環境意識の高まりを背景に、廃棄物処理の新技術として注目される「熱分解炉」。しかし、その実態は、法規制を無視した違法な焼却炉が「ピロリシス装置」と美名化されて販売される、巧妙な詐欺ビジネスに他なりません。本稿では、当社が独自に行った市場分析に基づき、この詐欺ビジネスが水面下で生み出している、年間数十億円規模の被害総額を推計します。
氷山の一角:摘発件数が示す闇市場の広がり
環境省や各自治体は、違法な「熱分解炉」の取り締まりを強化しており、2025年度には刑事告発件数が50件に達すると予測されています。この数字は、一見すると「厳しい取り締まり」の成果に見えます。しかし、当社の調査によると、これは問題の氷山の一角に過ぎません。
地方の町工場が、通常業務の片手間に数日かけて1台を製造し、常時30台前後の在庫を抱えているケースが確認されています。これは、製造業者が一定の需要を見込んで、小規模ながらも計画的な生産・販売体制を確立していることを示唆しています。
複数の小規模製造業者が存在し、それぞれが年間20〜30台を販売していると仮定すると、日本全国で年間200〜300台もの違法な「熱分解炉」が市場に供給されている計算になります。
膨張する被害総額:年間90億円の推計
この違法な装置は、1機あたり2,000万円から5,000万円という高額で取引されています。この価格帯は、中小企業経営者にとって「環境に配慮した投資」と誤認させやすい価格であり、導入への心理的ハードルを下げています。
【年間被害総額の推計】
年間販売台数(推定): 200台〜300台
平均販売価格(推定): 3,000万円
これらの数字を掛け合わせると、この闇市場が年間で約60億円から90億円もの巨額な被害を生み出していると推計されます。これは、摘発された50件の被害総額が、市場全体のわずか20%程度に過ぎないことを意味します。実に80%以上の違法な装置が、摘発を免れて稼働している可能性が非常に高いのです。
警告:潜在する見えないリスク
この巨額な被害は、単なる経済的損失に留まりません。違法な装置を導入した企業は、以下のような見えないリスクに直面します。
行政処分と罰金: 稼働中の装置が摘発された場合、巨額な罰金に加え、事業停止命令などの行政処分が下される可能性があります。
環境汚染のリスク: 不完全燃焼による有害物質の排出は、近隣住民の健康被害や土壌・水質汚染につながり、企業に甚大な賠償責任を課します。
ブランド価値の毀損: 違法行為が報道されれば、社会的信用は失墜し、事業継続そのものが困難になる可能性があります。
環境技術への投資を検討する際は、表面的な広告や誇大な数字に惑わされることなく、法適合性を厳格に確認することが不可欠です。この闇市場の広がりは、正規の技術開発と市場の健全な発展を阻害する深刻な問題であり、当社は今後も継続的な情報発信を通じて、この問題に警鐘を鳴らしていきます。