古代ザメの産卵、海から湖へ

現在、海洋に広く分布し、５００種ほど知られるサメ。

オオメジロザメは淡水に長期間を生息することができ、
アマゾン川やミシシッピー川を３０００ｋｍに遡ることも
あるといわれるが、
現在のサメの仲間はおおよそ海域にのみ生息すると

いってもいいだろう。

しかし
太古においては、淡水域にも生息域を伸ばしていた古代ザメは
少なくなかったようだ。

リゾドゥス （Lissodus）

世界じゅうで化石が発見されている古代ザメで日本でも確認されている。
ヨーロッパでは三畳紀中～後期の淡水であった地層から発見されている。

そして、
古代ザメが湖や川などの淡水域を産卵場所としていたという
発見のニュースが飛び込んできた

ヒボドゥス （Hybodus）

発見された化石はギルギス南西部にある三畳紀の２億３０００万年前
の地層からヒボドゥス類というサメの卵嚢である。
その卵嚢の形は現在のネコザメの卵嚢のような

スクリュー形の妙な形である。

古代サメの卵嚢（復元図）

母親となるサメは湖岸の湿地に生い茂る植物にその卵嚢を産みつけた
と見られており、卵から孵った子どもは生い茂る植物によって
身を隠すことができる絶好の環境であったかもしれない。

それを裏付けるように卵嚢化石が発見された場所では６０本ほどの
サメの歯が発見されており、
そのうちの１本は成魚のものだが、残りはすべて幼魚の歯だったという。
これでこの古代ザメの生育の場は淡水域であったことが
うかがえるわけだ。

現在のサメは一生を海洋で過ごすが、
古代ザメはサケのように海洋から産卵のために川を遡っていたのでは、
あるいは一生を淡水域に過ごしていたといわれている。

クマが海から川に遡るサケを捕らえるように

三畳紀の世界では当時のトッププレデターであった陸生ワニが

川にのぼる古代ザメを捕らえていく光景が見られたのかもしれない。

サメの繁殖について