晴耕雨想 -145ページ目
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手入れ

私の普段の主な仕事、庭の手入れですが、その手入れを頼むお客さんも理由が様々です。

荒れちゃうから、隣がやったから、ゴミも持っていってくれるし・・・等々。


ある商店のご主人のところへ手入れに行ったときのことです。


「・・・おいあんちゃん、来なさい」


「おれは昔、ここの庭木は全部独りでやったんだ。庭師さんらと違って、いくらでも時間をかけてやったんだ。


今日のこの松の手入れ・・・最低だ」


まだ茨城に来たばかりの頃でしたが、ショックでした。

自分の手入れについて言われたことより、

「元々は自分でやっていたが、今では忙しくてやっている暇がないだけ。

だからおれの代わりにちゃんとした仕事をしてくれ」

という施主がいることに。


庭は庭師のものではなく、あくまでも施主のものであるという当たり前のことを教えてくれたこのお客さんに感謝しています。

鋏 ついでに

~正宗と岡恒~


地方によって色々だと思いますが、私のいるところでは鋏正宗と岡恒が主流で。

わたくしなんぞは正宗はツバキ、サザンカ、マキ、ツツジなどの葉刈用に、岡恒はツゲ、カシ、サンゴジュなどの生垣に分けて使っております。


ここで現場ジョークをひとつ、


「ヲモイハナぁ(私のこと)、オレの菊正使っていいぞ」


「せんぱいっ! 菊正じゃなくて正宗ですよ。

菊正は日本酒ですよ」

砥石の話

先輩が現場で教えてくれました。


「おい、砥石はヒトから借りるもんじゃねーぞ」


「砥石とかってモンは使えば減っていくもんだから返しようがねェだろ」


確かに。


大事なのは・・・

私が住んでいるのは利根川のこっち側、いわゆる農村地帯です。

私がここに植木屋の修行に来て9回目の秋を迎えました。


9年前の夏、3年勤めた造園会社を辞め、郷里へ戻りました。

何故辞めたか? やっぱり自分が求めていた仕事と現実のギャップに耐え切れなかった、

ということが今考えると最も適切な表現だと思います。


その会社を辞めるときの送別会のこと。

現場の先輩は

 「おい、仕事はウデだ。ウデさえあればどこでも食っていけるから」

また、営業の先輩は

 「営業だ。いくらウデがあっても営業できなければ仕事はとれねェんだから」

と、思い思いに語ってくれました。


結局その後3ヶ月遊び呆けましたが、

「やっぱり俺がやりたい仕事って庭仕事だよな」

と決意が固まり、どうせやるなら有名なトコに行ってみよう!と

関東・東京周辺の造園会社への就職活動を始めました。

何人かの方とお会いし、話もできたのですが、言うことは一緒でした。

「営業が・・・」「ウデが・・・」云々・・・


しかし、今の親方は違いました。


「大事なのは人間性だよ」


はい!? 何ですか!? っていう感じでした。

すっごい衝撃でした。


人それぞれ人生において大切なコトバはあると思いますが、

私の場合はこのコトバでした。


「大事なのは人間性」

ひょっとして、いやたぶん、毎日自分自身に語っているコトバです。


晴耕雨書

私の仕事は庭師です。

晴れの日は仕事をし、雨の日は休みになる、そういう仕事です。

たぶん遠い昔、日本人が稲作を始めたころから変わらないスタイルではないでしょうか。


晴耕雨読、と言いますが、私の場合は「晴耕雨書」。

晴れた日は働き、雨の日はうちでものを書く――

そんな感じでこれから仕事を通して感じたことや考えたことを書いていこうと思います。


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