●晴れのち大雨
氷見
→富山
→桜木町ナイト
◆水曜日午前8時
目を覚まし、あっという間に出かける準備を整えてしまう。
9時になるのを待って、昨夜ピックアップしておいたバイク屋に電話攻勢をかける。
結果は、
・市内にあるR店→定休日
・富山市にあるR店→10時開店のテープが流れる
・富山市にあるH店→電話に出ず
早くも手づまり。
自然完治を夢みてオートバイの所に行ってみることにする。氷見駅まで約10分歩き、タクシーに乗込む。
今年の夏は雨が極端に少なかったこと、この辺りは一度雨が降り出すと長雨であること、暑い夏であったこと、朝夕は海風が涼しいこと、それでも雨戸を閉めて寝ないと家の中が潮だれてしまうことなんかを話しながら、オートバイを停めてあるガソリンスタンドに向かう。途中、ハーレーの大きな看板を見つけて、運転手さんにスローダウンしてもらう。昨夜断わられた店だった。運転手さんにいきさつを話すと、
「電気が点いてるからやってるよ。もう一度電話してみるといいよ。」と言われた。
そのときは、そのまま通過してガソリンスタンドへ向かった。料金1500円強の距離だった。
◆水曜日午前9時30分
KEYを差し、イグニッションをONにしてみる。メーターライトが点いた。スターターを押してみる。「カチッ」ブレーカが落ちた。昨日と同じだ。人間の歯と同様、マシンの自然治癒は有り得ない。
地べたに尻をついて座り込み一服する。昨夜、ホテルまで送ってくれた店員さんが姿を現した。
「自分で治してるの?」
「はい、でもやっぱりダメでした。10時を待って電話してみます。」と応える。
◆水曜日午前10時
第2回電話作戦スタート。
・富山市のR店
「会員以外のオートバイは引取りに行けない。
どうしてもウチで見てほしいならJAFに頼んで
オートバイを持ってきて欲しい。」
・富山市のH店
あいかわらず、電話に出ず。
・高岡市のA店
電話に出ず。
電話に出ないっていうのはどういうことだ。まったく。吐き捨てる。
またもや手づまり、とりあえずタバコを吸い青空を見上げる。ふと、タクシーの運転手の言葉を思い出す。
「電気が点いてるからやってるよ。もう一度電話してみるといいよ。」
そうだ、ダメもとでもう一度電話してみよう。
「はい、M店です。」昨夜のおばあさんの声が聞こえてきた。
「あの、今日はやってますか?」と聞いてみる。
「はい、やっとるよ。」
「えぇーーっ」声に出さずに心の中で雄叫びを上げ、事情を説明する。
「午後まで待ってくれれば、若いのが登録から帰ってくるから迎えに行けるけど、待てる?」
「ホントっすか、待ってます。」即座に返事をしていた。
もちろん待てますとも、なんなら夕方まででも待ってますとも。そんな気持ちだった。だって、一番近距離にあって、しかもハーレーLTR店なんだもの。
午後まではたっぷり2時間近くある。目の前のコインランドリーで洗濯でもしながら待つ事にする。なにしろ、昨夜はとても洗濯なんてしている余裕はなかったから。ランドリー機に洗濯物を放り込み、正面向かいにある銭湯へトイレを借りに行く。男子の脱衣場内にあるというトイレに向かうと、全身TATOOの男が素っ裸で躯を拭いていた。この街はそういう街なのか、と頭を捻りながら用を済ませてコインランドリーに戻る。
コインランドリー内の女性誌を読むことにも飽きたので、横隣にある回転寿司に入り、早目の昼食としよう。席に座り、回る寿司を見ていたら、急にお腹が痛くなってきた。トイレに飛び込む。トイレの中で携帯が鳴った。命綱のオートバイ屋からだ、たとえトイレの個室内でも出ないわけにはいかない。
「もう近くまで行ってる。高岡方面から向かってるんで待ってて。」
「はい、わかりました。」
予定より1時間近く早い。慌ててトイレを出て、イカの皿一つだけ取って口に放り込み会計してもらう。他のお客さん達が怪訝な表情で僕を見ている。130円也。迎えが来てしまったことを詫びて店を出る。雨が降り始めていた。そしてM店のハーレーロゴが入ったトラックがコインランドリーの駐車場に滑り込んできた。まるで雨がトラックを連れてきたみたいに。
トラックの運転手はシェードのかかったデカサングラスをして、太いステンレスブレスの時計をしていた。ちょいワルを通り越して、ちょい怖悪徳社長風だ。手際良く荷台にオートバイを固定してくれた。でも問題がひとつ、ランドリー機はあと5分回り続ける予定だ。
「ランドリー機が回っているので5分だけ待ってもらえますか?」
