実在しないのに、私の人生を持っていった男



始まりはビジュだった。


正直に言う。


顔です。


セクシー&ワイルドの破壊力。


あの目。あの表情。あの立ち姿。


「はい好き。」


ここまでは軽傷だった。


問題は第5話。


あの回は反則。


グループのセンターだった多聞くん。


なのに、新曲でセンター再選抜。


争奪戦。


そして、敗北。


は???????


待って???????


セクシー&ワイルドどこいった?????


ステージで発表。


そのまま新曲スタート。


泣きながら歌う多聞くん。


いや無理。


崩れるのよ。


あの完璧な“セクシー&ワイルド”が。


強い男が、悔しさを隠しきれない瞬間。


プライドと涙が同時に存在する顔。


終わった。


私の理性が。


2次元なのに。


画面の中なのに。


存在しないのに。


一番リアルだった。


優里で泣いた私が、


多聞くんで正気を失った。


実在しないのに、


こんなに感情持っていかれることある?


あの瞬間から私は


「好き」じゃなくて


「終わった側の人間」になった。


多聞くんは、理性を溶かす。