●米国第一主義、モンロー主義で、中国ロシアとは協調し戦わない、第二次トランプ政権の『国家安全保障戦略』が公表された

 

 (1)第二次トランプ政権の「国家安全保障戦略」(NSS)が12月4日に公表されました。拘置所ではインターネットは使えませんし、私はいわゆる同志の方から支援を受けているのではないので、新聞報道(購読している読売新聞)以外の情報は今のところは入手できていません。一部を抜粋します。

 

 「トランプ政権は『世界秩序全体を米国が一手に支える時代は終わった』と訴え(た)」「『米国第一』の姿勢がさらに強まった現政権は、今回のNSSで『柔軟な現実主義』を掲げた。『我々は各国に対し、歴史や伝統と大きく異なる民主化や社会変革を押し付けることはない』と宣言し、世界に民主主義を広げてきた歴代政権とは一線を画した」(12月7日付)。「これに伴い、世界に展開する米軍の配置を見直し、南北米大陸を含む『西半球』に重点的に振り向け、麻薬や移民の流入防止に取り組む方針を示した」(12月9日付社説)。

 

 「ロシアによるウクライナ侵略をめぐっても、トランプ政権の矛先はロシアではなく欧州側に向いている。NSSでは『欧州では世論の圧倒的多数が『和平』を望んでいるにもかかわらず、民意が政策に反映されていない』と訴え、欧州諸国の民主主義に欠陥があると責めた。戦闘の早期終結は米国の『核心的利益』だとしたが、理由に『ロシアとの戦略的安定の再構築』があることも隠さなかった」「北大西洋条約機構(NATO)が永続的に拡大し続けるとの見方はやめるべきだと指摘。加盟国の相互防衛義務を定めた北大西洋条約第5条に言及せず」「極右政党の台頭を念頭に『愛国心ある政党が影響力を拡大しているのは欧州再生への大きな希望だ』と言及」(12月7日付)。

 

 ドイツのメルツ首相は12月13日、ミュンヘンでの演説で、「何十年にも及ぶパクスアメリカーナ(米国による平和)は、ほぼ終わりを迎えた。米国は今、自国の利益をただひたすらに追求している」と批判しました。調査会社ユーガブが12月1日に発表した調査結果では、英仏独伊スペイン、デンマークで6~9割がトランプ大統領を「好ましくない」と答えていました(12月22日付)。

 

 今回のNSSは中国についてはどう述べているのでしょうか。一部を抜粋します。「第一次トランプ政権が2017年に発表した戦略では、中国について『米国の価値観や利益に反する世界を作ろうとする修正主義勢力』と表現した。バイデン前政権が22年に発表した際には『唯一の競争相手』としていた。第二次トランプ政権の戦略ではこうした文言はなくなり、中国との関係維持の方針が色濃く反映されている。今回の文書では、『我々は米国と中国の経済関係をリバランス(再均衡)させ、米国の経済的自立を回復する』と掲げた。『北京と真に相互に有利な経済関係を維持する』ことも記した」(12月6日付)。「米中の『究極の利害関係』は経済だと定義し、中国との貿易で利益を得て、米国経済を成長させる青写真を描いた」(12月17日付)。

 

 (2)私は前回(25年12月15日アップ)拙文でも書きましたし、トランプが2016年の大統領選挙に勝利してから一貫して批判をしてきましたが、トランプは侵略を違法化した国際法を否定し、国際法を擁護して侵略を抑止して世界秩序を守ろうとしてきた戦後のアメリカの世界戦略を、否定する大統領です。米国第一主義でモンロー主義で、侵略大国の中国とロシアとは協調して戦うことはしない。だからこれまでのアメリカの同盟条約も守らない大統領です。それは、ロシアのウクライナ侵略をめぐるトランプの対応で充分過ぎるほど証明されています。NATO条約も事実上、否定しているトランプです。そうであれば、中国に対する米日同盟なども同じです。今回のNSSにも「米中の『究極の利害関係』は経済だ」と明記されました。トランプ政権は米半導体大手エヌビディアのAI半導体「H200」について、中国向け輸出禁止を解く方針を決定しました。中国の軍事力強化に直結するものです。トランプは国際法や法の支配の考え方が、習近平やプーチンと同じです。両大国とは経済的にウィンウィンでやって行ければOKなのです。

 

