魔法に満ちすぎて郵便番号が対応しきれない庭の、霧に湿った片隅で――
ジジ・A・モーテル、吸血鬼にして紅茶愛好家、そして不本意な社交参加者――は、ガウンとスリッパ姿のまま、一輪の花をじっと見つめていた。
「グレゴリー」と彼女は顔を向けずに言った。「なんで私のプランターに、ジャングルの剣闘士が花のふりして立ってるの?」
彼女の後ろで、膝の高さほどのグレゴリー――彼女のクリップボードを手にした家付きグレムリン――が脚の陰から覗き込み、顔面蒼白になった。
クリップボードはいつもどおり彼には大きすぎたが、それでも今回の庭のエルドリッチな騒動に対する盾として、彼は立派に構えていた。
「おや……」と彼は言った。その声は、今すぐ別の次元へ逃げたいという強い願望に満ちていた。「これは…園芸ローテーションに載ってませんね。どこにも。」
温室の窓から、ファーガスが見ていた。
無言で。耳をわずかに傾け、尻尾の先を正確に小さく動かしながら。
彼は、今まさに何が起きているか完全に理解しつつ、「スナックが出るまでは関与しない」と決めた生き物の目だった。
ジジはその謎の花のそばにひざまずいた。
それは、斑点模様のある赤と黄色の炎のような怪物で、ディーヴァがカーテシーをする途中のような姿勢をしていた。
色合いは、魔法犯罪現場としか言いようのないものだった。これは花ではない。これは存在感だった。呪われた庭か、受動攻撃型の妖精の結婚式でしか見られないような植物界の孔雀。
「植えた覚えはないわ」と彼女はつぶやいた。
「黄色いのも。あと…もっと黄色いやつも」とグレゴリーが付け加えた。クリップボードのページを一枚めくりながら、小さくキュッと鳴いた。「ただ…ここにあります。」
そのとき、音もなく何かがジジの注意を引いた。彼女は振り向いた。
そこに――いた。
さて読者諸君…ヘムロックをご存じないなら:彼は猫である。たぶん。
正確には黒猫。ラテン語を知っていそうな緑の目を持ち、「何かものすごく面白くなりそうな瞬間」にぴったり出現する性質を持つ。
彼は、まるで自作の劇に遅れて登場する主役のような儀式的な足取りで、庭の小道を歩いていた。
いや、歩いていたというより、瞬きをするたびに近づいてきていた。
実は、ジジは彼を前にも見たことがあった。何ヶ月も、彼は前庭の塀の上に座って、家を黙って見ていた。
それは「こんにちはご近所さん」ではなく、「お前が持ってるそれ、必要なんだよな…月の位相が合うのを待ってるだけなんだ」的な視線だった。
三日前、彼は裏庭に移動してきた。ただ…現れた。プランターの中の段ボールの一角を選び、そこに寝て、居ついた。招かれておらず、動きもしない。
そして今朝。
以前は何もなかった場所に…花が三輪、咲いていた。
ヘムロック――「凝視の沈黙卿」は朝の紅茶前には長すぎたので、ジジが適当に名付けた――は、プランターの横に座った。
一度瞬き。もう一度瞬き。絶対に何も言わない。
「まずいわね」とジジは静かに言った。「ヘムロックの足跡がべったり残ってるわ。」
グレゴリーがにじり寄り、彼女のブーツの横に立った。膝の高さほどしかない。
「モーテル様…この猫、ご存じですか?」
「知らない」と彼女は目を細めた。「でも、私のことを庭で一番頭の悪い生き物みたいに見たことなんて一度もなかったわ。今までは。」
温室の中で、ファーガスが「ちゅぴっ」と鳴いた。
鳴き声でもなければ、ゴロゴロでもない。
それはまさに「また変なの入れたでしょ…」という呆れた非難の鳴き声だった。
グレゴリーは鍋ヘルメットを不安そうに直した。
「もしや…贈り物?」
「もしや…警告かもね。」
「猫から?」
「猫を使ってる誰かから。」
ふたりはゆっくりと再びヘムロックに目を向けた。
彼は、絶対に何か知っていて黙っている存在のように、前足を舐めていた。
花々は、存在しない風に揺れていた。
その日の後…
庭には次のものが設置された:
- プランターの周りに急造された保護用の塩円。
- ご機嫌取り目的の装飾チキンレッグ1本。
- 手描きの木製看板(「ドラマフラワーを舐めるな」)。
- ローズマリーの茂みの裏に隠れるグレゴリー(ヘルメット装着・クリップボード構え済み)。
- すべてを見届けながら、「俺は片付けんぞ」という顔で静かに見つめるファーガス。
ジジは三杯目の紅茶をすすり、ため息をついた。
ヘムロックは動かない。
花々は、したり顔で輝いていた。
「気に入らないわね」と彼女はつぶやいた。「可愛すぎるのよ。それっていつも悪い兆し。もしあいつらがハミングし出したり、なぞなぞを出してきたら…私は物置小屋に引っ越すわ。」
グレゴリーが震えた。「でもその小屋、幽霊出ますよ、モーテル様。」
「……だからよ。」
つづく…
(次回:ヘムロックが動く。もしくは…喋る。)




