今日、街を歩いていて、ふとリリーの匂いがした。
俺の壮大なカン違いかもしれないし、たまたまおなじ化粧水やシャンプーを使っていた人が通り過ぎただけだったのかもしれない。
その瞬間、心臓が早く鳴り出したよ。
俺ね、あんまり驚かないし、動揺しないし、いつも落ちついているというか、図太いだけというか、これまで生きてきて、取り乱したことはほとんどないんだ。
でもね、あの瞬間、ちょっと取り乱した。
懐かしさと、切なさと、悲しみと、後ろめたさと、心配と、不安と、ほんのちょっとの嬉しさと。
いろんなものが綯い交ぜになって、俺の心を一瞬にしてかき乱した。
俺ね、リリーの匂い、大好きだった。
洗濯物の匂いなのかな、胸にうずくまったり、ひざまくらしてもらったりした時に漂ってくる、あの匂い。
化粧はほとんどしないリリーだから、化粧水の匂いだったのかな、頬ずりしたり、抱き合ったりした時に漂ってくる匂い。
強く抱きしめあって、愛しあっているときの、匂い。
ぜんぶぜんぶ、こころから大好きだった。
