●日米首脳会談(3月19日)における高市首相の冒頭発言「私は世界の繁栄と平和に貢献できるのは、ドナルドだけだと思っている。そのために、私は諸外国に働きかけて、しっかり応援したいと思っている。それを伝えに来た」は、明確な誤りである

 

 (1)日本では日米首脳会談を「全体として評価する」とした人が69%で、「評価しない」の19%を大きく上回りました。与党支持者では「評価する」は85%であり、野党支持者でも63%でした。無党派層は56%が「評価する」と回答しました(3月23日付読売新聞)。しかしこういう評価は全く正しくありません。高市首相はどんな思惑があったとしても、事実に反することを、しかも冒頭発言で言うべきではありませんでした。その理由を以下に述べていきます。

 

 (2)世界の「平和と繁栄」のためには、まず世界の2大侵略国たる中国とロシア(両国は同盟関係にある)を、国際法を守る自由民主主義陣営が一致団結して、その侵略を抑止して平和を守り抜いていくことです。中国とロシアの国家目標(地域を支配する覇権国家になる)を、私たちは明確に認識して、自国の軍事力と経済力を増強して、侵略を抑止して、平和を守り抜いていかなくてはなりません。また中国とロシアの経済を強化する我々の貿易と投資は、彼らの侵略能力を強化することであり、戦略的な誤りです。道徳的な悪です。私たちは中国とロシアに対しては、経済的にも包囲し、弱体化していかなくてはなりません。私たちのサプライチェーンは彼らから可能な限り切断して、平和を守る同盟国・同志国内のものにしていかなくてはなりません。そして仲間内の貿易と投資では、相手国の経済を支配することを目的にしてはなりません。

 

 中国は東アジアの覇権国家を国家目標にしています。米軍を追い出してしまう。中国は台湾を軍事力を使って併合し、フィリピンを取り、日本を必ず取りにきます。中国が東アジアの覇権国家になるためには、東アジアにおける反中国連合の中で一番の経済力・技術力を持ち、地理的には中国を西太平洋から切断する位置にある日本を、絶対に支配して従属国化しなくてはならないからです。中国はそうすることで、アメリカ軍を東アジアと西太平洋から追放してしまうのです。私たち日本人は、中国は日本を侵略し支配し、米軍を追放することを目指していることを肝に銘じなくてはなりません。「日中の戦略的互恵関係の推進」のスローガンは、中国の情報心理戦です。日本は国家存亡の瀬戸際にいるのです。

 

 (3)前バイデン政権は(21年1月~25年1月)は、国際法秩序を平然と破壊していく独裁侵略国家の中国とロシアを、アメリカの「戦略的競争相手国」のナンバー1とナンバー2と規定して、国際平和を守るために、同盟国と同志国を率いて、戦ってきました。そこには多くの不十分さがありましたが、2大侵略大国と対決してきたのです。バイデン大統領は意識的に4度にわたって、習近平に対して「もし中国が台湾を軍事的に併合しようとしたら、アメリカは軍事力で台湾を防衛する!」と公然と表明しました。中国に対して、その経済力・軍事力を強化することになるため、半導体の輸出も規制しました。

 

 バイデン大統領はウクライナを全面侵略したプーチンを、「侵略者!」と糾弾して、欧州とともにウクライナを軍事的・経済的に支援してきました。

 

 (4)トランプについて述べます。彼は2020年の大統領選挙では支持者のMAGA(マガ)とともにバイデン氏に「北京の手先!」という嘘のレッテルを貼り付けて信用を落とそうとしました。「バイデンの政策はメイド・イン・チャイナ!」とも共和党大会で言いました。こういう虚偽レッテルを貼り付けるやり方は、目的の為には手段を選ばないものです。まさしく北京やモスクワがやっているものと同じです。トランプは選挙に負けても敗北を認めず、21年1月6日、議事堂のペンス副大統領に命じて選挙結果を覆そうとしました。ペンス氏は拒絶しました。トランプの思想と行動はアメリカ憲法(法の支配)と民主主義を否定する独裁者のものです(私の2021年3月13日アップの拙文を参照してください)。このトランプを支持する人が日本には多くいます。トランプは2022年2月24日、プーチンがウクライナへ全面侵略すると、米国テレビのインタビューで侵略を大絶賛したのです(私の2025年10月23日アップの拙文の二節目を参照ください)。

