『ボクたちはみんな大人になれなかった』燃え殻(新潮社、2017)
この小説の最終話をTwitterで知ってCakesで読んだのが2016年8月。その時は、数ヵ月後に付き合っていた人と別れることになるとは微塵も思ってなかったけれど。それでも「ボク」の今から過去を想う、走馬灯のような描写に胸が痛くなった。朝焼けの冷たい、澄んだ空気を吸い込んだ時のような読後感だった気がする。
過去には戻れない。
過去は変えられない。
私たちは今を生きることしかできない。
けれどその今は、過去に出逢った自分より大切な人との時間や、その人から教えてもらったことで出来ているのかもしれない。
あとどれくらい、そんな人に出逢えるだろうか。
「ボクたちがあと50年生きるとして、人類ひとりひとりに挨拶する時間も残っていない。ボクたちが会えたことは奇跡だと思わない?」
どんなに大切な人でも、別れはやってくる。
生きることは儚くて、だからこそ美しいと信じたい。