自分のための小説分析メモ

自分のための小説分析メモ

ごく私的な読書記録。小説は手当り次第。マンガは基本おすすめ度MAXのものだけ。たまに映画。

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2004年5月30日

ベトナムの人は輝いている、今日より明日の方がいい日だと信じているから。と、ある人は言った。
上海はいい。寝て起きるだけで、世界が必ず良くなっているから。と別の人が言った。
今日はいい日だった。でも明日は分からない。今が頂点なら、後は落ちるだけ。日本はそんな国だ。ここにずっといたら、あの日が人生最高の日だったんだ、と、振り返ってため息をつく時が必ずやって来る。
繁栄と停滞、平和と退屈、成熟と腐敗は、まさしく同じものだ。繁栄、平和、成熟。停滞、退屈、腐敗、そして憂鬱。そんな所に長居は無用だ。後悔の巣窟。思いのほか長居している自分への言い訳のために、しょーもない足枷を探している。若しくは、一緒に銭湯に行きたいだなんて、わざわざ身を落とそうとしてみたり。
もともと翼を持ってるやつなんていないので、空を飛ぼうと思ったら、翼のかわりになるものを見つけなくてはいけない。自由になるための道具。盗んだバイクでもいい。あたしの場合、それは言葉、頭脳、自尊心。この身一つ持って、どこへでも飛んでいけるように、陳腐な表現ではあるが自分を磨く時期か。
人生は長く、世界は広い。

 

2004年5月、まだあたしが完全なおこちゃまだったころ、あたしはこんなことを日記に書いていた。

 

あれから16年(!)

あたしはちゃんと自分を磨いてこれたかな。

この身一つ持って、どこへでも飛んでいける何かを身につけることができたかどうかはこれから分かる。

望んだとおりの世の中はやってきたぞ。と、16年前のあたしにも、今のあたしにも、大きな声で言ってやらないとな。

繁栄も平和も虫の息。成熟もほとんど無意味だった。代わりに停滞と退屈とは無縁の世界が始まるね。ようこそ。

 

 

最後にブログを書いたのがいつだったかはもう忘れてしまったけれど。

あの時世界がこんなにも変わるなんて想像していただろうかと考えると答えは完全にNoってわけでもない。

世界中がいっぺんに、っていうのは確かに珍しい出来事かもしれない、けれど自分の内部で過去何度も起こった静かで過酷な崩壊が、いま世の中を陥れている試練よりも辛くなかったとは言い切れない。ふざけるな、という人もいるだろう。そんな個人的な危機と世界の危機を比べるな、と。

それでも、どんなに怒られたって、その怒りを心の底から理解したとしたって、やっぱり自分の内的世界と外的世界はどちらも等しく広くて致命的だ。今はそういう時代なの。そういう時代に、世界が危機に陥ったの。内的危機しか感じてこなかったあたしたち。外的危機にさらされて、ほんとに生きたいと願うかな。ヒーローは生まれるかな。それが自分だったらいいな。それが自分だったらいいな、と願う人がなるべく多くいるといいな。

 

きまぐれな夜食カフェ - マカン・マラン みたび (単行本)

ドラァグクイーンのシャールが営むマカン・マラン。インドネシア語でマカンは食事、マランは夜という意味らしい。名前の通り、夜にだけ開く夜食カフェでシャールが客に合わせて特別に作る夜食は、疲れた身体と心にとても良く効くという。けれどこの素敵なお店には、縁が無ければ、辿り着けない。

最近なんとなく、今だったらマカン・マランに辿り着けるような気がする日々を送っていたあたしは、大切にとっておいたマカン・マランシリーズの第三弾である本書を、あまり身体に良さそうではない夜食を食べながら、読むことにした。


「居場所なんて、どこかに無理やり見つけるものじゃないのよ。自分の足でしっかりと立っていれば、それが自ずとあなたの居場所になるの。要するに、あなたがどこに立ちたいかよ」
――第二話 薮入りのジュンサイ冷や麦


壊れかけのパソコンみたいに、自分の中にある情熱みたいなモノがいっぺんに全部ぷつりと消えてしまう瞬間が時々ある。
最近インストールしたソフトに問題があったせいなのか、そもそもポンコツのハードウェアがいよいよいダメになってきたせいなのかは分からないけど。

慌てて再起動しても、いくつかの情熱は失われたまま二度と戻らない。きっとあたしのセキュリティには重大な欠陥があるのだろう。そうやって色んなものを簡単に手放して忘れてきた、そんな自分には嫌気が差してばかりだった。

けれど、消えたと思っても何度も戻ってくるものもやっぱりあって、それらが要は、あたしの立ちたい場所を形作っているのかな、なんて。シャールの言葉に妙に元気づけられてしまったわけなのだが。


ピンク色のボブウイッグを揺らし、シャールは耀子の顔を覗き込む。
「素顔を見せたくないなら、無理して見せる必要なんてないわ」 
厚化粧のその顔に、慈しむような笑みが広がった。
「本心の隠し場所さえ、ちゃんと自分で分かっていれば、それはそれでいいのよ」
――第三話 風と火のスープカレー


分かっている、と、思っていた本心の隠し場所に行ってみたら、隠しておいたはずの本心がどこにも無くなっていた。
ああ、こりゃダメだ。と、諦めて、急いで予定をブロックしてバリ島行きの飛行機を予約して、寝た。