今のって、あんたの名前だったよな、やばい・・

 

俺は着信履歴から

電話をかけてきたのはあんただって確かめて、

急いで掛けなおすが、

やはり、いくらコールしても出てはくれない。

 

なんて間が悪いんだよ。

やっと連絡がとれたのに。

きっとまだあんたの部屋にはあの女がいる。

だから行っても俺は入れてもらえない。

 

どうしたらいいんだ。

あんたは事務所とは連絡を取ってないと聞いた。

もちろん専属のマネージャーなんかいない。

まぁ仕方ない。

対外的には休業だけど、実際のところは首だからな。

連絡を取れる数少ない人間である、

佐藤元チーフマネージャーは事務所を

そして俺たちのことを怒っている。

 

佐藤さんは、一連の事務所幹部の決定のことも、

その経緯も、

そして俺たちのした悪意に満ちた行動も

すべて知っている。

でも何も言わないのは、

きっと何か考えているからだ。

さっき浴びせられた冷たい言葉の真意が

どこにあって、

何をするつもりなのか、

あんたを追い込んだ俺たちへ

報復をするつもりなのか?

わからないことが一層不安を駆り立てる。

 

 

「ブーブブファー」

 

俺は、激しいクラクションを浴びせられて、はっと我に返る。

考え込んでいた俺は、危うく対向車と接触するところだった。

 

路肩に車を止めて深呼吸をする俺に、

ブルートゥースでつながった

ナビゲーションシステムから電話が鳴る。

 

送信者名は相葉君?

何?

 

「はい、何?相葉君。」

 

いつものように軽く電話を受ける。

 

「松潤、悪い、夜遅くに電話して。

俺さ、結婚することにしたの、それの報告。

 

ニノん家は子供生まれたでしょ、

翔ちゃんも結婚発表したしさ。

翔ちゃん誕生日にするっていってたのに

早まったってことはさ、

子供ができたんだと思うんだよね。

だから、俺もいいかなって。

俺もさ、もう10年も付き合っているしさ。

彼女、翔ちゃんの奥さんと同じ年だしさ。

そんなんで、近々発表するからね。

ごめんね、まだいろんなこと片付いてないのに。」

 

一生懸命に謝りながら、結婚すると報告してくる相葉君。

そんなこと俺に気を遣うことじゃないだろう。

もうちょとだから、休止までのあと少し待ってくれといったのを

無視して結婚したやつだっているんだからさ。

もう二人が結婚したんだ。

遠慮する必要はない。

いままで隠しとおして来たんだし、

10年も日陰の身で相葉君を待ってくれた彼女を

日向に出してあげていいと思うよ。

 

「そんな遠慮することないよ。

おめでとう。

10年も長い間頑張った彼女と幸せになってよ。」

「松潤、ありがとう。

嬉しいよ。

松潤も早く結婚してよ。俺応援するからさ。」

 

感情を抑えながら、涙声になった相葉君の電話を切った。

怒りが沸々と湧き出す。

そうか、結婚発表が早くなったのは、妊娠させたからなんだ。

なんてやろうだよ。櫻井翔。

許さない・・

 

俺はハンドルを思い切り叩いた。