 

 第一次政権とは異なり、忠臣で固めた第二次トランプ政権(25年1月~)は、前バイデン政権の路線をひっくり返したのです。トランプは就任した25年1月20日に、21年1月6日の米連邦議会武装占拠事件で有罪になったMAGAのほぼ全員に当たる1,500人に恩赦を与えたのでした。トランプはこの捜査を「重大な国家的不正」としたのです。そして暴徒を起訴した連邦検事補だったマイケル・ゴードン氏は、7月に解雇されました(『強権国家アメリカー「トランプ革命」の衝撃』32ページ。読売新聞アメリカ総局。中公新書ラクレ2026年3月10日発行)。第二次トランプ政権は対外的には、侵略を違法化した国際法を否定して、アメリカ第一主義でアメリカの国益を追求することになりました。トランプの思想性は国際法を否定する弱肉強食主義です。習近平やプーチンと同じです。中国とロシアは核大国の強国です。だからトランプは彼らとは融和して行きます。トランプは習近平とプーチンを何度も公然と「尊敬する友人」と言ってきました。

 

 (5)トランプは2025年12月4日に『国家安全保障戦略』を公表しました。中国との関係について次のように述べられています。「今後、我々は米国と中国の経済関係を再調整し、相互主義と公平性を優先して米国の経済的自立を回復させる。中国との貿易は均衡を保ち、非敏感部分に焦点を当てるべきである。米国が成長軌道を維持し、北京との真に相互に有益な経済関係を維持しながらそれを持続できるならば、現在の(米国の)30兆ドル規模の経済は2025年(ママ。2030年か。大森)までに40兆ドル規模へと拡大し、2030年代は世界最大の経済大国としての地位を維持する羨望の的となるでしょう。我々の究極の目標は、長期的な経済活力の基盤を築くことです」。

 

 この部分は「経済:究極の利害関係」の「項目」で述べられています。すなわちトランプは米中の究極の利害関係は経済だと定義して、米国は中国との経済関係を再調整して、相互主義と公平性を優先して、中国と真に相互に有益な経済関係を維持して行くことで、米国経済を大きく成長させていくのだ、としているわけです。米国防総省と米軍はトランプとは全く別の戦略を持っていますが、行政権は大統領のトランプにあり、トランプは軍の最高司令官です。だからトランプ政権の対中戦略は「米中の究極の利害関係は経済である」なのです。当然にも対露戦略もそうなります。

 

 つまり、トランプにとっては中国は地政学的な敵、戦略的競争相手ではありません。トランプにとってのロシアも同じです。だからトランプはバイデン政権の対中対露路線をひっくり返して、軍事大国の中国、ロシアとは融和していくわけです。とりわけ中国は、経済的にウィンウィンで長くやっていくことによって米国経済を大きく成長させていく相手なのです。中国とは上手くやっていきたい。だから中国が25年に12月29日から3日間の予定で、陸海空軍とロケット軍を動員して、海と空から台湾を封鎖する軍事演習「正義使命ー2025」を行っても、トランプは「何も心配してない」「習近平国家主席と良好な関係を築いている」と12月29日の記者会見で述べました。30日には「習国家主席が台湾侵攻を実行するとは思っていない」と言ったのです。トランプは軍事大国の中国とロシアとは融和して、強い経済を作り上げて金儲けをしたいのです。

 