 米国務省のルビオ長官は12月19日の記者会見で、悪化している日中関係への対応について、「我々は日本との強固な同盟関係を継続しながら、中国と生産的な協力方法を見出すことが可能だ」と述べ、中国側の行動を非難しませんでした。トランプの対中政策(対中協調)のためです。記者から「最近の中国による日本への挑発行動(12月6日の中国軍機による航空自衛隊機へのレーダー照射)を非難するか」と問われたのですが、非難するとは言わず、「日中の緊張関係は以前から存在していた」と述べただけでした。そして「われわれは彼ら(中国)との関係を築き、向きあい、協力できることを見つけなければならない」と語ったのでした。ルビオ氏は「私の職務は大統領の外交政策を実行に移すことだ」と述べました(12月20日付)。トランプ自身が11月25日、電話口で高市首相に「日米でガンガン(反論を中国に)言うのをやめよう」と言ったのです(12月31日付)。強固な米日同盟関係などどこにもありません。

 

 中国は12月29日から31日の3日間、陸海空軍とロケット軍で台湾を海洋と空から封鎖する軍事演習「正義使命-2025」を実行しました。中国東部戦区報道官は、「『台湾独立勢力』と外部干渉勢力に対する厳重な警告だ」と強調しました。

 

 これに対してトランプは29日の記者会見で、「何も心配していない」と述べたのです!そして、中国の習近平国家主席と良好な関係を築いていると改めて強調したのでした。さらに、中国による台湾侵攻の可能性を念頭に、「彼がそれを実行するとは思っていない」と語ったのです(12月31日付)。

 

 高市首相をはじめ日本政府は、これがトランプの思想と政策だと深く認識しなくてはなりません。トランプは2016年の大統領選挙の時から、安全保障政策に関しては親中・親露です。「保守」の仮面をかぶっていましたが、安倍首相もまた親中・親露でした。だから2人は仲が良かったのです。日本の保守派の著名な人々の実に多くが、安倍首相とトランプ大統領を高く高く評価してきましたが、そのマイナス効果は非常に大きなものがあります。

 

 (3)第一次トランプ政権の閣僚たちやホワイトハウス高官は、そういうトランプと思想的・政治的に戦っていきました。上下両院の共和党議員のほとんどもトランプと戦っていきました。2017年12月に公表された「国家安全保障戦略」、それに基づいて国防総省が策定した2018年1月の「国家防衛戦略」を、トランプは拒否していったのですが、彼らはトランプと戦っていったのです(2018年3月29日アップ拙文等を参照してください)。国家安全保障担当大統領補佐官のボルトン氏もそうでした。『ジョン・ボルトン回顧録』はトランプの実相を赤裸々に明らかにしています。「トランプが次に見捨てるのは誰かという憶測がなされるようになったが、台湾はその候補者リストの最上位あたりに位置していた」(同書347頁)、とボルトン氏は書いています(私の25年2月24日アップの拙文「トランプ二期政権で全く別の世界が訪れる。日本は亡国にならぬように軍事力を大増強せよ」に『回顧録』の内容を抜粋してあります)。多くの閣僚とホワイトハウス高官が解任されたり、抗議の辞任をしていきました。ボルトン氏もその一人でした。

 

 トランプは自らを熱狂的に支持する「大衆」(メイク・アメリカ・グレート・アゲイン=MAGAと呼ばれる大衆)を、嘘と巧みな扇動によって議会を包囲させて、トランプを非難する共和党議員を攻撃させていきました。トランプはこれまで選挙に行かなかった彼らを、2018年の中間選挙では共和党員に登録させて、予備選挙でトランプを支持する者を当選させ、非難する者を落選させて、共和党を乗っ取ってしまったのです。共和党は「トランプ党」に改造されたのです。

 

 「ネバー・トランプ」の共和党員たちは、2024年11月の大統領選挙でも、共和党政権の元政府高官200名以上が、「我が国の248年の歴史の中でトランプほど脅威となる人物はいない」と非難し、「米国市民は党派よりも国を優先する義務がある」として、民主党の大統領候補のハリス氏に投票するように米国市民に訴える「共同声明」を発表しました。彼らはそのようにして世界秩序とアメリカにとって大きな脅威であるトランプを落選させようとしたのでした(24年10月10日アップの拙文を参照ください)。ただし、当選した共和党(トランプ党)議員の中にも、これまでの共和党の思想性を維持している議員が一定割合いることは確かです。彼らは民主党との関係ではトランプ大統領を擁護しても、トランプのとりわけひどい政策には反対を唱えるわけです。ここはすごく重要なところです(後述)。

 

