もろもろの書類を書き終えたところで一人の保育士さんが入室してきた。


「お母さん、小太郎くん、寝たり起きたり繰り返してますよー。でも起きた時はニコニコ機嫌よくしてます。かわいいんです」優しい報告をくださる。



私はなんと言っていいかわからず

「そうなんですねー。」と返答した。


その時気がついた。小太郎が何をしてるか一切自分が気にしていなかったことに。

なぜ私は小太郎にこんなに興味が持てないのか。

でも小太郎が風邪をひくととても心配だ。


訪問看護、保育園、病院、、

これまで小太郎を他人に預けることがおおすぎて、良い意味で他者に世話を任せることに慣れているからかもしれない。


こういう時の正解の返事ってあるんだろうか?

「寝たり起きたり?そっかー、眠かったのかなあ。可愛いだなんて、優しい保育士さんでこっちこそ安心してます」

こんなこと言ってもわざとらしい感じがするし。



契約終了後、男性園長に、「小太郎くんママはもう少し残ってね」と言われる。

すると栄養士2名、保育士1名が入室し、園長も含めてみんなが私の近くに座ってくれる。


「小太郎くんはヨーグルトしか食べないってことだから療育中は少しでも食べてくれるよう計画を立てようよ!」と園長。

アレルギーもあるからということで、栄養士さんたちも参上して、色々と話を聞いてくれた。


現在、家ではヨーグルトしか食べないけれど、8月から行き始めた保育園ではなんでもよく食べていること。

食事中は椅子に座れる、食器やスプーンはこんなのを使ってる、摂食を促すために療育中はヨーグルトと粉ミルクは禁止にしよう、大豆アレルギーがあるけどどんな症状が出た?味噌は醤油は使っても大丈夫?

などなど・・



たった週1回の療育なのにここまで多職種で親身になってくれることがとてもありがたいと感じた。

たとえ小太郎が、今後摂食が進まなかったとしても、こうして一緒に悩み努力してくれるということは、母親の責任感を分散してくれることにもなり、気持ち的にもとても楽になる。結果はどうであれ、母親を孤独から救ってくれる意味のある試みだ。


男性園長の、一つ一つの言い方に気をつけた優しい気遣いも嬉しかった。


私の職場の前の上司は、物腰柔らかく、とても丁寧であったが、慇懃無礼という印象を周囲に植え付けることで有名であった。どこか胡散臭く、真実味がなく、本音の読めない、そんな男だった。



一方、この園長はその真逆で、私や小太郎がいないところでも、心配したり、私たちを気遣って相談してくれてるのだろうなというのがひしひしと感じられた。顔にもその人格が出ている。

40を超えると特に人には人格というものが人相として現れる。私は嫉妬深い、暗いオーラが人相として刻まれていることだろう。



食事に関する話し合いも終え、ようやく小太郎の元へ。

私をみるなり安心したのか泣きながら抱っこを求めてきた。うんちの匂いがしたので抱きしめたままさっとお尻拭きで拭き取り、秒でおむつを交換したところ、先程の園長が「やっぱりお母さんはすごい・・すごいなあ」と感心したように言った。


そういうちょっとした所を見て、何か感じてくれるところが良い。


今後園長のことはブッタ、と呼ぼうと思う。



初回療育はこんな感じで終了した。

帰りは車だったがずっと小太郎が泣いていた。