 昨年11月、高市首相は台湾有事になって米軍と中国軍が戦闘することになれば、「存立危機事態」になりうると、国会で野党の質問に答弁しました。これに対して、中国は国を挙げて髙市首相と日本を非難し、12月6日には中国軍機が航空自衛隊機へのレーダー照射も行いました。しかしルビオ米国務長官は、中国のこれらの日本威嚇行動を非難せず、「我々は中国との関係を築き、向き合い、協力できることを見つけねばならない」と記者会見(12月19日)で述べたのです。トランプも11月25日の高市首相との電話で、「日米でガンガン中国に言うのをやめよう」と圧力を加えました。トランプ政権にはどこにも強固な米日同盟関係の姿はありません。中国とロシアに融和し迎合している姿しかありません。これがトランプのアメリカ第一主義です。

 

 米国の情報機関を統括する「国家情報長官室」は26年3月18日、世界の脅威に関する年次報告書を発表しました。報告書は「中国は現時点で、27年に台湾侵攻を実行する計画を立てておらず、統一達成のための具体的な期限も定めていない」とし、中国が「可能であれば武力を行使せずに統一を達成することを望んでいる」とも強調しました(3月20日付読売新聞)。

 

要するにこれが中国と融和するトランプ政権の姿です。ただし米国防総省と米軍は違います。この記事を書いた向井ゆう子記者は、「米国防総省が昨年末に発表した中国に関する報告書でも、中国が27年までの台湾侵攻を可能にするため、軍事力を着実に進展させていると分析していた」と述べ、国家情報長官室の年次報告書が中国に迎合した内容であることを述べています。また「同盟国の日本ではなく、中国政府の主張に沿った記述が見られた。共和党ブッシュ政権で高官を務めたデニス・ワイルダー氏はSNSで『中国の自己中心的な対日非難をまねるなど許しがたい。同盟国はましな扱いを受けるべきだ』と批判しました」と書いていました。中国を批判したくないトランプは国防総省・米軍の報告も捻じ曲げ否定してしまいます。トランプは今もウクライナを侵略しているプーチン・ロシアの側に立って、ウクライナのゼレンスキー大統領ばかりを非難しています。

 

(6)高市首相の冒頭発言等が載った同じ3月21日付読売新聞には、「論点スペシャル 日米首脳会談 どう評価」という特集があって、前バイデン政権の国防次官補を務めたイーライ・ラトナー氏のすぐれた文が載っていました(聞き手は前出の向井ゆう子記者)。次です。

 

 「第二次トランプ政権下で国防総省は、同盟国やパートナーにそれぞれの地域での役割を果たすよう求めてきた。アジアの同盟国は対中に専念すべきだとし、欧州のインド太平洋への関与も望んでいない。力の分散につながると考えているからだ。だが、対イラン戦争の開始で状況が一変した。米国は中東に戦力を集中させ、リスクが生じている。インド太平洋で米空母の展開が手薄になり、韓国に配備されていた(ミサイル防衛システム)THAADのミサイルは中東に送られたとされる。敵対勢力が比較的容易に攻撃を仕掛けることができる状態だ。[リスクが生じているの点、同感です。大森]

 

 現政権は、米国の対中政策を『競争』から『融和』へと転換させた。半導体に関する輸出規制を緩和し、レアアース(希土類)を使った中国の脅しにも効果的な対応ができていない。

 

 トランプ氏には国家間の戦略的競争における確固たる理念がない。中国に対する見方も非常に視野が狭い。ベネズエラやイランへの攻撃について中国の影響力排除が目的だとする分析があるが、本当にそうであれば、インド太平洋の同盟国をもっと明確に支援しているはずだ。[中国の影響力排除が目的ではないの点も同感です。大森]

日本は米国にとって最も重要な同盟国だが、トランプ氏は中国の圧力にさらされる日本を公には擁護せず、中国に迎合的な姿勢を保っている。米国のインド太平洋への関与を疑わせ、日米同盟を弱体化させかねない。

 

 インド太平洋の安全保障環境は悪化している。日米両国は、この同盟関係が地域において、そして世界においてどのような役割を果たすことができるのかについて絶え間ない議論をし、同盟国を前進させていくべきだ」。

 