●今回の「米国家安全保障戦略」には、相互に対立する記述がある。第一次トランプ政権で「国家安全保障戦略」(2017年12月)と「国家防衛戦略」(2018年1月)の起草に関与したエルブリッジ・コルビー国防次官が、その部分の起草に関わっているからだ

 

 (1)新聞報道を抜粋します。「一転して台湾に関する記述はトーンが変わる。半導体の重要生産拠点で地政学上の要衝だとし、『台湾をめぐる紛争の抑止が最優先課題だ』と明記した。これまでで最も台湾有事の抑止に踏み込んだ記述だ」「今回は『第一列島線全域における侵略を抑止できる軍隊を構築する』と明記するなど、約1ページにわたり対中抑止に向けた目標設定が詳述された」「コルビー氏自身も8日、SNSへの投稿で『米国は、いかなる国も米国の利益を脅かすほどの支配力を持つことを許さない』と中国を牽制した」「今回のNSSでは、全体的に中国に融和的でありつつ、同時に台湾をめぐる安全保障面での記述では強硬姿勢が強調された」(12月17日付)。

 

 「インド太平洋地域を『経済的・地政学的な戦場』と位置づけ、『航行の自由』を守ると表明した」「中国を念頭に、『台湾の占領を阻止するために米国と同盟国の能力を強化する』とした。中国が、南西諸島や台湾、フィリピンを結ぶ『第一列島線』を防衛ラインとしていることに対し、この地域での防衛力を強化するため、日本や韓国を名指しして防衛費増額を求めた」(12月9日付社説)。

 

 (2)エルブリッジ・コルビー氏はトランプを厳しく批判している人です。自らが起草に関与した2017年12月の「国家安全保障戦略」と2018年1月の「国家防衛戦略」を、トランプは2018年9月の国連総会の一般演説でも、「ここ西半球で外国の拡張主義勢力による侵略から独立を守ることが我々の決意だ」「モンロー主義が我が国の公式の政策である」と述べて、全否定したことから、国防総省を去った人です。今回、国防次官として一部の起草に関与したのは、国際法を否定し、同盟国や友好国の存立を脅かし、米国の国益も破壊していくトランプの外交・安全保障政策の巨大なマイナスを少しでも減らすためです。前記した記述があれば、中国はためらい、台湾や日本などの独立は少しでも長く守られるからです。もちろんコルビー氏は米国のあるべき対中戦略を示したのです。国防総省の高官や米軍はそのように考えているのです。

 

 トランプはもちろん馬鹿ではありません。民主党議員とその支持者や「ネバー・トランプ」の共和党員とその支持者はもちろんですが、政権党であるトランプ党(=共和党)の中にも、トランプの外交・安全保障政策に異議を唱える議員が一定割合いるのです。トランプは彼らをうまく騙して、取り込んでいかなくては政策を遂行できません。トランプは断じてコルビー氏の主張を認めませんが、反対派を取り込むためにコルビー氏の主張を利用することを考えたから、彼を国防次官に指名したわけです。

 

 トランプは台湾やフィリピンや日本や韓国や豪州等を守るために、中国と戦争する気など全くありません。中国は経済・軍事大国だからです。しかし、トランプとしても中国がこれらの地域を自らの支配下に置いてしまうことは、アメリカの国益に反するから反対です。アメリカの勢力圏であった地域です。だから、トランプは日本や韓国等にも防衛費の大幅な増額を求めています。その意味は自分の国は自分で守れということです。武器は売るが、有事にはアメリカは共同防衛はしません。ただ、トランプとしてもコルビー氏の記述がNSSにあれば、米国にはそのように考えている勢力もいるのだと中国を牽制できると考えて、活用していくということです。だから、トランプは忠誠を尽すヘグセス国防長官には、米日同盟は強固だとか米日共同訓練の拡充も言わせています。読売新聞の記述は以上の点の分析を誤っています。

 

 (3)日本はこれまで米国の安全保障に頼り切ってきました。閣議決定ですぐに可能になる、本来の憲法9条を支持することで国防軍を保持することすらやってこなかったのです。そればかりか、安倍首相は反日解釈した憲法9条2項を維持して、だから「軍隊ではない自衛隊」を憲法に明記することで、日本に決して軍隊を保持できなくさせる自民党の「憲法改正案」を決定させました。高市政権はこれを否定しなければなりません。

 

