●晴れ一時にわか雨
 木曽福島
→諏訪湖
→甲州街道
→16号線
→横浜



◆金曜日午前8時
 
窓から明るい光が差し込んでいる。やっと晴れた。今日は帰るだけだ。焦る必要はないけれど、強い日差しに誘われて慌てて支度をして宿を出る。

 宿に駐輪場はなく、駅の駐輪場にオートバイは停めてある。荷物を抱えて目の前にある駅で缶コーヒーを飲む。普段まったく口にしない缶コーヒーを口にしてしまうのは、昔の習慣(ツーリング=缶コーヒー)による条件反射だろうか。

 昨夜は寂しく見えた駅も明るい日差しの中では味があるように見える。








 

旅館つたやがヘルメットの向こう側に見える。



 昨夜居酒屋でもらった「きそふくしま ぶらりぐるりMAP」で見つけた、上の段の古い街並を見学してみる。あいにく、お茶をふるまってくれるお店は開店前だったので、写真だけを撮る。




◆金曜日午前9時

 
361号線(中山道)→152号線で訪湖へ向かう。諏訪湖から中央道に乗ろう、このときはそう考えていた。152号線に入ると気持ちのよい道が続く。陽気のせいだろうか、今日は気持ちに余裕がある。綺麗な風景を見つけてはオートバイを停めシャッターを押してみる。








 
 諏訪湖を訪れるのは15年ぶりだろうか。以前訪れたときは、夜に花火が上がっていて、賑やかだったような気がする。平日のせいか、今日の諏訪湖は寂しく感じる。諏訪湖近くのレストランでランチのオムライスを食べ、諏訪湖で一服する。靴の中が濡れたままだったせいで靴下が湿っていた。脱いで乾かすことにする。素足にあたる風が心地よい。グローブは走り出して1時間もしないうちに乾いたのに、さすがに靴の中はなかなかしぶとい。 


 

諏訪湖を出発すると、雨が降り出した。今日は合羽を着ない。そう決めていた。降るなら降ればいい、今日はびしょ濡れになって帰るつもりだ。

 感傷に浸る姿を人に見せることや言葉で伝えることはしない。今までずっとそうしてきた。それはセンチメンタリズムを振りかざす大人がいかにみっともないかを知っているつもりだからで、そいういった感情が僕にまったくないわけではない。

 諏訪湖周辺の地図を見ていたら、甲州街道といくつかの懐かしい地名が目に飛び込んできた。当然あの頃は高速道路の二人乗りなどできるはずもなく、僕らは下道でずっと真夏の太陽に照らされながら走った。彼女の肩は陽に焼け水ぶくれとなり、喧嘩の種となった。

 そうだ、15年ぶりに甲州街道を走るのも悪くない。今日は日が暮れようと関係ない、寝るのは自宅のベッドだ。

 ときには、信号と交通量が多く退屈な道路であり、ときには快適な山道となる甲州街道を走り続ける。降り出した雨はすぐに上がった。にわか雨だった。

 甲府に入ると暑さで頭がクラクラしてきた。この辺りの暑さは特別だ。たまらず、マックでシェイクを飲みながら休憩する。それでも、高速には乗らずに甲州街道を走り続ける。大月を過ぎ、相模湖、高尾を過ぎ、ようやく八王子まで来た。八王子駅近くの広い通りで何度も信号につかまっていると、記憶がどんどん甦ってきて、頭の中にフラッシュバックが走る。

 あの夏は韮崎辺りでちょうど花火が上がっていて、ひどい渋滞だった。そして八王子に着く頃は二人ともヘトヘトでもう少しも進めない程に疲れきっていたっけ。



++++++++++ 横顔 ++++++++++++

待ち合わせの時間が 急ぎ足でやってくる
あなたのやさしさに抱かれたら きっときり出せない

少年のような横顔を 思うたびせつなくて
やっぱり今夜は行かないわ

大人になって 逢える時まで
私を探さないで

あなたはずっと 変わらずににいて
少年のまなざしで

大人になって 逢える時まで
私を探さないで

+++++++++++++++++++++++++


 

 16号線に入る。246号線との交差点辺りから渋滞が始まる。停まっている時間が長くなると、オイルが焼ける匂いがVツインから湧き上がってくる。ここ数年、シリンダーの下側は常に黒いシミが滲んでいる。クラッチを握る左手はパンパンだ。この道路は破綻している。

 結局、木曽福島からずっと下道を走ってきた。


◆金曜日午後6時30分

 保土ヶ谷バイパスに入る頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。


 僕はただ無心でアクセルを捻り続けた。



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●距離:292.883Km

●給油:¥1455
●飲食:¥1500
●高速;¥500


合計¥3455
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