出会った日の夜。

ホテルに帰ると、私は彼のTwitterにダイレクトメッセージを送った。

今日はありがとうございました。とか、楽しかったです、とか。

しかし、いっこうに返事は来ない。

忙しいのかな?と思い、一週間待ったが、返事は来なかった。

今度はブログのメッセージに「この間お世話になったゆいです」と送ったが、そちらも返事はなかった。

 

あの晩一緒にいた優斗くんの連絡先はむこうが教えてくれていたから、とりあえず優斗君に連絡してみた。

優斗くん「あ〜、やっぱり返事ない?愛子ちゃんに実はオレいっぱい借りがあってさ。で、リュウはオレにいっぱい弱み握られているから、断れなくて呼んだけど、実はあいつ、ファンとは一線ひいているっていうか。多分返事こないよ。一夜限りの幸せだったって思ってくれないかな?」

 

それから私は、数ヶ月間あの日の事を思い出しては切ない思いになっていた。

今まで楽しみに見ていたリュウ君のブログやTwitterも、見る度に胸が張り裂けそうになる。

こんなことなら知り合わなければよかったとさえ思った。

 

そんなある日、私の会社が偶然、彼のイベントに協力することになった。しかもそのアシスタントに私が選ばれたのだ。

彼の業界とは全く関係のない私の会社・・・まさか一緒に仕事をする日がくるとは思ってもいなかった。

私は自分の運の良さに喜ぶどころか、一生分の運をここで使ってしまって大丈夫なのか・・・と心配する日々が始まった。

1年半前の夏。当時、27歳の私は失恋したばかりで、仕事もうまくいかず、結婚しろと言い続ける親とは毎日喧嘩をし、最悪の日々を過ごしていた。

そんな私の唯一の癒しは、メジャーで売れているわけではないけど、その分野では知らない人はいないある有名人のリュウ君。

リュウ君のTwitterやFacebookで彼の日常を見て癒され、時々イベントで遠くからみて癒され・・・そんな日々を送っていた。

 

そんなある日、もうすぐ28歳の誕生日を迎える私に、友人の愛子から一通のメールがきた。

「ゆい、もうすぐお誕生日だよね♡恵比寿のかなりいい感じのお店でお祝いするから、かなり気合い入れてきてね!!絶対オシャレしてきてよ♡」

東京から2時間の距離に住んでいる私は、一年に数回しか愛子に会えない。

その週に東京へ行く事は伝えてあったし、お互いの誕生日はオシャレなレストランで食事して、プレゼントを渡すっていうのがここ数年の定番だったから、私はなんの疑問も抱かず、その日恵比寿のレストランへとむかった。

 

約束の日。レストランへ到着し、名前をいうと個室へ通された。個室のレストランへ行く事はあまりないから、この時少し違和感をもったけど、まぁたまたまいいお店が個室だったのかな?くらいに思った。

 

そして、部屋に入ると・・・なんとそこにいたのは・・・

 

私がずっと憧れていた、リュウ君!!

 

愛子「ゆい、お誕生日おめでとう!!友達がリュウ君と知り合いだって分かって、今日お誕生日だからサプライズで呼んでもらった!!」

 

私は完全にパニック状態。なにが起こったのか分からず、唖然とした様子で立ちすくむ。

部屋の中には、なじみの顔の愛子と、いつも画面上で見ているリュウ君、そしてしらない男性・・・

 

リュウ君「ゆいさん、大丈夫ですか?驚かせてしまってごめんなさい。僕のファンだと聞いて、嬉しいです。今日は楽しい時間を過ごしましょう。」

 

知らない男性「こんばんは。愛子とリュウの友達の優斗です。宜しく〜。噂に聞いてたけど、ゆいちゃん可愛いね〜♡」

 

この後私は、大好きなヒーローと、親友と、軽いナンパ男と食事しました。

友達の優斗くんは、かなり女の子好きみたいで、とにかく初対面とは思えないくらいグイグイくる。リュウ君は落ち着いているんだけど、私は緊張してあまり喋れなかった。

 

あっという間に2時間半が過ぎ、その日はこれでお開きとなった。

 

リュウ君「ゆいさん、これからも僕のこと応援してくださいね。」

そう言って差し出された手を握り返す。握手した瞬間、私はファンから片思いをする女へと変わった。この瞬間から私の長い長い片思いが始まるのだった。

 

〜本人バレしないために、ほんの少し名前や詳細は変えてありますが、すべて実話です〜