トスカーナの田舎から、

こんにちは!

 

8月10日は、聖ロレンツォの記念日です。

フィレンツェにゆかりの深い守護聖人で、

街ど真ん中のサン・ロレンツォ寺院に祀られています。

 

焼肉の聖人か?と勘違いするほど、

この日はフィレンツェに限らずイタリア各地で牛ステーキなどの炭焼肉をいただきます。

 

 

西暦258年のこの日、

聖ロレンツォは火炙りの刑で殉教したのでした。

焼かれて亡くなったご本人の供養になるのかどうかはわかりませんが、

猛暑でばてそうな8月のスタミナ補給にはもってこいです。                               土用の丑の日のウナギをいただくのに似ていて面白いですね。

 

聖ロレンツォは古代ローマ時代、

キリスト教の殉教時代に生きた信心ぶかい聖職者でした。

当時教会自体も混迷しており、悩んでいた聖ロレンツォは、

ある日、

神のお告げにより教会の財宝を勝手にもちだし

貧者に分け与えてしまいました。

ゆゆしき知能犯ゆえ、すぐに死ぬような刑罰ではなまぬるい!

ということで

一番つらそうな全身グリル焼き、となりました。

 

赤々とした火に炙られた大きな鉄製のグリルに

自らすすんで寝転んで、

弱火でじっくり片面づつ焼いて丸焼きにされ

殉教したのだそうです。

 

 

「そろそろ右側に火がよく入って食べごろだよ、ひっくり返して」

と余裕で刑執行人に呼びかけたそうです。こわっ。

聖ロレンツォの肉も食された、という伝記はさすがにありませんが..。

 

信仰心の為せる技か、単なるマゾヒストだったのかはわかりませんが、このスペイン生まれの豪胆な聖人は大人気で、

各国で信仰され町の守護聖人にもなっています。

 

フィレンツェには早々と4世紀に、 

同聖人を祀るサン・ロレンツォ教会が建てられ、

中世時代、彼の追悼記念日には、

同教会前広場で牛の半身を網焼きにして切り分け、

市民に熱々の焼肉を配ったのだそうです。

 

なるほど、そうやって

Bistecca alla Fiorentinaフィレンツェ風Tボーンステーキが

フィレンツェ名物になっていったのですね。

 

1〜2Kgある厚み6〜8cmほどの赤身の肉塊を、

炭火で表面カリカリ、中身は血が滴るほどレアに焼き上げ、

美味しい塩と胡椒、エクストラ・バージン・オリーブオイルで

すっきりといただきます。

赤身なので案外沢山いけてしまいます。

 

フィレンツェ南方のキアナ渓谷で放牧されたキアナ牛が

一番とされてますが、

それ以外の種でもエイジングがよければ美味しくいただけます。

 

夏ならちょっと冷やした軽めのキャンティを合わせて、

冬にはフルボディの赤を合わせてゴージャスに

ボナペティートBuon Apetito(召し上がれ) !

 

ちなみに聖ロレンツォは厨房の聖人でもあり、

今でもレストランに聖像画がかかっていたりします。

 

8月10日の夜は、

さらに食後にも伝説のイベントが。

なぜか聖ロレンツォの日前後は流れ星が一番多いと言われます。

食後はなるべく真っ暗な場所へ涼みがてら移動し、

ふくらんだお腹さすりながらゆっくり流れ星を待ちます。

 

残念ながら昨夜は雲がかかっていました。

いまから来年のために願い事をきめておかなきゃ。

 

最後までお読みいただいて本当に感謝です。

明日も素敵なことがいっぱいの1日でありますように。

 

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この壁画はフィレンツェのサン・ロレンツォ寺院内右側の壁にある大作です。                      「聖ロレンツォの殉教」1565-59年 フレスコ画。

Agnolo Bronzino作。

photo & text by Michiko Ohira