どこかで聞いたことがあるような、こわいお話です。
ちょっとこわくて、おもしろくて、ほんわかするお話です。
ぜひ読んでみてください。
「ふしぎなこぞう様(第2話)」 全2話
(第1話のあらすじ)
ゆうたは、小学4年生。夏休みに、友だちのけんいちとお寺のおとまり会に行き、
きもだめしに参加しました。去年のきもだめしはこわくなって、とちゅうでもどって
きてしまいました。今年は、おはかにおいてあるおふだを取ってきて、きもだめしを終りまでやりとげると心に決めました。
いよいよゆうたの番。お寺の森を通りおはかの手前まで来ると、「けんちゃん」とよぶ声。お寺のこぞう様です。きもだめしに参加している子どもを見守っているのです。
「こぞう様が見守ってくれている」と、ゆうたは勇気を出して、大きなおはかの前においてあるおふだを手でしっかりと取りました。「やった! あとはもどるだけだ」と思ってふりかえると、なにか白いものがおはかの後ろにかくれました。
「こぞう様、かくれないで、こっちに来てよ」と、ゆうたがおはかの後ろに行くと、なにか白いものがふりむきました。白い服に、かみの毛を長くたらし、まっ赤な口。
なにか白いものは立ち上がると、ぶきみな声で言いました。
「見たな!」
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「うわぁー!」
ゆうたは、心ぞうが止まるかと思いました。
大声をあげると、一目さんに走り出しました。おはかを出ると森の道を通りぬけ、
みんながまっている大ひろまへまっしぐら。
走りながらも、頭の中には、なにか白いもののすがたがうかんでいます。
「あれは、なに? 白い服に、かみの毛を長くたらし、まっ赤な口。
あれは、ゆうれいなの?」
むちゅうで走り続けると、ようやく大ひろまの前につきました。
「あ~あ、これで、ひと安心」
そう思って大ひろまの戸をあけると、だれもいません。
「変だな? けんちゃん、はるおくん、おしょう様」
大きな声でよびましたが、だれも出てきません。
「おかしいな。どうしたんだろう?」
ろうかや近くの部屋もさがしましたが、だれもいません。
「そうだ、今日とまる部屋にいるかもしれない」
とまる部屋の戸をあけると、ふとんがしいてあり、みんなはすでにねています。
「ぼくがきもだめしからもどってこないのに、みんなでもうねているなんて」
とゆうたは腹を立てましたが、そんなことよりも大事なことを思い出しました。
「ねえ、みんな、おきてよ。大変なんだ。ゆうれいを見たんだよ!」
ゆうたが大声を出しても、みんなはおきません。ぐっすりねています。
そのとき、ろうかの方から、ヒタヒタヒタと足音が聞こえてきました。
「だれか、来たのかな?」
ゆうたはそう思って、ろうかへ出て行こうとすると、
「見たのは、だれだ」
とぶきみな声が聞こえました。
「うわぁ、大変だ! ゆうれいが、追いかけてきた」
ゆうたは、ねているみんなをゆさぶって、
「みんな、おきてよ。ゆうれいが、ここまで来たよ」
おこそうとしましたが、だれもおきてきません。
「ど、どうしよう?」
考えているあいだにも、ゆうれいが部屋に入って来そうです。
しかたがないので、ゆうたは、空いているふとんにもぐりこみました。
少しすると、戸がスウーとあいて、足音が部屋の中に入って来ました。
ゆうたがふとんのすきまから見ると、なにか白いものは、部屋のすみの方から
ふとんをめくって、だれかをさがしています。
「見たのは、おまえか?」 「おまえでは、ない」
「見たのは、おまえか?」 「おまえでは、ない」
ぶきみな声は、だんだんとゆうたの方へ近づいて来ます。
ゆうたは、頭からふとんの中にもぐりこんで、顔を手でかくしました。
いよいよ、となりのふとんまで来て、
「見たのは、おまえか?」 「おまえでは、ない」
ついに、ゆうたのふとんに来ると、ふとんをパッとめくって、
「見たのは、おまえだ!」
ゆうたは、頭の中が白っぽくなり、いしきがうすれていきました。
「・・・・・・・・」
ゆうたは、ゆめを見ているようです。
なにか白いものが、ゆうたを追いかけて来ます。ゆうたは、ひっしになってにげようとしますが、足がからまわりして前に進むことができません。
なにか白いものにつかまると思ったとき、頭の上で声がしました。
「ゆうちゃん」、「ゆうちゃん」・・・・・・
「あれっ、聞いたことがある声だな。そうだ、けんちゃんだ」
ゆうたが目を開けると、けんいちやはるおたちをはじめみんなの顔が見えました。
「よかった。ゆうちゃんのいしきがもどった」
「いしきがもどったって、ぼく、どうしたの?」
