仲が良いからたまたま3日一緒にお台場に…
いるわけないだろ、普通。
なんにせよ、ここにある事実が事実。
全てもういらない。
心配して損した。
だから連絡が無かったのか。
だからメールもそっけなかったのか。
だから最後のメールが無理矢理終わらせた感だったのか。
信じらんない。
今まで、自分が『ペット』と思って接してきた、言わば上から目線的に接してきた彼氏に裏切られた。
怒りと悲しみと、色々な感情が混ざって最悪な気持ちになった。
泣くにも泣けず、頭の中にそのことだけがぐるぐるまわっていた。
後日、彼氏…だったやつからメールが来た。
『荷物届いたよ。プレゼントも入れてくれたんだね。ありがとう。ごめんなさい。』
“ありがとう。ごめんなさい。”を読んで何故か一気に涙が出た。
それでも返事はしなかった。
更に数日経って、毎日自分にまとわり付いて来ていた存在がいなくなった私は物凄い喪失感を感じていた。
(これが俗に言うペットレス何とかっていうやつか…?)
違った。
寝ても覚めてもそいつの事しか考えなくなった。
なんか、もっと言い訳させてあげて、怒りつけたらそれで許してあげることも出来たんじゃないか?とか思い始めた。
同時に、私と共通の友達にそいつが物凄く落ち込んで相談しているという話しも漏れ聞いた。
でも私は何も出来なかった。
私にはその時にはまだ、“意地”が勝っていたから。
----several months later-----
普通に考えたら、あれで終わらせて正解の出来事なのに、今更私は引きずっていた。
どれだけ自分にとって彼が落ち着く存在だったか。
良く考えれば、一緒にいて苦痛な人間と同棲なんかしないわけだ。
私は勇気を出してメールをしてみた。
本当は後悔している事、本当に大事に思っていた事、そしてもう一度会いたいという内容のメールを。
しばらくたって、戻ってきたメールにはこう書かれていた。
『オレ引っ越したよ。だからきっともうそっちの方にも行かないし、
オレにとってあなたはもう過去の人。』
その通りだ。
過去の人。
色々な後悔にまとわりつかれ、私は今もその事ばかりを思っている。
彼がした事が良くない事だと分かっていても、そんなやつにしがみつく事が良くない事だと分かっていても、
彼が好きだった自分に気づいてしまったから。
今更。
もうずっと、連絡もしていない。
もしかすると電話番号も変わっているかもしれない。
私の周りの環境も変わってきている。
だけど、私の気持ちはずっと、あの時のまま。
もうすぐ1年が経つ。
前に進みたいのに、それを受け入れられない自分がいる。
どうする事も出来ない。
時間が解決してくれるのを、ただじっと待とうと思う。
・・・バイバイ、私の大切なペット君。