「ああ、いいよ。」と低い声で応えてくれた。
トラックに乗込むと症状を説明し、
「ブレーカーが落ちてるんですかね?」と尋ねてみる。
「見てみないとわからないけど、電装系みたいだな。」
「・・・」やはりメカニックではないらしい。
◆水曜日午前11時30分
作業場にオートバイを移し、店内でアイスコーヒーを頂く。サングラスを外すと、悪徳社長風から一変して会社に忠実な専務風に変わっていた。世間話をしていると、とても気さくでよい人だった。
「メカニックが帰ってくるまで、隣のうどん屋で昼を食べてくるといいよ、美味しいから。それに治るまでに時間がかかるようだったら、駅まで車で送っていくから電車で観光してくるといいよ。」とまで言ってくれた。
「ありがとうございます。とりあえず、うどん屋に行ってきます。今日中に治らないようだったら、駅まで送ってもらっていいですか。」と応えた。
とても美味しいうどんだった。お客さんも切れ間なく入ってくる。あとで知ったことだけど、「氷見うどん」は有名らしい。
店に戻ると、若いメカニックが帰ってきていた。症状を説明すると、
「なるほど、わかりました。」と勢いのある返事。出来そうだ。早速作業に取りかかってくれた。
店内の応接間のようなところで、「HOT BIKE」、「VIBES」、「クラブハーレー」などをめくってみる。このところ、ハーレー関係の雑誌をまるで読んでいない自分に気がつく。
作業を開始して30分ほど経った頃だろうか、
「とりあえず、原因はわかりました。バッテリーはもう使えません。レギュレーターが壊れていて、過充電になっていたみたいです。」とのこと。
予想通りだ。問題はここからで、パーツがあるかどうかが一番の問題だ。
「部品はありますか?」と尋ねてみる。
「バッテリーは中古で型が違うものになってしまうが、レギュレターは在庫があったので大丈夫だと思う。」
飛び上がって喜びたい気分だった。
そこから2時間程、待っただろうか。本棚にあるハーレー雑誌にも飽きてきた頃、
「ちょっと、確認してもらっていいですか?」とメカニック。
ハーレー用のテスターを使って正常に発充電されていることを示してくれた。それにしてもハーレー用テスターは結果の良否も英語だ。バッテリーは電極の位置が逆なだけで問題なしだ。型はどうあれ、はじめてハーレー純正のバッテリーを付けた。今まではチープな国産バッテリーばかりを使用していた。ダメになったバッテリーは2年以上使っているものだし。
若いメカニックと一緒に作業をしてくれたおじいさんが、
「実はせがれが東京に行っていて、部品代やら工賃がわからない。あとから葉書で請求させてもらうってことでいいかな?」
「わかりました。だいだいザックリで構わないんでいくら位かわかりませんか?」と尋ねる。
若いメカニックの所へ聞きに行ってくれて、
「だいたい4万くらいだそうだ。」
「わかりました。ありがとうございます。」免許証を差出しコピーをとってもらう。
雨は大降りに変わっていた。それでも、気分は晴々している。作業場で合羽を着させてもらい、出発する。
+++++++++ Let's go down the street +++++++++++
窓の外 くもり空
窓の外 くもり空
傘を持って でかけようぜ
傘を持って でかけようぜ
風向きはたった今
そうさ たった今 変わったばかりさ
でかけようぜ
でかけようぜ It's all right
+++++++++++++++++++++++++++++++
◆水曜日午後3時
富山市とは逆方向に走り、デパートに寄ってお菓子の詰め合わせを購入する。昨夜お世話になったガソリンスタンドへ持って行くために。お菓子を合羽の中の腹の部分に入れ、富山市方向へ走り出す。それにしてもひどい雨だ。今夜こそ富山市で泊まることにしようと思う。
昨夜お世話になったガソリンスタンドで給油する。
「おう、治ったか?エンジンちゃんとかかるか?」と冷やかされる。
「コレ、つまらないものですけど、みなさんで食べてください。とても親切にして頂いたので。」とお菓子の詰め合わせを差し出す。
「そんなぁ、いいのに。」と右手を降ってみせた。
僕は、こういう親切な人達に助けられて旅を続けられている。感謝の気持ちでいっぱいだった。
富山市まで40km弱。スローペースで走る。グローブは絞れるほどに濡れている。シールドの上を雨が流れている。寒さで震えがきた。でも大丈夫、電車や飛行機で帰る必要もなくなり、引取りに来る必要もなくなった。スポーツスターは息を吹き返し、僕は旅を続けている。