「少しのあいだだけど、気をうしなっていたんだよ」
「あっ、そうか。ぼくは、気をうしなっていたんだ」
おき上がると、けんいちやゆうたたちにうったえました。
「大変なんだ。ゆうれいが、ぼくを追いかけて来たんだ!」
ひっしにうったえたのですが、みんなは、ぜんぜんおどろきません。それどころか、「そんなこと、わかっている」というような顔をしています。
「みんな、ぼくの言うことを信じないの? 本当にゆうれいを見たんだよ」
すると、けんいちが、すまなそうな顔をして言いました。
「ゆうちゃん、ごめんね。あのゆうれいは、にせものなんだ」
「えっ、にせものって?」
「うん、あのゆうれい、おしょう様がばけていたんだよ」
けんいちの後ろを見ると、おしょう様がいました。口は赤くぬられていて、手には長いかみの毛のようなものを持っています。
「おしょう様がばけていたって、なんでそんなことをしたの?」
「ゆうちゃんが、『こわがりをなおしたい』って言っていたから、ぼくがおしょう様に
たのんだんだ。こわい思いをしたら、こわがりがなおるかと思ってね。ごめんね」
「ぼくは、本当のゆうれいと思って、気をうしなうほどびっくりしたんだよ」
ゆうたが、腹をたてて言うと、
「けんいちくんにたのまれたときは、ゆうたくんのためになると思って引き受けたのですが、やりすぎでした。こわい思いをさせて、ごめんなさい」
おしょう様はそう言って、深々と頭を下げました。
「おれたちも、ゆうたのためになると思ったんだ」
「ねたふりをして、ごめんね」
けんいちやおしょう様、はるおたちが、すまなそうにあやまるすがたを見ていると、ゆうたの気もちはだんだんとおさまっていきました。
気持ちが落ちついてくると、右手にあるものがあることに気がつきました。
ゆうたは、右手をみんなの前にさし出して、自信にみちた声で言いました。
「ほら、これが、おはかにおいてあったおふだだよ。ぼくは、おふだを取ってくることができたんだ。ぼくの大事な宝ものだよ。けんちゃんやおしょう様やみんなのおかげで、ぼくは、こわがりでなくなったんだ!」
さらに、ゆうたは、なにかをさがすようにまわりを見回して言いました。
「あのこぞう様は、どこにいるの? こぞう様にも、おれいを言いたいな」
「こぞう様って、どのこぞう様?」
「きもだめしのとき、ぼくたちを見守ってくれていたこぞう様だよ」
けんいちとはるおが、ふしぎそうな顔をして言いました。
「そんなこぞう様、ぼくは会ってないよ」
「うん、おれも、会ったことないな」
「そうなの? おかしいな?」
とゆうたがふしぎに思っていると、おしょう様が聞きました。
「ゆうたくん、あのこぞう様に会ったのですか?」
「はい、きもだめしのとき、『おふだを取ってきたら、こわがりがなおるよ。ぼくが見守っているよ』とはげましてくれたんです。おれいを言いたいのですが、どこにいるのですか?」
「あのこぞう様とは、あまり会えないんだよ」
「えっ、なんで会えなんですか?」
「う~ん・・・」
おしょう様は、少しまよっていたようですが、話し始めました。
「じつは、あのこぞう様は、ゆうれいなのです」
「うそでしょう? ゆうれいだなんて。もうだまされないですよ」
ゆうたは1回だまされていますから、かんたんには信じません。
しかし、おしょう様はまじめな顔をして、さらに話を続けました。
「いいえ、うそではありません。本物のゆうれいです。私も子どものころ、何回か助けてもらったことがあります。こまっている子どもがいると、姿をあらわして助けてくれるのです。ゆうれいと言っても、やさしいゆうれいなんですよ」
おしょう様がまじめな顔で話しているのを見て、ゆうたもだんだんと信じるようになりました。
「あのこぞう様は、本物のゆうれいなのですか?」
「はい、本物のゆうれいですよ」
「おしょう様、本物のゆうれいでもいいです。ぼくは、もう1回会っておれいを言いたいのですが、どうやったら会えますか?」
「ゆうたくんや子どもたちがこまっているときに姿をあらわして、会えるかもしれないですね」
すると、この話を聞いていたけんいちとはるおが、青い顔をして言いました。
「ぼくは、こまったことがあっても、本物のゆうれいには会いたくないよ」
「おれも、そうだよ。ゆうれいなんかに会いたくないね」
でも、ゆうただけは平気な顔をして、けんいちやはるおを見ながら言いました。
「ぼくは、本物のゆうれいでもいいから会いたいな。
あのこぞう様となら何回でも会って、いろいろな話をしてみたいな」
ゆうたの右手には、宝もののおふだがしっかりとにぎられていました。
「ふしぎなこぞう様(第2話)」終り 全2話




