付き合っていた時と違って、一緒に暮らして相手のことがまた深く分かった。
意外にズボラなところがあって、意外に整理整頓が好きで。相手だって同じことを思っているに違いない。
だけどそれが、二人で暮らすということだった。
スキと言う気持ちが、自分から相手への想いならば、愛しさは全部を受け入れていくこと。ゲゲって思うことも、助け合って打開策を講じていく。
そんなことを考えていたら、キッチンで何か始めた彼女が僕を呼んだ。
「何? 何か言った?」
家庭的な女の子。お菓子作りが得意で、時々それをプレゼントしてくれていた。なのに、それは妹が作ったもので、当の本人は大の料理嫌い。そんな事実も、こうして一緒に暮らしてわかった。
「ちょっと何しているのよ!」
「何って……。聞きたいのはこっちだよ」
お玉と菜ばしを両手に持って、今にも吹き零れそうな鍋の前でパニックになっていた。
「麺をゆでていたの?」
「見たら分かるでしょ?」
「そう怒らないでよ」
僕は、彼女から菜ばしを借りて湯だった水面に先を沈めた。
「うん。もう充分に茹で上がっている」
足元の扉を開き、ボールを取り出すとシンクに置いた。
湯気に立つ鍋を持ち上げ、ボールの中に返していく。少しゆで過ぎた麺が束になって鍋からすべり出てきた。
「ルーはあるの?」
「クー?」
「違う。それ炭酸でしょ? じゃなくて、ミートソースとか……」
「ああ、あるよ。たしかこの辺に……」
彼女は意外と行き当たりばったりな性格をしていた。少なくとも、デートでしか彼女を知らなかった時、僕は待ち時間を凄く気にしていた。顔立ちを比べると、彼女の方がせっかちそうに見える。だけどそれは、見えるだけだった。実際、彼女がミートソースのレトルトパックを探しだして、十分以上が経っていた。
「もう食べようよ」
「うん、あると思うんだ……」
見つかりそうになかった僕は、生クリームとコンソメのもとでカルボナーラもどきをこしらえた。
「ねえねえ……。後でさ~!」
仕方なく僕は、彼女の手を引張って、無理やり座らせた。
「あると思ったんだけどな……」
食べているときも、話題はずっと見当たらないミートソースのことだった。
「はまりやすいというか、のんびりしているというか」
思わず声を出した。
そそくさと食べ終えて、彼女はまたミートソース探しを再開した。
もっとテキパキしているかと思えば、場合によっては一日だってこんなことをしていられる性格だった。
「あったあった! ほらね!」
彼女がそう言ったのは、あの日からもう二週間が過ぎていた。

