『地球にちりばめられて』(講談社文庫)
著者:多和田葉子
発行所:講談社
発行年:2021年
ISBN: 978-4-06-523815-8
多和田葉子。YOKO TAWADA.
2019年秋の高瀬アキとのシアターXでの一夜は、まさに言葉の持つ可能性がどこまでもあるのだということを私に感じさせた。
あの日のことを思い出した。
文字と発音から始まって、文法を習い、読解やら作文やらで、その言語らしさをどんどん身につけていく。
一度はまりだすと抜け出せないのは、アルコールやドラッグ、砂糖と同じ。
いつのまにやら、すっかり身動きが取れない。
ひらがなとカタカナと漢字とAlphabet。
文字であることだけが条件なのに、その遊びのルールを忘れ、リードを外されても遠くには行かなくなった実家の老犬のようだ。
メルヘン・センターの求人広告を読みながら、ふと、わたしのつくった言語を移民の子どもたちに教えてみたいと思いついた。この言語はスカンジナビアならどの国に行っても通じる人工語で、自分では密かに「パンスカ」と呼んでいる。「汎」という意味の「パン」に「スカンジナビア」の「スカ」を付けた。スウェーデンには「ポールスカ」と呼ばれる民族舞踊があり、ポーランドから来たという意味にとれるのだが、実際のところ、この踊りはスカンジナビア起源ではないかと言われている。その不思議さを語感にいかしてみた。(同書42ページ)
手持ちの言葉に一つの役割を与え、固定化し矮小化していたのは自分自身だった。
基本である豊かさに立ち戻ることができた一冊。
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