2024.10 
限定を解除して全体公開に切り替えました


土日無関係の夫がやっと取った夏休み、
奮発して、海の見える部屋付き露天のある温泉宿に2泊。
た か か っ た - !
いいお宿で、のんびりできました。
 
まぁ、湯桶三昧というわけにはいかず、
プールに動物園にと長男中心のレクリエーションで、
帰り道は(長男以外)ぐったり。
 
でも、今後移植を控えている身としては、
フルスロットルで遊んであげられる日々もしばらくお預けになるかもと思うと、
ついつい、財布のひもが緩みます。
長男、第一子、甘やかされてますw
 
 
やれやれ、今日からまた仕事です。
 

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前回の記事はこちら

※アメンバー限定記事です、すみません。
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●クリニックに相談に行く
 
採卵をしたクリニックは、PGT-Mの相談に乗ってくれません。
ただただ、体外受精をしています、というだけのクリニック。
(ごくごく普通の不妊治療クリニックです)
 
PGT-A、いわゆる染色体異常の受精卵を除くことで着床率を上げようとする着床前診断は、
NIPTと同じく、表向きは日産婦が認めた認可施設でしかできませんが、
海外含め、少し本気になってネットで調べれば、日産婦が認定した施設以外のところでもやっているところは出てきます。
私が採卵したクリニックもそうした需要からPGT-A、ひいてはPGT-Mの希望患者の引き受けをしているのだと思われます。
(仲介している機関は別組織ですが)
 
日産婦を除名された神戸市の大谷クリニック(神戸ARTレディースクリニック)など以外にも、
そういうクリニックは複数あるのが現状です。
ダブルスタンダードといわれればそうだし、
日産婦の見解と実際の妊婦さんたちとの需要のミスマッチだともいえるし、
世界的に技術だけが進んで、それに比べて議論が追い付かない日本の現状だとも言えます。
 
そして、国が方針を示していない以上、学会=日産婦の指針にそった基準が国の基準になっている今、
そのグレーゾーンの無認可施設で大っぴらにPGT-Mのカウンセリングはしてくれません。
 
結果の分析、それを受けてどうするかはすべて患者個人の責任で判断しなければならず。
 
 
2回の採卵を終え、PGT-M/PGT-Aの結果が出てから、
その結果の紙をもって、私は個人的に別のクリニックのカウンセリングを受診しました。
2019年6月、検査結果が出た2週間ほど後のことです。
 
これまでの経緯をずっと相談している先生。
1回目の採卵の時も、結果への不安や今後の相談をさせてもらっていましたが、
今回は2度目の採卵、そしてPGT-M/Aの結果の解読も、忙しい中時間をかけて、わかりやすく教えてくださいました。
 
まず、17個検査に出して、RBが遺伝していない胚盤胞が8個あったのに、染色体異常のない胚が2個しかなかったこと。
これにかなり落ち込んでいることを伝えてみると、
「まぁ、こんなもんでしょ」
とあっさり(笑)
 
染色体異常がある受精卵は、胚盤胞になる前に成長が止まってしまう場合もあるときいていたので、
胚盤胞になったものとしての割合では多すぎないかを尋ねましたが、
「確率論でいえばそうかもしれないけど、正常胚0個の人だっているし」
と聞いて、
「あー、普段確率確率言ってるくせに、RB以外のところでは平均値にこだわってるのは私の方か」
と、妙に納得しました。
 
RBの遺伝がないものに関してだけ、PGT-Aをお願いしたので、
それを1つ1つ解説してもらいました。
 
〇番染色体のモノソミー(染色体が1つしかない)、トリソミー(3つある)、ハイリスクモザイク(混ざってる)等々。
よく聞く13、18、21染色体のトリソミーであれば、それぞれ「症候群」と名前がついて、耳にする機会も多いですが、
他の染色体のトリソミーやモノソミー(しかも一部欠損などもある)が、どういう症状になるかもわからず。
カウンセリング前に、1つ1つ染色体の番号を入れて検索をしてみました。
10万人に1人とか、全国で症例が〇人とか、生まれてくる子もいるんだなぁと思いながら。
 
結論からいえば、先生の解説では、やはり移植可能なものは正常胚とされた2つだけ、ということでした。
 
例えば、モザイクと呼ばれる、正常な細胞と、染色体異常の細胞が混ざっている胚も、
移植すれば正常胚が増えていって異常胚は淘汰される「ローリスクモザイク」もあるそうですが、
結果によると、モザイクもハイリスクばかりでまず着床しなさそう、というものがほとんど。
検査結果の見方、検査結果が間違っている可能性なども、図を描きながら丁寧に説明してくれました。
 
