宮沢りえさん主演の紙の月という映画を見た。
原作は角田光代さん。

※ネタバレしますのでお気をつけください。









※しつこいですがかなりネタバレします。





よいのですね?←しつこい








既婚者の銀行員(宮沢りえさん)が年下の大学生(大学代を自分で払おうとしている素朴な、でもその資金を闇金から借りるタイプの)男子に恋をし(というか一見優しいよくできた風の夫から毎日ゆっくりと削らていく女として社会人としての承認欲求を満たしていってくれそうな自分を女として見てくれる新しい存在に)貢いで何かから自由になるために勤務している銀行から大金を横領する話。
実際にあった事件をモデルにしているのかは不明らしいが(その事件はなんと横領額億単位)その手口がとても(今では突破できない対策はとられているだろうが)興味深かった。


完全犯罪を狙う物語はそんな奇跡の連続起こるかいなと思ってしまうシーンが続くと白ける。
嘘は真実を混ぜると信憑性が増すと言うけれど紙の月はまさに少しの真実がたくさん混ざっていた。
そしてとても面白かったのがそもそも宮沢りえさんが演じる主役が完全犯罪を狙っていないところだった。
いつかバレる。
その時がくるまで。
そこがなんとも最高な真実味を帯びていた。

大きな真実が少しというより小さな真実がたくさん。
ちょっとした、共感とあるあるネタ?
ドカンとした共感てあまりない気がしませんか。

いつかバレる、でもその時がくるまで
でもバレないで逃げ切れたら…幸せだな…的な訳ありな恋や、自分が向き合いたくない自分自身の弱い部分や
もうそれこそあちこちに小さく存在している気がする。
仕事はむしろそんな事だらけで
自分を知っているのは自分だからこそ、恥に耐えながら模索している時もあればなるべく鏡を見ないように息をひそめて過ごす時もある。


何者って朝井リョウさんの本が面白かった。
自分は評価されるところに出ないで、他人を評価している人間より他人に笑われようと何者かになろうとトライし続ける人間万歳ってところに勇気を貰えた。
…テーマがそこだったかはもう忘れちゃったけどわたしにはそこが響いたからそういうことで!



話戻します。
年下男子に宮沢りえさんがはじめて大学費用代としてのお金を渡すシーンで年下男子が言った一言。


「これ俺もらっちゃったら何かが変わっちゃうよ?」


そのセリフを吐いた時の年下男子はそのへんによくいる普通の純粋な年下男子だった。
そしてその後繰り返されるロレックスだのシャンパンだの三泊で150万ほどのホテルステイタイムだの、蜜月のあとの年下男子の変貌ぶりもまた、それはそれである意味純粋な年下男子だった。


銀行員の女性達のちょっとしたヒエラルキーも少しの小さな真実がたくさん混ざっていた。
よく見かける、そしてもしかしたら自分も吐いたり吐かれたりしている可能性のある言葉達。

20年近く勤務している自らの足で生きている女性らを少し小馬鹿にしている課長の愛人の若手女性社員。
「えー!19年も働いているんですか!すっご!」
的な悪気がなさそうなサッパリさを携えた悪意ほど隣で聞いていてうんざりするものはないけれど意外と、この程度の悪意は驚くほどあちこちに存在するし、きっとその類の悪意を身から出してしまう人はその種類の中の悪意によって過去、どこかで誰かに傷つけられてきているかむしろ自分が劣等感にやられているパターンが多い気がする。

何を自慢に思っているかって恐ろしいぐらいその人を表す気がする。
可愛いなあと余計に好きになる自慢もあれば引くぐらいみじめな切り口の自慢もあればどこを自慢しているか複雑怪奇な、でもそこを刺したらイチコロ的な隠れた百会みたいな自慢もあれば

ちなみにわたしの自慢は

そこは今はいっか笑
眠い!

長年勤務している女性をみじめな人生と思う自分こそみじめな思考回路だと気づいてしまうと、結構きついから逃げて逃げて逃げ切れますようにと心のどこかでやっぱりみじめさに気づいているリアルさもよかった。
角田光代さんの小説読んでみたくなった。


ちなみにその課長愛人の若手女性社員はちゃーんと
いわゆる世間的には要領のよい生き方、器用な生き方とされたあがり方をちゃんとしていた笑(課長愛人を務めながらも同時進行でひそかに進めていたであろう地元同級生とさくっと寿退職)
個人的にはこのパターンを女性同士の雑談で話題にするのは嫌い、というか怖い。
勝ちパターンとしてどこか卑しさを携えた表情で語られる事が多いからだ。
その時私は顔は笑顔でなるべくギリ、ノーリアクションの範疇で時が過ぎていくのを待たないといけない。
真っ向からそんなだっせー寄生虫思考、私にぶつけてくんなよと言わずに笑顔でやんわりスルーがわたしの精一杯の反抗。
でも嘔吐物が洋服にかかった不愉快さは残る。
でもそれを繰り返すとあいつはいつも乗ってこない秘密主義の奴だなと少し警戒される。
休みの日に何をしているかも秘密主義よりだけれど思想も(日常生活では)秘密より。
理由はもうわからない。
本能。
もちろん腹を割って話せる人にはほぼ全裸に等しい開きっぷりだと思いますが。


自由には本物と偽物がある。
そんなとっても面白い映画でしたのでお時間ある時に思い出したら是非♡


…ならネタバレさせんなよ…と舌打ちしましたか?
宮沢りえさんの堅実ファッション&ヘアメイクからバブリー華やか女性への変身ぷりは圧巻でしたよ!
さっすが宮沢りえ…と感動しました。 
個人的には小林聡美さんの言動が全てどツボで彼女はきっと生自分が吐かないセリフを吐く役は引き受けないのでは…と思うほどにセリフが似合っていた。


あと個人的にはファッションセンスと言動センスは比例していると思う事が多いので唯一、ちょっと嘘くさいなと映画に思った事はあのファッションセンスがある女性はあんな(つまんない)夫は選ばないのでは…という点。
資金力で服のコーディネートを丸ごと買えたとしても着こなしているセンスは非現実的。
もっとニセモノ感を漂わせた成金ファッションの
結果お金かかっているのになんかださい感じがたいてい横領で捕まった人の映像からくる印象だ。

おやすみなさい♡