濃茶は茶事の中で最も重要と考えられ、主客ともにその一服のために準備を整えていきます。　　

「濃茶が練り上げられるまでの静けさが心に及ぼす影響を体感させたい」という、わかば国語・作文教室の先生の発案で、子どもたちにも濃茶の体験をしてもらいました。

「コーヒーすら飲んだことのない子どもに濃茶なんて・・・」というご意見もおありかと思いますが、目的は濃茶を飲んでもらうことではなくて、あくまでも濃茶が練り上げられるまでの間に茶室に流れる空気感に触れてもらうことです。

そして、片口を使って作法に則って練り上げられた濃茶は、少しずつ紙コップに分けられて子どもたちの前に運ばれました。

事前に子どもたちには「濃茶を点てている間は、声を出さずに静かにしていること」「身動きをしないこと」そして、「初めて口にする濃茶の味に驚いてもそれを直ぐには声に出して表現しないこと」という三つの約束をしてもらいました。

「この約束を守ってもらえたら、終わった時には心に何かが残るから」と。

その代わりに、足がしびれて辛くなると、モゾモゾ動きたくなったり、声を出したくなったりするので、20分ぐらいジッとしていられる楽な姿勢で座ってよいこと、濃茶を少し飲んで「これは飲めない・・・無理」と思ったら、躊躇せずに残すこととも伝えました。

訪日外国人が茶道を体験するときは、こんな座り方でもOKなので、初めて茶道に接する子どもたちも、苦しみを伴う修行的な一面から始める必要はないだろうと・・・

子どもたちには、講座の開始からおよそ２時間をかけて趣向と道具の関係性やお茶の点て方、飲み方などを学んでもらい、その間に私は水から炭で湯を沸かします。　

これは、丁度茶事で初座にかかる時間に匹敵し、濃茶に向けて具合よく湯相が整えられる時と一致しています。

文化体験講座【茶道で学ぶ「和」の心】・・・濃茶(1)