 (7)イーライ・ラトナー氏の主張はまったく正しいと思います。少し横にそれますが、米国には自国の現政権に対して正当な批判を行う知識人が多くいます。共和党にもネバー・トランプ派の知識人は多くいます。しかし日本にはほとんどいません。私は安倍政権や高市政権に対しても批判を行ってきましたが、元将官や元官僚や大学教員や新聞記者などの専門家や知識人で、安倍政権や高市政権を批判してきた人は、何人いるでしょうか?「お上」批判やボス批判はタブーなのが日本の言論界です。日本では先進文明国家の統治原理である「法の支配(憲法の支配)」=「お上の否定」の思想が獲得されてなく、だから日本には自由な言論はありません。前近代国家ではそうであったように、自主規制してしまうのです。安倍首相が押し付けた自民党の「憲法9条改正案」は、日本に国際法の軍隊を持てなくさせるウルトラ反日政策です。つまり日本に中国の侵略から祖国を守り抜くことをできなくさせるものです(26年2月16日アップや3月9日アップの拙文を参照してください)。頭のいい人なら多くの人がこれを理解しています。しかし戦わないのです。専門家などの知識人が連帯して「社会的責任」として、「法の支配」(本来の憲法9条や98条2項)の立場から、誤っている政策を公然と批判してきていれば、こんな情けない日本にはなっていません。なお、安倍首相とトランプが仲が良かったのは、親中親露で一致していたからです。

 

 トランプは自らの思想ゆえに、二大侵略大国の中国とロシアとは融和し、迎合していきます。トランプは中国、ロシアとは戦争しません。だから、日本は中国によっていつ侵略されるか分からない状況にあります。台湾やフィリピンなども同様です。日本には国家の安全と存立の危機が迫っています。

 

 私たちはトランプ現政権の政策と戦略を、正しく分析し理解を深めなければなりません。しかし、トランプにそれを日本だけで提起したところで聞く耳を持ちません。だが、アメリカにはトランプやトランプ政権を批判して戦っている人々が、議会にも議会外にも非常に多くいます。行政府の官僚にも、とりわけ国防総省には多くいます。トランプは彼らのことを「闇の政府」と呼び攻撃しています。米軍にも非常に多くいます。

 

 米国には行政府と連邦議会という二つの政府があると言われます。連邦議会には憲法によって、「戦争決議」を行ない、それを大統領に勧告する権限が与えられています。もし中国が日本への軍事侵略を開始したときに、米連邦議会が超党派によって、「大統領は米軍を率いて戦闘している同盟国日本とともに中国侵略軍と戦うべし!」と決議すれば、大統領はそうしなければなりません。大統領が拒絶すれば連邦議会は大統領を弾劾することになります(26年1月23日アップ拙文の三節を参照ください)。私たち日本は、トランプと戦っているそういう人たちとの連携を強化していかなくてはなりません。彼らの力を借りてともにトランプに路線の変更を迫っていくべきです。

 

 (8)そのためには、日本はこれまでの自らの反日的な国家安全保障政策を土台から変えてしまわなければなりません。その第一歩は閣議決定によって、「本来の憲法9条」(自衛権行使や国連安保理決議の軍事制裁を実行するための軍隊の保持と軍事力の行使を認めている。GHQが策定したものであり、芦田修正でも認めたもの)を支持し、憲法9条と憲法98条二項に違反している現行の憲法9条解釈を、憲法98条1項によって無効にして、日本は軍隊を保持できる、自衛隊は軍隊だ、と決定することです。日本は一日で軍隊を持てます。憲法改正は、必要ありません。自民党にはこれまでの憲法9条解釈の深刻な誤りを潔く認め、深く国民に謝罪して、上記の閣議決定を直ちに断行する法的義務があります。自民党は反日の安倍首相の呪縛を断ち切らなくてはなりません。ウクライナの現実は、明日の東アジアの現実なのです。日本の現実になるのです。

 

