omsculvilso1989のブログ

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休日の過ごしかたは、部活がなければ、釣りや買い物、子供とサッカーなどだが、冬の雨となれば撮りためた映画をみるほかない。

「チョコレート」は、ハル・ベリーが非白人で初めてアカデミー主演女優賞を獲った2001年の映画だ。

足の不自由な父と暮らす中年白人男性が、息子を自殺で失い、刑務官(死刑執行人)の仕事を辞職する。失意の中、彼は偶然、息子をひき逃げされた黒人女性を助ける。息子を失った者同士が互いに惹かれて、人種をこえて深い仲になるふたり。
しかしその白人男性は、囚人だった黒人女性の夫の死刑執行を担当した刑務官だったことを知り、彼女は・・・。

と、ここまで書くと待つのは悲しい結末(別れか復讐)のように思えるが、そうなっては普通の映画。アカデミーを獲るだけあって、ラストは意外な結末が待っている。

彼女は、夫を処刑されたことを何も言わず、ただ微笑んで彼の隣に座っているのだ。ふたりの明るい未来を想い描いて、「大切にする」「きっと俺達はうまくやっていける」と口にする白人男性。
映画はここで終わり、この作品を文芸作・芸術作品にまで高めている。

祖父・父・子の三代にわたって刑務官であった白人家族。祖父は黒人差別主義者であり、その父の価値観にしたがう男性。逆に息子は黒人の少年と親しくつきあい、新世代の価値観を代表する。その息子の弱さを責めたことで、息子を自殺に追い込んでしまった男性は、やがて黒人女性と付き合うことで価値観を改め、差別主義者の父親を老人ホームへいれて、彼女を家に迎える。
ここに白人の価値観の世代間対立、黒人を差別し、裁く側に立ち続けた白人の歴史が描かれる。

一方、黒人女性は、死刑囚として収監されている夫と面会するが、心配なのは家賃と車の修理と息子の将来。囚人の父親は息子に、「おまえは俺とは違う」「良い所ばかりを受け継いでいる」と息子を励ます。だがその息子はテレビをみながら甘いものばかり食べて太り過ぎ、いじめられている。
ここに描かれるのは、黒人をとりまく社会環境の現状だ。
犯罪者となる父、仕事が無く家賃を滞納して退去を強制される母、甘やかされた環境で育ち、結局はひき逃げという犯罪に巻き込まれて命を失う息子。不遇な環境を強いられ続ける黒人の歴史。

そして、白人の父(男性)と黒人の母(女性)が出会い、互いの心の痛みを慰め合うが、白人男性は彼女の夫を処刑したことを口に出来ず、彼女(白人女性)はそのことを知っても指摘はしない。
これが、アメリカの白人と黒人の現状、差別・抑圧の歴史を知っていても、共存していくしかない現代アメリカ社会の人種関係の現実を表現しているのだ。

黒人差別の歴史と、アメリカの現状を知っていてこそ理解できる深みを、男の女の恋愛を通して実にうまく描いた映画となっている。

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