 日本国の安全と独立(存立)を守り抜くことは、日本が主体になってやらなければならないのは当たり前のことです。国防軍すら持とうとしないのに、「日本は平和国家に徹してきた」などという言説が平気でなされてきたのが日本です。国際法があります。だから他国を侵略しないのは当然すぎることです。「平和国家」とは、他国の日本への侵略を決して許さない強い軍事力と経済力を持つ、平和を維持できる国家のことです。日本を侵略したら、日本から直ちに強力な軍事的反撃がなされて大きなダメージを受けることになり、国家権力を維持することが困難になってしまうと、侵略しようとする国の支配者達に認識させられる日本国家のことを、「平和国家日本」というのです。強い国防軍を持つことは第一条件です。「日本は憲法の規定によって軍隊を持てないから、侵略してきた国の領土内の軍事目標を攻撃するのは同盟国の米国の役割である」と、日本政府と自衛隊と国民は平気で言ってきたのでした。これでは、日本が「平和」を、すなわち「軍事」を主体的に考えることができないのは必然です(日本が憲法9条を「反日解釈」してきた異常な国家であることは前回拙文を見てください)。

 

 本格的な日本侵略を単独で狙う能力のある国は中国とロシアです。北朝鮮は両国と一緒であれば日本を侵略してきます。この三国は対日核戦力を配備しています。だから、日本は自らの平和を守るためには核抑止力も保持しなければなりません。軍事の常識です。日本は唯一の戦争被爆国だからこそ、二度と核兵器で攻められないために、核武装しなければならないのです。完全な「平和国家」とは、国際法を守る核抑止力をも持つ国家のことです。中国ロシア北朝鮮は国際法を否定する侵略国家ですから、反平和国家です。反平和国家=侵略国家の兵器はどんなものでも悪の兵器です。日本の「反核兵器運動」は左翼が中心になって行っていますが、それは本質的に反日運動なのです。国防軍を持たない日本人は「平和維持」や「軍事」がわかっていません。

 

 高市政権は「法の支配」を強調します。そうであるからこそ、高市内閣が「閣議決定で本来の憲法9条を支持して国防軍を保持する」ことは内閣の法的義務です!(前回拙文を参照ください)。また高市政権は、「非核三原則」も直ちに破棄しなければなりません。私の2023年6月23日アップの拙文「露軍をウクライナから撤退させる方法は、米NATOが直接軍事介入し、核も即応態勢に置くことだ」の4節目「国際法を堅持する平和愛好国の核兵器(核抑止力)は、侵略を抑止して平和を守る、また平和を回復する『正義の兵器』である。私たちは反日左翼の『反核運動』と戦わねばならない」を参照していただけると幸いです。私はそこで、安倍首相が2013年10月、国連総会第一委員会の「核兵器不使用」の「共同声明」に賛同署名させたことも批判しました。民主党政権でもやらなかったことを実行した安倍首相は、彼ら以上の反日の左翼思想の持ち主だったのです。日本人は安倍首相が遺した負の多くの反日遺産を否定しなくてはなりません。

 

 (4)日本人が抱える深刻な問題は、「法の支配」(政府も国民も法=憲法に支配される)の思想が獲得されていないことです。日本人にとっては政府は「お上」(近代国家以前の考え方)であり、政府の見解が「正義」になってしまっています。だから、納得しがたいことでも従ってしまいます。自衛官も退官すれば政治活動ができますが、「閣議決定で本来の憲法9条を支持して国防軍を保持すべきだ」と、首相や政府の誤りを批判する(元)自衛官将官はいません。あんなに反日政策を実行してきたのに、安倍首相を批判しません。新聞も他国の指導者(例えばトランプ)は批判するのに、安倍首相を批判することはしません。権力への迎合以外の何物でもないのです。「エリート」と言われる人々が、「法の支配」に基づいた行動をしなければ、国は滅びることになります。

 

 (元)将官や新聞や知識人たちは、高市政権に閣議決定によって国防軍を保持することを求めていかなくてはなりません。「非核三原則」の破棄も求めていかなくてはなりません。日本の核武装を政府と国民に訴えなければなりません。政府をふくめて「エリート」自身が自己を変えていかなくてはならないのです。「エリート」達は、日本は数年先も現在と同じ状況にあると思ってしまっています。だから物価対策を第一に論じます。しかし、習近平はトランプ政権中には必ず台湾を軍事力を使って併合するのです。台湾を囲む海域に機雷を敷設して経済封鎖します。その海域には日本に原油、天然ガス、その他を運ぶシーレーンが走っています。つまり中国軍の機雷敷設は日本へ向かうタンカーなども対象にするものです。これは日本の武力攻撃事態(日本有事)です。日本は台湾やフィリピンや韓国とともに、中国の侵略を抑止できるか、征服されてしまうのかの瀬戸際にあるのです。日本はここに焦点を当てて政治をしなければなりません!政治が誤ったら国は滅びてしまうのです。

