茶道を続けていると、
技術や知識だけではなく、
生き方そのものについて考える機会があります。
その中でも、私が最近特に大切だと感じていることがあります。
それは、
「自分の正しさを手放すこと」
です。
これはとても難しいことです。
なぜなら人は、
一度「これが正しい」と思ったことを、
なかなか手放せないからです。
私自身もそうでした。
自分が正しいと思うことがある。
だから相手にもわかってほしい。
理解してほしい。
時には納得してほしい。
そして気がつくと、
議論になったり、
言い合いになったり、
相手を変えようとしていたりします。
正直に言うと、かつての私はまったくできていませんでした。
自分が正しいと信じていることは、主張したくなるのが人間です。一度そう思い込んだことを曲げるのは、自分自身を否定されるような感覚がある。だから人は争い、言い合い、大切な時間とエネルギーを消耗してしまう。
でも、あるときこう問いかけるようになりました。
「その正しさを主張することは、今の自分の目的に適っているか?」
本当に考えたいのは、誰が正しいかではなく、自分がどこに向かいたいのか。
だからです。
自分の時間も人生も無駄にしたくない。 目的に向かって、効果的な選択をしていきたい。
そう強く意識するようになった時、初めて気づいたのです。
正しさを主張することが、かえって自分の目的への弊害になっているということに。
例えば、
良い人間関係を築きたいのに、
正しさを主張することばかりに意識が向いていたらどうでしょう。
家族と穏やかに過ごしたいのに、
勝ち負けにこだわっていたらどうでしょう。
職場をより良い場所にしたいのに、
自分の考えだけを押し通していたらどうでしょう。
正しいことを言っているのに、
目的から遠ざかってしまうことがあります。
私は以前、
「正しいことを貫くこと」が強さだと思っていました。
けれど今は少し違います。
本当に難しいのは、
目的のために、
自分の正しさを一度横に置くことです。
それは負けることではありません。
妥協とも少し違います。
ほとんどの人は、自分の目的を意識して日々を生きていません。
だからこそ、「正しさの主張」と「目的」がずれていても気づけない。
これができる人は、本当に少ないと思います。 私自身、今もまだ修行中です。
でも「諦める」のとは違います。
目的から逆算して、今ここで主張することが本当に必要かを判断する。
もっと大きな視点から、
今の自分に必要な選択をすることだと思うのです。
千利休は茶道の心として「和敬清寂(わけいせいじゃく)」を示しました。
「和」――調和する。 「敬」――相手を敬う。
にじり口から茶室に入るとき、刀も身分も「自分が正しい」という鎧も、外に置いて入る。
利休はそれを空間で表したのではないかと思うのです。
禅語に
「放下着(ほうげじゃく)」
という言葉があります。
「放り下ろしなさい」
「手放しなさい」
という意味です。
私たちは知らないうちに、
たくさんのものを握りしめています。
こうあるべき。
こうするのが正しい。
相手が間違っている。
私の方が正しい。
けれどその握りしめているものが、
かえって自分を苦しめていることがあります。
手放した瞬間に、
見える景色が変わることがあります。
茶室では、
自分の考えを競うことはありません。
相手に勝つこともありません。
ただ目の前の一碗のお茶に向き合い、
今この時間を大切にします。
「正しさを手放す」とは、自分の価値観を捨てることではない。 ただ、それに縛られるのをやめること。
目的を持ち、今この瞬間の選択を目的に照らして判断できる人は、争いに時間を使いません。
その分だけ、自分の人生を豊かに生きることができる。
お茶を一服いただく静かな時間の中で、 今日も「正しさ」という荷物を、 少しだけ下に置いてみませんか。
放下着。
お茶は、いつもそれを教えてくれます🍵
つなぐ茶道教室では、
初めての方でも安心して始められるよう、
少人数でゆっくりとお稽古を行っています。
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あなたの一服が、心穏やかな時間になりますように🍵
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