 現在の「専守防衛政策」は、侵略されても他国領域への反撃は許されないというものです。これは「軍隊ではない自衛隊用」の政策です。つまり、自衛隊には国際法が軍隊に認める権能がないからです。この政策では侵略の抑止は不可能です。つまり「日本の平和」は守れません。日本は同盟国の米国がいるから、米国が侵略国領域内への反撃をしてくれるので、平和を守れてこれたにすぎません。日本は本当に誇りを欠いた異常な国家なのです。しかしトランプ政権は中国やロシアと戦うことはしません。日本が上の閣議決定で軍隊を持てば、「専守防衛政策」は自動的に木っ端微塵に粉砕されます。日本は必ずそうしなくてはなりません。日本軍は国際法が全ての国の軍隊に等しく許す権能を持てます。米軍やイスラエル軍や英軍や仏軍などと同等の軍事行動を実行することができます。そして日本は直ちに前回拙文に書きました三種の軍事力の配備を始めなくてはなりません。また長距離ドローンも大量に生産しなくてはなりません。

 

 日本は自らの国は自分たちが中心になって主体的に守り抜いていく政策を確立しなくてはなりません。日本は血を流して守り抜いていく。そういう当たり前すぎる姿を行動によって示さなければ、米国も共に戦ってくれません。日本は甘えは一切捨て去らなくてはなりません。日本は行動によって同盟国アメリカなどの信頼を勝ち取って行かなくてはならないのです。閣議決定で直ちに軍隊を持つことは、その第一歩です。憲法が政府と議会と国民に命じていることです。

 

 (9)しかし、これまでのところ、高市首相や政権の主張などを見る限り否定的です。だから、3月19日の日米首脳会談のあの事実に反する「冒頭発言」もなされたのでした。トランプ大統領やトランプ政権と戦っているアメリカ人は、高市首相が日米首脳会談でトランプにどのように接し、何を語るかを注意深く見ていたのです。中国の侵略におびえる台湾などアジアの国々の政府や議会やエリートたちも、欧州各国の人々も日本を見ていたのです。繰り返します。私たちはトランプと戦うアメリカ人勢力との連携をこそ作り出して行かなくてはなりません。米国防総省と米軍は、中国を第一の戦略的競争相手とみているのです。日本が軍を持ち、強い国家になることを強く求めています。私たち日本人は、国民全体の意識を土台から変えていかなくてはなりません。

 

●トランプの経済政策を批判する

 

 (1)アメリカは貿易赤字国です。トランプは同盟国や友好国に対しても、「彼らは毎年多額な対米黒字を稼ぎ出して我々の富を収奪してきた。だから私は関税を課して奪われた富を取り戻すのだ」として、高い相互関税を課してきました。経済学的にまったくの誤りです。トランプはこうして同盟国などの経済を圧迫して、同盟関係も壊してきました。しかもトランプはこの高関税政策によって、アメリカ側にも大きな関税負担を強いているのです。

 

 米最高裁判所は26年2月20日に、「国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づくトランプの「相互関税)を違憲としました。その前の2月12日に、ニューヨーク連邦準備銀行はトランプ関税は、誰が負担しているかの「研究結果」を発表しました。昨年1月から11月までの関税負担の内訳です。時期によって異なりますが、外国の輸出業者の負担は6%(1月~8月)から14%(11月)です。米国の輸入業者の負担は94%(1月~8月)から86%(11月)です。輸入業者は負担の一部は販売価格に転嫁しますので、アメリカの家計と一般企業がその分を負担することになります。つまり関税はアメリカ国内の増税なのです。

 

 (2)トランプは「貿易赤字は富が収奪されること。貿易黒字は富を収奪することだ」と完全に誤って捉えています(しかし本当は、国際経済学者に教えられてー 一期目のときにそうされていました ーちゃんと理解していながらも、世界中が誤認識していることを利用しているだけかもしれません。自分たちの私益のために)。「俗流国際経済学」は「貿易赤字は損失、貿易黒字は儲けだ」とします。批判を以下に述べます。

 

