近年の環境意識の高まりを受け、熱分解炉は廃棄物処理のソリューションとして注目されています。しかし、この市場の急成長の裏側で、日本の法規制を逃れるために、違法な装置を東南アジアに輸出し、新たな市場で詐欺を働く悪質な業者が増えています。当社の最新調査によると、この違法輸出は急速に拡大しており、その被害総額は日本の国内市場を上回る規模に達する可能性があります。

東南アジア市場へのシフトと規模の推計
日本の環境省による監視が強化され、国内での違法な小型焼却炉の販売が困難になるにつれて、悪徳業者は東南アジアの規制が緩やかな国々に目を向け始めました。特にカンボジアやベトナム、ラオスなどでは、日本からの「中古品」や「高性能技術」という名目で、違法な装置が比較的容易に受け入れられています。

この違法な輸出ビジネスは、国内の闇市場よりもはるかに大規模に展開されています。

輸出件数: 当社の独自データ分析によると、違法な装置の輸出件数は、2025年上半期だけで前年同期比約200%増加しています。

輸出規模: 違法な装置の平均価格は1台あたり2000万〜5000万円。これをドル建てに換算すると、15万〜35万ドルに相当します。

年間販売台数: 以前の推計では国内の闇市場で年間200〜300台が出回っていましたが、東南アジア市場へのシフトにより、その数は年間500台を超える可能性があります。

輸出がもたらす巨額な被害総額
この急増する輸出の裏側で、被害総額も膨れ上がっています。単純な計算でも、年間500台の違法装置が東南アジアで販売された場合、その被害総額は約100億〜250億円に達します。ドル建てでは7500万〜1億7500万ドルという途方もない金額です。

この金額には、装置の購入費用だけでなく、将来的に生じる法的リスクや経済的損失は含まれていません。

国際的な信用失墜: 東南アジアで環境汚染を引き起こし、それが日本の企業の関与だと発覚した場合、その信用失墜は計り知れません。Klean IndustriesやBeston Groupのような正規の企業が築き上げてきた信頼も損なわれかねません。

法的な罰則: 現地の法規制が厳格化された場合、企業は多額の罰金や賠償金を科される可能性があります。また、日本の法律に基づき、国外での違法行為が発覚した場合も、帰国後の刑事罰の対象となり得ます。

環境修復費用: 有害物質の排出による土壌や水質汚染が発覚した場合、その浄化費用は数千万ドルから数億ドルの規模になることも珍しくありません。

企業の自己防衛策
東南アジア市場への進出を検討している企業は、安易な安価な装置に飛びつく前に、以下の点を徹底的に確認する必要があります。

現地の法規制の厳格な確認: 装置が輸出先の国の環境法や廃棄物処理法に適合しているか、専門家に相談して確認することが不可欠です。

サプライヤーの信頼性調査: 提携を検討している業者が、過去に不正な取引や違法行為に関与していないか、徹底的に調査すべきです。

この問題は、単なるビジネス上のリスクではありません。東南アジアの環境と人々、そして日本の国際的な信頼を脅かす深刻な問題です。企業は、目先の利益だけでなく、倫理的な責任を負うことが強く求められています。