◆水曜日午後4時30分
富山駅に到着。iモードで宿を検索する。合羽のポケットに入れておいた携帯の小窓の液晶が壊れていることに気がついた。液晶部分になにも表示されていないが携帯としての機能には問題がないようだ。ゴアテックスの合羽を過信し過ぎた。雨水が侵入していたようだ。
◆水曜日午後5時
マンテンホテルにチェックイン。とても綺麗なホテルだった。地方都市のビジネスホテルはコストパフォーマンスが高い。屋根下の駐車場にオートバイを止め合羽を脱ぐ。びしょ濡れのままチェックインはできない。もし合羽を着たままフロントへ行ったのなら、僕の周りには水溜まりができるだろう。
暑いシャワーを浴びて冷えた躯を暖める。今日着たTシャツ、靴下、下着、ついでにグローブをホテルのコインランドリーで洗い乾燥する。どのビジネスホテルもコインランドリーを備え付けるべきだと思う。浴室でする洗濯は気分を滅入らせるから。
◆水曜日午後7時
居酒屋を探しながら街を散策する。一番賑やかと聞いた西町は飲食店が少なく、閉店した洋服屋ばかりだった。駅周辺に行こうと思うが方向がよくわからなくなった。見上げると富山城があった。
歩き回るのが面倒になったので、市電に乗ることを思いたつ。ありったけの小銭をウォレットからジーンズのポケットに移し、市電を待ち乗込む。距離に関わらず一律200円らしい。学生、社会人、年配の人まで様々な人が利用している。熊本もそうだったが、城のある街は路面電車が走っていることが多いなと思う。
駅近くの居酒屋で、白エビの刺身、ほたるイカの干物など富山湾モノを頂く。白エビの刺身は絶品だった。
駅近くの居酒屋の難点は出張サラリーマンが多いことだ。食事しているすぐ隣でエリート意識丸出しで仕事の話を延々されるとせっかくの料理の味が鈍る。
◆水曜日午後10時
桜木町ナイト -非公開-
================================================
●距離:40.23Km
●給油:¥410
●宿:¥5300
●飲食:¥6500
合計¥12210
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氷見
→富山
→桜木町ナイト
◆水曜日午前8時
目を覚まし、あっという間に出かける準備を整えてしまう。
9時になるのを待って、昨夜ピックアップしておいたバイク屋に電話攻勢をかける。
結果は、
・市内にあるR店→定休日
・富山市にあるR店→10時開店のテープが流れる
・富山市にあるH店→電話に出ず
早くも手づまり。
自然完治を夢みてオートバイの所に行ってみることにする。氷見駅まで約10分歩き、タクシーに乗込む。
今年の夏は雨が極端に少なかったこと、この辺りは一度雨が降り出すと長雨であること、暑い夏であったこと、朝夕は海風が涼しいこと、それでも雨戸を閉めて寝ないと家の中が潮だれてしまうことなんかを話しながら、オートバイを停めてあるガソリンスタンドに向かう。途中、ハーレーの大きな看板を見つけて、運転手さんにスローダウンしてもらう。昨夜断わられた店だった。運転手さんにいきさつを話すと、
「電気が点いてるからやってるよ。もう一度電話してみるといいよ。」と言われた。
そのときは、そのまま通過してガソリンスタンドへ向かった。料金1500円強の距離だった。
◆水曜日午前9時30分
KEYを差し、イグニッションをONにしてみる。メーターライトが点いた。スターターを押してみる。「カチッ」ブレーカが落ちた。昨日と同じだ。人間の歯と同様、マシンの自然治癒は有り得ない。
地べたに尻をついて座り込み一服する。昨夜、ホテルまで送ってくれた店員さんが姿を現した。
「自分で治してるの?」
「はい、でもやっぱりダメでした。10時を待って電話してみます。」と応える。
◆水曜日午前10時
第2回電話作戦スタート。
・富山市のR店
「会員以外のオートバイは引取りに行けない。
どうしてもウチで見てほしいならJAFに頼んで
オートバイを持ってきて欲しい。」
・富山市のH店
あいかわらず、電話に出ず。
・高岡市のA店
電話に出ず。
電話に出ないっていうのはどういうことだ。まったく。吐き捨てる。
またもや手づまり、とりあえずタバコを吸い青空を見上げる。ふと、タクシーの運転手の言葉を思い出す。
「電気が点いてるからやってるよ。もう一度電話してみるといいよ。」
そうだ、ダメもとでもう一度電話してみよう。