 貿易は各国の多くの経済主体が自らの経済状況をよくしたいと思ってする、外国の経済主体との自由な経済取引です。嫌だと思えばやめればいいだけです。経済取引は交換です。財貨やサービスとお金の等価交換です。A国とB国の貿易で述べます。米国の経済主体はB国の経済主体に全体で100の財貨とサービスを輸出したとします(B国の経済主体は全体でA国から100を輸入した)。そしてA国は代わりに、B国側から80の財貨とサービスを輸入したとします(B国側80をA国側に輸出した)。その場合、「A国はB国との貿易で20の貿易黒字、B国はA国との貿易で20の貿易赤字である」となります。

 

 人々はこれを、「A国側は20のお金をもうけた。B国側は20のお金を失った」と理解してしまうのです。「A国はB国との貿易で20の富を増やして、B国は20の富を失った」と思ってしまうのです。明白な誤りです。トランプが大声で言っている、「アメリカは世界の国々から貿易赤字を強いられて巨額の富を奪われてきた。だから関税を課して取り戻すのだ」とは、こういう思考です。しかし、世界中の政府と議会とエリートたちも同じように誤って思考しています。日本でもそうです。正しい考え方が新聞やテレビやラジオで言われたことはありません。だから世界の国々が一致団結して、トランプ関税を正しく批判することができません。

 

 前記の例に戻ります。人々はお金だけしか見ていないのです。他方の財貨とサービスに焦点を当ててみれば、A国はB国との貿易で20の財貨とサービスが減ってしまっています。先の考え方で言えば、「A国は29の貿易赤字」です。一方のB国ではA国との貿易で20の財貨とサービスを増やしています。先の考え方で言えば「B国は20の貿易黒字」です。これで俗流国際経済学の誤りは証明されました。人々は「貿易の黒字と赤字」を「企業の黒字と赤字」と同じだと思い込んでいるのです。どんなに頭のいい人でも思考を停止して考えないのであれば、ちゃんと説明されれば中学生でも充分に理解することも、分からないままです。

 

(3)貿易はお金と財貨やサービスの両方をちゃんと見るならば、A国もB国もプラス(20)、マイナス(20)してゼロです。経済取引は財やサービスとお金の等価交換ですから、当たり前のことです。それならば、なぜA国とB国は貿易をするのか?A国もB国も、比較優位の財貨やサービスを相手国に輸出して、比較劣位の財貨やサービスを相手国から輸入しています。国際分業です。分かりやすい言い方をしますと、自国で作るよりも安い財貨やサービスを輸入します。これによって双方とも実質所得を増やすことができます。これが貿易をすることで得られる利益である「貿易利益」です。貿易は富の奪い合いでなく、お互いに利益(貿易利益)を与え合うプラスサムゲームです。関税を課すことは、貿易利益を自ら否定してしまうことです。ただ、各国の政府と国民は、貿易を行うことによって必ず生まれてくる衰退して行く自国の比較劣位産業の労働者の、再就職のための職業訓練支援や低下する賃金への補助をしなくてはなりません。衰退して行く産業があるからこそ、成長して行く比較優位の産業もありうるのです。

 

 侵略を否定する国同士、ルールを守って活動を行ない相手国の経済を支配しない国同士の貿易は、お互いに貿易利益を与え合うプラスサムゲームになります。一国は国内において分業しています。分業によって、必要とする財貨やサービスをより安く入手して経済厚生(経済的豊かさ)を高めてきました。国際社会は貿易という国際分業をすることで、より安く財貨やサービスを入手できるようになり、自国の経済厚生を高めていけます。アメリカもこれまで貿易によって大きな貿易利益を得てきたのです。しかしトランプはそれを壊したのです。しかも侵略大国の中国やロシアとはウィンウィンでやろうとしているのです。大国主義です。

 

●イスラエル米国・イラン戦争について ― 戦闘が長期化したら、戦力(兵器・弾薬・兵士)が手薄になった東アジアで中国が台湾を侵略併合するチャンスが大きくなる。台湾を取ったら、中国は日本のシーレーンを封鎖することができる