 

 「真のエリート」たるものは、自らの栄達など決して求めてはなりません。エリートたるべきものは法に支配された政治の実行を目指して、国と国民のために自己犠牲をこそ払うべきです。民主主義も「法の支配に基づく民主主義」です。その意味では、国民一人ひとりが「法の支配に基づく政策立案者」でもあるのですから、誤った政治に対しては、批判の声を上げていかなくてはなりません。政府は「お上」では断じてありません。

 

●トランプ政権の外交・安全保障政策に反対している連邦上下院議員、国防総省職員などの政府職員、米軍人、州知事、一般国民は非常に多くいる。米国には二つの政府がある。私たちは自らの行動で、トランプ政権に反対する米国民をさらに拡大させていくことができる。中国の侵略を抑止し征服を拒否するために、日本はどう行動すべきか

 

 (1)先述したように、与党のトランプ党(共和党)の中にも、トランプ政権の外交・安全保障政策に反対する共和党議員は一定割合います。例えば、トランプ政権はウクライナや支援する欧州の意見を一切聴取することなく、プーチンの主張をほぼ丸ごと支持する「28項目の和平案」をまとめて11月19日にゼレンスキー大統領に示し、21日には「11月27日までに受諾しなければならない!」と迫ったのでした。ところが、11月23、24日にはウクライナとアメリカの高官協議がなされることになり、欧州主要国も参加して協議し、欧州主要国が「20項目の和平案」を提出しました。その後も米、ウクライナ、欧州の首脳による協議は続き、12月15日には「19項目の修正和平案」になりました。もちろんトランプは納得などしていませんし、プーチンも受け入れません。

 

 このようになったのは、トランプ政権の「28項目の和平案」がロシアの侵略を全面的に認めてやる内容であるために、民主党議員の反対は当然ですが、トランプ党(共和党)の中からも多くも多くの議員が非難の声をあげたからです。メディアもトランプ政権を非難した。トランプはそれで「まずい」と思って、作戦をすぐに変更したのです。

 

 (2)このことは、ウクライナを支援して戦っている欧州各国が、もっと踏み込んでウクライナと共にロシアと戦っていくならば、アメリカ国内のトランプ政権と戦う勢力をさらに拡大していくことができることを示しています。すでに拙文に書きましたが、欧州の主要国つまり英仏独などの政府がウクライナ政府と相互安全保障協定(条約ではありません)を結び、直接軍隊をウクライナへ派兵して、自衛権に基づいてウクライナ軍と肩を並べて、ロシアと防衛戦争を戦っていくようになれば、アメリカにおいても「我がアメリカ軍も欧州ウクライナ軍と共に、直接ウクライナの地において侵略国ロシアと戦うべきだ」との声が大きくなっていくはずです。欧州の主要国は、ウクライナの主権を守り抜くことは欧州各国の安全保障になるのですから、当然、直接軍隊をウクライナへ送って共に戦うべきなのです。集団的自衛権の行使です。そうなれば、アメリカの連邦議員、連邦職員、アメリカ軍兵士、アメリカ国民の魂を大きく揺さぶるでしょう。トランプ党(共和党)の中からも、トランプ政権を非難する議員がさらに増えていきます。トランプ政権を非難し訣別して行く議員も多く出現してきます「ネバー・トランプの共和党員」になっていきます。

 

 アメリカには「二つの政府」があります。行政府と立法府(連邦議会)です。米国憲法第1条第8項の第11号は、アメリカ議会に「戦争の宣言」を行う権限を与えています。前記したようになれば、アメリカ議会において超党派によって、「米国大統領はウクライナ政府と直ちに相互安全保障協定を締結して、アメリカ軍を率いて直接ウクライナ領土内にも軍隊を派兵し、ウクライナや欧州と共にロシア軍と戦い、ロシア軍をクリミアを含むウクライナ領外へ撃退するべし!」との「戦争の宣言」が決議されて、大統領に勧告されます。トランプが拒否すれば、議会は「大統領弾劾」を実行していくことになります。アメリカが直接参戦してくれば、ロシアの敗北は必至です。だから、プーチンは戦うことはせず、軍を撤退させていくことになります。私の25年6月14日アップの拙文「米国はトランプ政権と決別し、世界秩序を守る自由民主主義陣営の強いリーダーたるべし!」を参照してください。関連する拙文として同年10月15日アップや10月23日アップの拙文も見ていただきたいです。