「はい、M店です。」昨夜のおばあさんの声が聞こえてきた。
「あの、今日はやってますか?」と聞いてみる。
「はい、やっとるよ。」
「えぇーーっ」声に出さずに心の中で雄叫びを上げ、事情を説明する。
「午後まで待ってくれれば、若いのが登録から帰ってくるから迎えに行けるけど、待てる?」
「ホントっすか、待ってます。」即座に返事をしていた。
もちろん待てますとも、なんなら夕方まででも待ってますとも。そんな気持ちだった。だって、一番近距離にあって、しかもハーレーLTR店なんだもの。
午後まではたっぷり2時間近くある。目の前のコインランドリーで洗濯でもしながら待つ事にする。なにしろ、昨夜はとても洗濯なんてしている余裕はなかったから。ランドリー機に洗濯物を放り込み、正面向かいにある銭湯へトイレを借りに行く。男子の脱衣場内にあるというトイレに向かうと、全身TATOOの男が素っ裸で躯を拭いていた。この街はそういう街なのか、と頭を捻りながら用を済ませてコインランドリーに戻る。
コインランドリー内の女性誌を読むことにも飽きたので、横隣にある回転寿司に入り、早目の昼食としよう。席に座り、回る寿司を見ていたら、急にお腹が痛くなってきた。トイレに飛び込む。トイレの中で携帯が鳴った。命綱のオートバイ屋からだ、たとえトイレの個室内でも出ないわけにはいかない。
「もう近くまで行ってる。高岡方面から向かってるんで待ってて。」
「はい、わかりました。」
予定より1時間近く早い。慌ててトイレを出て、イカの皿一つだけ取って口に放り込み会計してもらう。他のお客さん達が怪訝な表情で僕を見ている。130円也。迎えが来てしまったことを詫びて店を出る。雨が降り始めていた。そしてM店のハーレーロゴが入ったトラックがコインランドリーの駐車場に滑り込んできた。まるで雨がトラックを連れてきたみたいに。
トラックの運転手はシェードのかかったデカサングラスをして、太いステンレスブレスの時計をしていた。ちょいワルを通り越して、ちょい怖悪徳社長風だ。手際良く荷台にオートバイを固定してくれた。でも問題がひとつ、ランドリー機はあと5分回り続ける予定だ。
「ランドリー機が回っているので5分だけ待ってもらえますか?」
「ああ、いいよ。」と低い声で応えてくれた。
トラックに乗込むと症状を説明し、
「ブレーカーが落ちてるんですかね?」と尋ねてみる。
「見てみないとわからないけど、電装系みたいだな。」
「・・・」やはりメカニックではないらしい。
◆水曜日午前11時30分
作業場にオートバイを移し、店内でアイスコーヒーを頂く。サングラスを外すと、悪徳社長風から一変して会社に忠実な専務風に変わっていた。世間話をしていると、とても気さくでよい人だった。
「メカニックが帰ってくるまで、隣のうどん屋で昼を食べてくるといいよ、美味しいから。それに治るまでに時間がかかるようだったら、駅まで車で送っていくから電車で観光してくるといいよ。」とまで言ってくれた。
「ありがとうございます。とりあえず、うどん屋に行ってきます。今日中に治らないようだったら、駅まで送ってもらっていいですか。」と応えた。
とても美味しいうどんだった。お客さんも切れ間なく入ってくる。あとで知ったことだけど、「氷見うどん」は有名らしい。
店に戻ると、若いメカニックが帰ってきていた。症状を説明すると、
「なるほど、わかりました。」と勢いのある返事。出来そうだ。早速作業に取りかかってくれた。
店内の応接間のようなところで、「HOT BIKE」、「VIBES」、「クラブハーレー」などをめくってみる。このところ、ハーレー関係の雑誌をまるで読んでいない自分に気がつく。
作業を開始して30分ほど経った頃だろうか、
「とりあえず、原因はわかりました。バッテリーはもう使えません。レギュレーターが壊れていて、過充電になっていたみたいです。」とのこと。
予想通りだ。問題はここからで、パーツがあるかどうかが一番の問題だ。
「部品はありますか?」と尋ねてみる。
「バッテリーは中古で型が違うものになってしまうが、レギュレターは在庫があったので大丈夫だと思う。」
飛び上がって喜びたい気分だった。
そこから2時間程、待っただろうか。本棚にあるハーレー雑誌にも飽きてきた頃、
「ちょっと、確認してもらっていいですか?」とメカニック。