 

(1)残された紙幅が少ないので簡潔に書きます。日本ではイスラエルと米国のイラン侵攻は国際法違反の可能性が高いとの主張がほとんどです。しかしそれは間違いです。イランはイスラエルの国家存在そのものを消滅させるとする国であり、代理勢力を支援して何度もイスラエルを軍事攻撃させてきた侵略国家です。両国は長期に戦争状態です。イランの核兵器開発(ウラン濃縮)もあと少しのところまで来ているのです。イランが核ミサイルを持ったら、イスラエルは国が滅びる危機になります。2月28日にハメネイや革命防衛隊やイラン軍の司令官が40人以上集まるとの情報を得たイスラエル(2月23日に情報を得た)が、この日に自衛権を行使して空爆したのは、国際法上、認められることです。米国はイスラエルの同盟国です。アメリカはイスラエルの攻撃を知っていました。イスラエルがイランを空爆すれば、それは最高指導者を含む軍の司令官たちを多数殺害するものですので、イランは米軍基地にもすぐに反撃してきます。だから、アメリカは自衛権を発動して先制的に攻撃したのでした。これも国際法的に合法です。1月3日のベネズエラへの侵略とは異なります。

 

(2)ただ、トランプが2月28日にイランを空爆した目的は、アメリカの内政では全国的支持率が低下して、11月の中間選挙が心配になり、支持率を上げようと考えたからです。トランプは民主党の牙城のシカゴやロサンゼルスなどへ州兵を何千人も派遣しました。とんでもないことです。アメリカ国民を意図的に分断させているのです。しかし、裁判所によって州兵の撤収を命じられました。不法移民の暴力的な取り締まりと追放政策も全米規模では批判されて、後退を余儀なくされました。先述したように2月20日には看板政策の「相互関税」も最高裁によって違憲とされたのです。関税政策で新規の雇用者数も減少してきていました。トランプはMAGAの中核のキリスト教福音派は強いイスラエル支持なので、全米の支持率を上げようとして、イスラエルと共に空爆に踏み切ったのです。トランプはベネズエラ侵攻の成功体験から、イランでも数週間あればアメリカが要求することをイランに呑ませられる、と考えていたのです。長引いたら原油が値上がりして、アメリカ市民から反発が起こるからです。中国の影響力排除が目的ではありません。

 

 (3)しかしイランは頑強に反撃を続けています。ホルムズ海峡も事実上封鎖されました。原油は一気に高騰しました。米国防総省は在日米軍から、佐世保基地(長崎県)の強襲揚陸艦「トリポリ」に、海軍兵士と沖縄のキャンプ・ハンセンの第31海兵遠征部隊の兵士両方合わせて3,500名を乗せて中東へ派遣して、本日3月29日に到着しました。また米本国の米陸軍第82空挺師団の一部2,000人も派遣し、近日中に到着する予定とされています。イランの原油積み出しの90%を担うカーグ島を占拠する計画だとされていますが、トランプがこの作戦を承認するかどうかは未定だと、29日の夜7時のラジオニュースは言っていました。トランプはこのように戦力を結集してイランに圧力を加えて、15項目の要求を呑ませて、勝利宣言して、早く停戦したいのです。米国民が反発するからです。しかしイランが戦い続けるのは明白です。もし戦争が長引くことになり、さらに兵器や弾薬が中東へ向けられれば、米国の備蓄弾薬はイラン戦争で今でも既に大量に消費されていて、ジョンズ・ホプキンズ大学のハル・ブランス教授(外交・安全保障政策の専門家)は、「今後1~2年、不測の事態に対処することは難しくなるとみられる」と言っています(3月27日付読売新聞。聞き手・向井ゆう子記者)。つまり習近平にとってはより一層台湾を軍事侵略併合するチャンスになります。台湾を取られると日本は中国にシーレーンを封鎖されます。

(2026年3月29日脱)

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