17個の胚盤胞は凍結している状態でしたが、
結果を受けて、その分析が済んだら、少なくともRBが遺伝しているものは廃棄しようと決めていました。
そして、染色体異常が多かったという結果を見たあとは、
先生に分析してもらって、
着床する可能性があるものだけを残して、それ以外も廃棄しようと思っていました。
 

その可能性を尋ねると、
「ぜったいとは言い切れないけど、この胚盤胞たちはまず着床しないか、したも流産してしまうよ」とのこと。
それを聞いて、ほっとしている自分もいました。
「遺伝カウンセラーがそういうんだから」という免罪符をもらったようで。
 

多分、つらい宣告やつらい可能性の話をこれまで何百回も妊婦さんにしているであろう先生は、
ある意味割り切っていて、とても淡泊に説明してくれていました。
もともと歯に衣着せぬ人なので、私はそれをとてもありがたいと思っていたのですが。
 
一通り説明を終えて、ふと先生が、
「でも、本当にやっとここまで来たんだね」
と、ぽつっと一言。

PGT-Mを決めるまで、
採卵の日々、
結果がでてから悩む日々、
もちろん夫や友人は常に相談にのってくれていましたが、
家族でも、ソウルメイト(笑)でも他人は他人。
 
ある意味では孤独だったRBという疾患に向き合ってきたここ数年の苦労や辛さを
ふっと緩めてくれるような、魔法の一言に思えました。
出会ってまだ1年足らずの先生なのに、です。
ああ、本当にカウンセリングって大事なんだなぁと、
この先生に出会えてよかったなぁと、心から思いました。
 
 
●凍結胚盤胞の廃棄
 
胚盤胞には、ガードナーという人が提唱したという「ステージ」「グレード」というものがつけられます。
見た目の細胞の分裂具合で、胚の成長をステージ1~5に分類し、グレードAA~CCまでのランクがつけられます。
PGT-Aなどの検査を行わない通常の不妊治療での体外受精の場合、
AAに近い胚から移植するのがセオリーだそう。
 
私が検査に出した胚盤胞はすべてステージ5(PGT-A/Mをするのでステージ5まで育たないと凍結しない)で
グレードもAA~CCまでありました。
 
実際に正常胚とされた2個は、5BBと5CA。
ちなみに、AAの胚はハイリスクモザイクと呼ばれるものでした。
 
不妊治療のブログ等でも、グレードは頻繁に目にします。
そして、お子さんが生まれた後も、
「移植した胚はBCだったから、発達に遅れがでるのでは」
といった、胚のグレードと子供の成長度合いを関連づけている方も見たことがあります。
 
 
カウンセラーさんに相談にいってから数日間、

RBが遺伝しているからと廃棄しようとしている胚は、
かつて私のお腹に宿ってくれて、今、元気に跳ね回っている長男と同じように育つ可能性のある子なんだよな、とか、
私ももし、PGT-Aをしなかったら、染色体異常だからと廃棄されようとしている胚は、
AAから1つずつ、移植していたのだろうか、とか、
たとえ生まれる可能性が限りなく低いとしても、生まれてきたかもしれなかったのだろうか、とか、
仕事中、通勤の合間、ぼんやりと、考える日々が続きました。
 
そして、仕事を終え、走って保育園に向かい、エネルギー(と汗)の塊みたいな長男が飛びついてくるたびに、
 
この子は今たぶんそれなりに幸せそうだし、それを感じられる私も幸せだけれども、
これから先訪れるであろう視力の壁、続く検査、再発・二次がんの不安、将来背負うであろう遺伝の問題、
それを生じさせてしまったのが「自分のせいだ」という感情は一生消せないなぁとも感じました。
この子に、健康な両目がそろっていてくれたならば、どれだけ幸せだっただろうかと。
かといって、今不幸というわけではないけれど。
 
ただただ、健やかであってほしい。
産む前と、後では、やはりそう願う意味は異なると思います。
 
PGT-MやPGT-Aは命の選別ではないのか。
この問題は、いまだに私の中では決着はついていません。
そして、たぶん、決着はつかないと思います。
 
体外受精、PGT-Mという「方法」を選んだ時点で、胚は選別しなくてはならないから。
RBだろうと、染色体異常だろうと、グレードだろうと。
 
2019年6月26日、
採卵をしたクリニックで、RBが遺伝した胚と、染色体異常の中でも、まず着床しないとされた胚の廃棄手続きを行いました。
17個中、12個を廃棄。
2個の正常胚と、まず着床しないと思うが、まだ可能性がなくもないとされた胚など3個を残して。
 
紙一枚に、廃棄する胚の管理記号にチェックをつけていくだけ。
それでおしまい。
ありがと、さよなら。
 
帰り道、ちょっとだけ涙が出ました。
でも道を選んだのは私。決めたのも私。
その責任もすべて自分で引き受けて、引きずって、先に進みます。