ハーレー用のテスターを使って正常に発充電されていることを示してくれた。それにしてもハーレー用テスターは結果の良否も英語だ。バッテリーは電極の位置が逆なだけで問題なしだ。型はどうあれ、はじめてハーレー純正のバッテリーを付けた。今まではチープな国産バッテリーばかりを使用していた。ダメになったバッテリーは2年以上使っているものだし。
若いメカニックと一緒に作業をしてくれたおじいさんが、
「実はせがれが東京に行っていて、部品代やら工賃がわからない。あとから葉書で請求させてもらうってことでいいかな?」
「わかりました。だいだいザックリで構わないんでいくら位かわかりませんか?」と尋ねる。
若いメカニックの所へ聞きに行ってくれて、
「だいたい4万くらいだそうだ。」
「わかりました。ありがとうございます。」免許証を差出しコピーをとってもらう。
雨は大降りに変わっていた。それでも、気分は晴々している。作業場で合羽を着させてもらい、出発する。
+++++++++ Let's go down the street +++++++++++
窓の外 くもり空
窓の外 くもり空
傘を持って でかけようぜ
傘を持って でかけようぜ
風向きはたった今
そうさ たった今 変わったばかりさ
でかけようぜ
でかけようぜ It's all right
+++++++++++++++++++++++++++++++
◆水曜日午後3時
富山市とは逆方向に走り、デパートに寄ってお菓子の詰め合わせを購入する。昨夜お世話になったガソリンスタンドへ持って行くために。お菓子を合羽の中の腹の部分に入れ、富山市方向へ走り出す。それにしてもひどい雨だ。今夜こそ富山市で泊まることにしようと思う。
昨夜お世話になったガソリンスタンドで給油する。
「おう、治ったか?エンジンちゃんとかかるか?」と冷やかされる。
「コレ、つまらないものですけど、みなさんで食べてください。とても親切にして頂いたので。」とお菓子の詰め合わせを差し出す。
「そんなぁ、いいのに。」と右手を降ってみせた。
僕は、こういう親切な人達に助けられて旅を続けられている。感謝の気持ちでいっぱいだった。
富山市まで40km弱。スローペースで走る。グローブは絞れるほどに濡れている。シールドの上を雨が流れている。寒さで震えがきた。でも大丈夫、電車や飛行機で帰る必要もなくなり、引取りに来る必要もなくなった。スポーツスターは息を吹き返し、僕は旅を続けている。
◆水曜日午後4時30分
富山駅に到着。iモードで宿を検索する。合羽のポケットに入れておいた携帯の小窓の液晶が壊れていることに気がついた。液晶部分になにも表示されていないが携帯としての機能には問題がないようだ。ゴアテックスの合羽を過信し過ぎた。雨水が侵入していたようだ。
◆水曜日午後5時
マンテンホテルにチェックイン。とても綺麗なホテルだった。地方都市のビジネスホテルはコストパフォーマンスが高い。屋根下の駐車場にオートバイを止め合羽を脱ぐ。びしょ濡れのままチェックインはできない。もし合羽を着たままフロントへ行ったのなら、僕の周りには水溜まりができるだろう。
暑いシャワーを浴びて冷えた躯を暖める。今日着たTシャツ、靴下、下着、ついでにグローブをホテルのコインランドリーで洗い乾燥する。どのビジネスホテルもコインランドリーを備え付けるべきだと思う。浴室でする洗濯は気分を滅入らせるから。
◆水曜日午後7時
居酒屋を探しながら街を散策する。一番賑やかと聞いた西町は飲食店が少なく、閉店した洋服屋ばかりだった。駅周辺に行こうと思うが方向がよくわからなくなった。見上げると富山城があった。
歩き回るのが面倒になったので、市電に乗ることを思いたつ。ありったけの小銭をウォレットからジーンズのポケットに移し、市電を待ち乗込む。距離に関わらず一律200円らしい。学生、社会人、年配の人まで様々な人が利用している。熊本もそうだったが、城のある街は路面電車が走っていることが多いなと思う。
駅近くの居酒屋で、白エビの刺身、ほたるイカの干物など富山湾モノを頂く。白エビの刺身は絶品だった。
駅近くの居酒屋の難点は出張サラリーマンが多いことだ。食事しているすぐ隣でエリート意識丸出しで仕事の話を延々されるとせっかくの料理の味が鈍る。
◆水曜日午後10時
桜木町ナイト -非公開-
================================================
●距離:40.23Km
●給油:¥410
●宿:¥5300
●飲食:¥6500
合計¥12210
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