不死身の特攻兵(鴻上尚史著)読了/感想など | まきむく通信(どうでもいいこと書いています!)

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少し前に読んだものなので少々タイムラグがありますが、なんとなく、本屋の親書コーナーにあったこの書籍。。。ちょっと私の思考をとらえてしまって手に取ることになった。


「不死身の特攻兵」
鴻上 尚史 著 講談社(講談社現代新書) 2017/11

 

この本が面白かったか、面白くなかったかというと、微妙な感じ。

特攻隊の話といえば、日本海軍の零戦の話とイメージしますが、この話は陸軍の特攻の話で九九式双軽爆撃機で出撃しています。爆撃機なので零戦ほど機動力もなく旋回性能も良くない機体での特攻命令なのです。旧日本軍の組織的欠陥としてよく指摘されている話であるが海軍と陸軍の組織の不仲。情報共有どころか?足の引っ張り合いまでしている組織なのである。敗戦色が色濃くなる状況下において、特攻という、まともな戦法ともいえない、破れかぶれな作戦においても、海軍と陸軍は共闘することなく、それぞれの独自に特攻を敢行して行くことになるのです。

この「不死身の特攻兵」の話は、陸軍側の航空隊の特攻部隊の「万朶(ばんだ)隊」の特攻兵の話。。。海軍で最初の特攻部隊である「敷島隊」が編成されて成果を上げた。その海軍に触発されたのか?それとも万策尽きたのか?陸軍側の航空隊においても「万朶隊」という特攻部隊が編制されるのである。その第一回目の特攻部隊の編制に特攻兵として徴集され、9回出撃し9回(回数については諸説あり)とも生きて戻って来たという佐々木友次氏の当時の状況をインタビューし、戦争末期の日本軍の現状を浮き彫りにするドキュメンタリー。

 

陸軍航空隊初の特攻部隊万朶隊の乗機となった九九式双軽爆撃機は、特攻用に爆弾の信管につながる前部に角をつけられた機体を用意されている。800kgの爆弾を抱えさせられてますます機動性は悪くなる。

 

この佐々木氏のエピソードを読むにつけ、非常に壮絶。当時の日本軍の兵士ひとりひとりの命をまったく軽視している組織ということがよくわかる。なんとも恐ろしい組織の体質であったのだ。とくに、この本に出てくる佐々木氏は、海軍側の特攻部隊でなく陸軍側で編成された特攻隊に所属していたというのも、その人間軽視感が非常に強い。海軍よりも陸軍のほうが圧倒的に人命軽視の風潮が強烈に感じられる。旧日本軍を賛美するという風潮もありますが、このような、人間軽視、兵士の命をあまりにも粗末に扱っている組織は普通ではない。そもそも、特攻という搭乗している兵士の死を前提とした作戦自体が、すでに終わっている。この本の主人公である佐々木氏も、後半の出撃はもはや、敵にダメージを上げることを期待しているよりも、生きていることを否定して死んでくることを強要しているだけの命令となっているのである。

これが、敗戦間際の仕方なく行われたものであるならば、まだ許されるかもしれない。しかし、旧日本軍ではさまざまな特攻兵器が組織的に開発されてラインナップされているのです。

 

著者は、この特攻について、命令したものと、命令されたもの、そしてその命令されていくものを、近くで見ていたものなど、さまざまな立場の人間の問題点を指摘している。特に命令した立場の人間の責任が明らかに重い。特攻を語るときにそれらが、別々の視点で議論しなければならないにも関わらずそれがら、ごちゃ混ぜにされて命令したものが、命令ではなく、志願して行われたなどとこの立場をぼかしてごまかしているのである。

 

 

 

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