 

 (3)高市政権は中国の「戦狼外交」に対して、中国を刺激しないように気を配っています。しかしこれこそが、中国の謀略思想の「中日の戦略的互恵関係の維持」に屈するものです。これはもともとは、親中の安倍首相が2006年10月に中国側に提唱した「親中反日外交」のスローガンであり、中国が大喜びして全面的に利用してきたものです。高市政権はこの謀略思想をきっぱり否定しなくてはなりません!中国は台湾を取り、フィリピンを取り、そして東アジアの反中国連合の中で一番の経済力、技術力を有している日本を必ず取りにくるのです。中国が東アジア地域を自らの勢力圏にするとき、中心の日本をとって支配することは、戦略として当然すぎることです。私たちはこれを肝に銘じなければなりません。

 

 高市政権はトランプ大統領に対してではなく、米国議会や国防総省や米軍そして主要メディアに対してこそ以上のことを訴えていかなくてはなりません。つまり中国は東アジア・西太平洋を勢力圏にして、米国をアジアから排除していくのです。これは国防次官のコルビー氏の主張でもあります。トランプの世界観は東半球には基本的に軍事不介入のモンロー主義に立ち、西半球を自らの勢力圏にして、そこで国際法を否定する帝国主義を実行していくものです(トランプは1月3日、米軍特殊部隊のデルタフォースを使って国際法を踏みにじって、ベネズエラに軍事侵略してマドゥロ大統領夫妻を捕まえてアメリカに連行しました)。しかし世界のGDPの最大の集積地域は東アジアとインドです。そこから米国が軍事的に手を引くことは、中国とジュニアパートナーのロシアのアジア支配を許し、アフリカ支配を許し、ついには西半球の包囲支配を許していくことになります。最終的にはアメリカの分裂と亡国です。これはアメリカ人の政治学者スパイクマンが1942、43年に主張したことです。スパイクマンはアメリカの安全保障のために、アメリカはユーラシア大陸のリムランドの国々と同盟を結んで、共同して、ユーラシア大陸を支配する大国を封じ込めていくのだ、という世界戦略を提起しました。これが戦後のアメリカの世界戦略になりました。トランプはそれを否定する反アメリカ的大統領です(スパイクマンについては、24年9月6日アップ拙文の2節目、25年7月16日アップ拙文の3節目に出ています)。

 

 高市政権は上記の米国の人々に対して、「日本はこれまでのあり方を根本的に変えていく。閣議決定によって直ちに国防軍を保持する。そして国防費を(韓国政府が表明したのと同じ)GDP比3.5%に飛躍的に増額していく。日本は米国とともに、侵略国家中国を第一列島線から外へ出ていけないように封じ込めるために、地対艦ミサイルを大量に製造して第一列島線上の対馬、南西諸島に配備し、フィリピン、台湾、マレーシア・インドネシアにも供与していく」と訴えていかなくてはなりません。当然、財源は国債を発行して政府と日銀が無から貨幣を創造するのです。増税ではできません。これができるのが資本主義システムです(前回拙文を参照してください)。主流派経済学者は資本主義を理解していません。

 

 高市政権は米国に対して、中距離核ミサイルを可及的速やかに大量に再製造して、日本領域に配備し、かつ日米で核シェアリングすべきことを要求しなくてはなりません。コルビー氏もそういう考えです。米国は台湾にも配備し核シェアリングする。中国の核攻撃を抑止するためには、これが絶対に必要だからです。

 

 当然、中国の対日威圧は限りなく強化されます。そのことが日本人とアメリカ人を覚醒させていきます。日本人にはそれが必要です。敵の本当の姿を正しく認識するためです。またアメリカにおいては、トランプ政権と対決する勢力をより一層拡大していくことになります。彼らはアメリカと同盟国の日本などを守るために、トランプ政権を拒否して、国際法と憲法と憲法が支配する民主主義を守るアメリカを、再び取り戻していくでしょう。日本はそれを促進しなければなりません。

(2026年1月4日脱)

◎私は自由に発信ができません。批判を持たれる部分がありましても、日本の安全と独立を守るために、多くの人に知らせて頂けたら嬉しいです。